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07-00 何時

いつもの斜陽街一番街の、

いつものバー、いつものボックス席。

バーの中では奥のほうにあるその席に、

妄想屋の夜羽はいる。

藤色のコート、同じ色の帽子を目深にかぶっていて、

表情はわからない。

妄想を録音したカセットテープを取り出す、

その指は白い。

老いているのか若いのかわからない。

男か女かもわからない。

素性も何もあったものではない。

帽子のふちから覗く、

口からつむぎだされる言葉も、

素性を探る手がかりになってくれない。


いつものようにバーのマスターが、

グラスなどを拭いている。

有線放送が静かにかかっている。

ジャズかもしれない。

今はお客はいない。

そういう時間帯なのだろうか。


夜羽は何かを見るしぐさをした。

帽子で、どんな目をしているのかわからないが、

多分視線の先には時計がある。

古びた時計で、

振り子がゆらゆらとゆれている。

静かに、とても静かに、

時計は時を刻んでいる。


ジャズと時計の音が、きれいにかみ合っている。

夜羽は口元に微笑を浮かべた。

片手で頬杖をつき、

もう片手の指でリズムを取る。

ベースの音にあわせ、ととんととんと指がなる。


今は一体何時なんだろうか。

時計はある、でも、それは時を刻む時計でないかもしれない。

ゆらゆらと振り子が揺れている時計は、

時を知らせるものでなく、

時を楽しむために揺らいでいるように感じた。


斜陽街の時間なんてそんなもの。

何かのそこのように揺らいでいて、

朝も夜も関係なく、

どんな時間帯にも存在して、

どんなところにも存在する。


何時でもない。

ただ、ゆらゆらと存在するだけ。

そして何より、楽しんでいるだけ。


古びた時計は一応の時間を示している。

でも、その時間が何をするべき時間なのか、

斜陽街では意味を持たないのかもしれない。

少しだけ、斜陽街の感覚がずれているのかもしれない。

混沌と秩序の入り混じった、

奇妙な町、斜陽街。

時のないこの町に、時計は別の意味を持っている。


いまはなんじ?

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