表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
411/560

06-60 一体

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

三日月模様の描かれた扉の向こうの世界の物語。


うっそうとした森の中にそれはある。

テラコッタ色の屋根、白い壁、

あたたかな色彩に彩られた、

兎茶屋だ。

いつでも暗い森の中で、

ほのかな光源をともして営業している。

店内に入れば、

木を基調にした店にカウンターが一つ。

お湯がいつでも沸いていて、

カウンターの中にお茶の葉のガラス瓶が無数に並んでいる。

その数無数。

それこそ星のように。


あたたかな光のもと、

兎茶屋の店主の青年が、ブレンドを試している。

短い金髪。白いウサギ耳。赤のチョッキを着ている。

カウンターの中で、やかんがしゅんしゅん言っている。

青年は茶の葉の瓶から、においを確かめつつ、

葉をいくつも取り出す。

器具に入れて、慎重に湯を注ぎ、

葉の開き具合を見る。

鼻を近づけてにおいもかぐ。

「うーん、これじゃばらばらだなぁ」

青年は眉間にしわを寄せる。

イメージどおりというのが難しいのかもしれない。

「海の葉をくわえるべきかなぁ」

青年は一人でつぶやく。

失敗作らしいお茶をすすってみる。

「やっぱり海かな。ノスタルジックと海」

青年は自分にだけわかる独り言をつぶやく。


器具に味がうつらないよう、

一度器具を洗う。

そして、また、お茶の葉のブレンドを始める。

「コンクリートの建物、怪獣の卵、海になる場所、空を飛ぶ少女、地震」

青年はキーワードをつぶやきながら、

茶の葉を選んでいく。

ガラスの瓶から少量ずつ、

茶の葉を取り出していく。

器具に広げてにおいをかぐ。

「うーん、お湯で広げないとわかりにくいな」

青年は器具に茶の葉を全部入れる。

謎めくキーワードを全て叩き込む気分。

お湯で開いて、においをかぐ。

「うん、海があったほうがいいな」

青年はひとまずは納得する。

あとは味だ。

小さな砂時計をひっくり返す。

少し蒸らすのが肝心。

今度の出来はいいかもしれない。

蒸らしながら器具をまた洗う。


砂時計が落ち終わって、

青年は茶をそそいですする。

「うん、いい感じ」

青年のブレンドが一つ完成したらしい。

「一体となってるね、ばらばらになってない感じ」

青年は満足した。

そして、ブレンドのレシピをメモする。

「感想聞きたいから誰か来ないかなぁ」

器具も洗って準備万端。


扉を開いて誰かやってくる。

「いらっしゃいませ」

青年はにっこり微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ