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06-58 水溜

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


カモメ、アオイ、アカネは、しばらくぼんやりとしていた。

「もう行こうか?」

カモメがつぶやく。

アオイがうなずく。

「あれ、これかな」

アカネがレジ脇で何かに気がつく。

「なに?」

「学園祭だってさ」

「どれどれ」

三人娘はレジ脇に置かれたチラシを見る。

先ほどレジの女性が言っていた母校の、

学園祭のチラシだ。

いつからあったのだろう。

わからないが、チラシはちゃんとある。

「あなたも体感、海プール?」

アオイが読み上げる。

「コンクリートノスタルジア?」

「学校が、古いコンクリートだって言うよね」

「ノスタルジアってことは、相当古いんだろうね」

「行ってみようか」

「そうだね、海プールってのも気になるし」

三人娘は本屋の部屋を出る。

廊下を歩いて、エレベーターで下りる。

このビルも大概古臭い。

エレベーターが動いているのが奇跡に見えるビルだ。

人影は誰もいない。

いないのに、過去に存在していた痕跡が、

何かしら残っているような気がする。

この町はそういう古いものが残されている町なのだろう。

古い本、古い思い出、古い人影。

古いものが、気がつくと立ち上がっている町なのかもしれない。

「不思議な本屋だったね」

アカネがつぶやく。

「これからも本がやってくるんだろうな」

アオイが答える。

「雨も上がったみたいだし、学園祭に行ってみようか」

「どの辺の位置かな」

「近いと思うよ」

「わかんなくてもいいさ」

「うん、いいのいいの」

三人娘はエレベーターを降り、

ビルを後にする。

ビルを出た途端、日差しを感じる。

歩くと、ぱちゃりと水溜りを感じた。

「通り雨があったんだね」

わかっていることを誰かがつぶやく。

いずれ乾く水溜り。

三人娘は水溜りを踏む。

ゆらゆらと水面が揺らいで、

また、像を結ぶ。

「通り雨があると、本がやってくる」

「うん」

「そんな場所、検索しても出るわけないよね」

「そうだね」

カモメは伸びをする。

アオイは頭をかく。

アカネは歩き出す。

「行こうよ!楽しいことが待ってるかもしれない!」

三人娘は水溜りを踏んで走り出した。

日差しをきらきらとはねかえして、

水溜りはそこにたたずんでいる。

陽炎のようにはかないもの。

きらきらした三人娘の笑顔。

彼女たちは学園祭へとかけていった。

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