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06-56 大切

頭に本を乗せたシキは、

斜陽街を回る。

真っ白だった本は、

さまざまの書き込みでいっぱいになる。

芸術的な落書き、普通の宣伝、アートな一言、

斜陽街の住人が好き勝手に書いた、

それは斜陽街の本となりつつあった。


シキはその本を大切に頭に乗せて、

ふよふよと斜陽街を回る。

これは大切な本だとシキは感じている。

コピーなど効かない、とても大切な本だと。

意味を聞かれてもシキは答えられないだろう。

ただ、誰か大切な人に贈るためのような、

とても大切な、ただ一冊の本。

それを仕上げるような気がした。


シキはふよふよと飛ぶ。

バランスをとって、頭の上の本を落とさないように。

シキは大切な誰かを思い出す。

シキがいろんなことを伝えた誰か。

今どうしているだろう。

そして、本の数々の書き込みを思う。

落書きだって、誰かに伝えるための言葉。

伝わって欲しい、大切な誰かに。

斜陽街という街で、

みんなこんなこと思って生きているんだということを、

シキはこの本で伝えたいと思った。


シキはバーの前にやってくる。

ちょうど合成屋が帰るところらしい。

「あれ、シキさん」

合成屋も気がついたようだ。

「よぉ」

シキがひれを揺らして挨拶する。

「その本は何ですか?」

「大切な人に伝える、大切な本さ」

シキは我ながらキザだと思った。

まぁ、それも悪くないかと思い直す。

「見せてもらってもいいですか?」

「いいぜ」

合成屋が義手に本を受け取る。

ぱらぱらめくる。

「すごいなぁ、みんなの書き込みじゃないですか」

「斜陽街回って書いてもらったのさ」

「書いてもいいですか?」

「ああ、空きがあったらどこでも」

「はい」

合成屋は黒のローブの中から、ペンを取り出す。

どこかのページを開いて、なにやら書き込む。

シキが覗き込む。

「物も足し算が出来ます。合成したい人は合成屋へ、かぁ」

「宣伝ですけどね」

「いいじゃないか」

合成屋は書き込みを終えると、本を閉じ、シキの頭にまた乗せた。

「空きは、あと少しみたいですよ」

「そうらしいな」

「あと誰か書いてない人いますか?」

「さぁ、店持ちはほとんど書いてあるんだがな」

シキがとんとんと頭の上で本のバランスを取る。

「なんというか」

シキがなんとなくつぶやく。

「斜陽街のみんなが書き込んだとき、この本は斜陽街の本になれる気がするんだ」

シキは勝手に納得すると、斜陽街を回りに飛んでいった。

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