SS.1-1 イズール国王
これはイズール国王であるガリオン目線のショートストーリーになります。読まなくても本編にさほど支障はありません。
5の月7日目。
太陽が高い位置にいる頃、俺は少人数の従者と護衛、カイ、ソフィーと共に西の森から村に入った。この地を踏んだのは今回が初めてのことだった。いや、イズールの地を離れたこと自体が初めてであった。
緑豊かな大地、降り注ぐ温かい日差し、春を感じさせる爽やかな風。どれも今のイズールにはないものばかりであった。人々は人族魔族関係なく笑顔で生活を営んでいるように見えた。これがロドルフが目指していた姿なら悪くない、正直にそう思えた。
ナディア達が村で保護された。その知らせを受けてから11日。彼らがいなくなってからの2ヶ月半は実に長く感じた。
いなくなったアベルの部屋の机上には、偽造された書簡がおいてあった。それが今回のきっかけであることは明らかであった。調べれば調べるほど出るアベルやナディアへの嫌がらせの数々。それもこれも全て俺が目を瞑っていたから起きたことである。
まず二人に会ったら誠心誠意謝ろうと決意した。そしてすべての膿を出し切って、二人には快くイズールに戻ってきてもらおうと考えていたのだ。
俺はまず、中心となった嫌がらせを行っていた貴族の粛清を行った。特にひどかったのはロスタベルク卿だった。昔からナディア保護の件もあり信頼していたのが仇となったようだ。奴はよく似た影武者を使ってアベルを挑発したということがわかった。それだけではなく、多くの貴族に呼びかけてアベルやナディアに嫌がらせをしていたのも認めた。理由は昔ナディアへの求婚を断られたことによる逆恨みだった。王族を陥れたとして彼からは爵位を剥奪し、最北端の地に飛すこととした。
これで二人が戻ってきてくれる。そう信じてやまなかった。
それが、まさかこんなことになるとは。




