62話 牧場での思い出
その夜、私は昔の夢を見た。
私とティオは幼いころからよく牧場に遊びに行っていた。ケリーと知り合ってからはケリーも一緒だった。私が村に来て2年たった頃、牧場の管理者見習いとしてシュタイナー・ラーゼンさんがやってきた。それが私と彼との出会いだった。
私達が8歳、9歳のころのこと。ある休日、私たち3人は牧場を訪れていた。この頃にはシュタイナーさんが正式な牧場主となっていた。
「おはよう、シュタイナーさん」
「おお、おはよう。いつも3人で仲良しだな」
シュタイナーさんはわしゃわしゃと私達の頭をなでた。その笑顔はとても優しかった。
「ねぇ、羊さんにエサあげてもいい?」
ケリーがシュタイナーさんに尋ねた。彼は快諾してくれた。
私達は3人で羊にエサを与えた。ムシャムシャと美味しそうに食べる姿をみて喜んでいた。
「君たちは将来何になりたいんだい?」
シュタイナーさんが尋ねた。
「俺は、魔法が使えるようになりたい」
ティオがそう答えた。シュタイナーさんは少し困惑した表情になったが、すぐに穏やかなものに戻った。
「どうしてだい?」
「魔法で世の中を便利にしたいんだ。だけど、俺には使えないから、使えるようになれるようなものを作りたい」
それはいいね、と彼は頷いた。次にケリーが答えた。
「あたしは強くなりたい。大切な人たちを守れるように。将来は警備隊に入って村を守るの!」
ケリーは目を輝かせて言った。シュタイナーさんは私にも尋ねた。私はこう答えた。
「多くの人を救いたい。薬草とか医学の知識を学んで助けたい」
と。彼は一瞬止まり、その後でいいね、と答えてくれた。
その一瞬で彼は何を思ったんだろうか。
牧場の奥には小さな新しい小屋があった。
「ねぇ、あそこには何がいるの?」
私は尋ねた。
「まだ何もいないよ。これから増える予定なんだ。いつか、見に来るといいよ」
彼は優しく私達に言った。
その穏やかな表情の裏では、何を思っていたのだろう。
何も知らなかったならいいなと私は強く願った。




