54話 村人との交流
いつ来てもおかしくない別れが刻一刻と近づくのを感じながら、アベルは日々を大切に過ごしていった。
打ち明けたあの次の日からしばらく、ライナはやけによそよそしかった。
アベルは嫌われてしまったのかと落ち込み、ティオに泣きついた夜もあった。結局、ティオが仲介してくれ、ライナの思い込み――出会った順序が違えばリオニーを好きになっていたのではないか――は解消され、その後は友人以上恋人未満(アベル本人は少なくともそう思っている)を維持していた。
また、別の日にはケリーと仲直りすべく幼馴染三人組と一緒に勉強会に参加したところ、途中からなぜかケリーにブチ切れられ、イーリス家の庭で一対一の取っ組み合いになってしまった。
もちろん、マチルダに絞られたのは言うまでもない。
そんなこんなでケリーとは一応仲直りし、一応わだかまりは解けた、ようであるとアベルは解釈している。
さらに別の日にはライナとコードとともにスタンの見舞いにも行った。
スタンはあれから起きることなく寝続けていた。
どうやらライナの見立てどおり、ナイフに毒が塗られていたようで、ライナの力でも解毒しきれなかったらしい。
アベルにとって充実した日々はあっという間に過ぎていったのだった。
5の月6日目。
アクセルとウルマーがアジール村を立ってから2週間以上が経過した。
そろそろ戻ってきてもおかしくない頃ということもあったのと、村長からの呼び出し――ルロの実の解析結果が出た――があったので、アベルは単身で村役場に向かうことにした。
『ねぇ、私は行かなくていいの?』
『今日は放課後校長先生の話を聞くんだろ?俺も村長に挨拶したかったしさ』
朝、二人はこんな会話をした。
そう、ライナはロドルフ校長から村のできた当初の話を聞く予定が入っているのだ。校長の予定がなかなか合わず、ここまで伸びてしまったのだ。
ライナは渋々アベルの提案を受け入れたのだった。
アベルはライナ達を送り出すといつもどおり皿洗いをしていた。朝の食後の皿洗いがアベルの日課になっているのだ。
母親たちはいつものように仲良く話しているのを、アベルはキッチンのカウンターから聞いていた。手は止めずに内容を聞き取れるまで成長している。
『もうそろそろなのね。残念だわ。皆さんともっと一緒に居たかったのに』
マチルダが残念そうに肩を落とした。
『私達も村に残りたかったのですが、そうもいかないと思いますので。すみません』
ナディアがそれに寂しそうに答えた。
『しょうがないわ。何かあったらいつでも戻ってきてくださいな』
マチルダが寂しそうに微笑んだ。
『一番残念がっている方がキッチンにいらっしゃいますけどね』
そう話を振ったのはエマだった。
"エマさん、すごく嬉しそうだな"
アベルは少し口角を上げた。
アベルはエマとの付き合いももちろん長い。彼女と息子のコードは王宮にいた頃"氷の親子"などと揶揄されており、特にエマはアベルの前でもめったに表情を崩さなかった。それが、イーリス家では本当に楽しそうにしているのだ。あんなふうに笑うのか、と最初は驚いてしまい、コードにこっそりと尋ねてしまったほどである。
『そうでしたわね。置いて行きたいのはやまやまなのですけどね。彼がいないと何も始まらないわ』
『ずっと会いに来れないのでしょうか?あの子も悲しむわ』
母親たちはアベルに聞こえるようわざと会話をしていた。それがわかっているからこそ、アベルは黙々と皿を洗い続けていた。
『いいえ。地下迷路のことは聞きました。落ち着いたら動けるように私達も協力しますわ』
『あら!それはよかったですわ。いつか迎えにきてあげてくださいな。ね?』
マチルダはそういうとキッチンの方を向いた。
『もう流石に慣れましたよ!お皿は無事ですよ!母さんたちが反対してもそのつもりなので!』
アベルは大きい声でそう返事をした。
母親たちはふふふと笑っていた。
キッチンに食器を下げに来たエマが、アベルに耳打ちをする。
『コードから聞きました。ナディア様には伝えていませんのでご安心を。ですが、絶対に無理はなさらないように。何かあればすぐに相談してください』
『すみません。お気遣いありがとうございます』
アベルも小さい声で返した。
『考えたくはありませんが、追手かもしれませんし、村人の誰かが何かを企んでいる可能性も捨てきれません。村人と接触する際は最大限に注意してください』
『はい。エマさんも母さんのことよろしくお願いします』
『承知しました。アベル様、いってらっしゃいませ』
そういうとエマはアベルに小さく頭を下げた。
その様子を少し遠くから見ていた濃い灰色の髪の持ち主は、アベルが出ていくのを待って食器を下げたのであった。
アベルがそれに気づくことはなかった。
◇◆◇
アベルはカバンに訓練服と古びた小箱を入れ、斜めにかけた。腰には用心のためのナイフをさしておく。皮の水袋を腰に下げ、ヒースのゲージを左手に持ち、出発の準備が整った。
アベルは爽やかな風が吹く中、まずは村役場を目指した。
途中で何人かの村人に声をかけられた。みなフレンドリーで、なぜかライナと一緒に歩いていることを知られていた。
"村のコミュニティってすごいな"
そんなことを思いながら村の中心にある学校の横を通り過ぎようとしたとき、ライナがティオとケリーとともにボール競技をしているのが目に入り足を止めた。どうやら体育の授業のようで、みんなアベルには気がついていないようだった。
ひときわ目立つ美しい銀髪に目を奪われる。よく見ると周りの男子たちもぼうっとライナの方を見ていることがわかる。が、ティオがその男子たちの方を見るとさっと視線をそらした。ケリーが点を決めると女子たちが大きな歓声を上げる。そしてケリーがその勢いでライナに抱きついた。その瞬間また女子から大きな歓声が上がる。男子たちはそれを悔しそうに見ていた。
《巫女様はモテるようですね。まぁ、ティオくんとケリーさんのおかげで誰も手出しはできなさそうですが》
『そうだな。これがこの前コードが言ってたやつか。本当に二人には感謝しないとな』
アベルはいつしかの朝盗み聞きした内容を思い出した。
《でも、来年度からはわかりませんね。巫女様が飛び級試験とやらに受かったら高等部に通うことになられる。高等部の男どもからも果たして守りきれるのやら?》
『そう言われると心配だな』
《まぁ、貴方みたいにすぐ手を出そうとする人もいないか》
『本当に余計なこと言うなお前は』
《やはり、好きな人とはずっと一緒にいたいものなのでしょうか?》
『そりゃそうだ。できれば俺もあそこにまじってずっと近くにいられたらって思う』
《それでも、貴方はやるべきことをやろうとするわけですね。そこは少しだけ、本当に少しだけ尊敬します》
『もっと素直に褒めたらどうだ?』
《絶対にイヤです》
一人と一匹は村役場へ向かった。
◇◆◇
商店通りに差し掛かったところで、アベルは一人の30代くらいの男と出くわした。男は大きな荷車にたくさんの木箱を積んでいた。
『おや、こんにちは。見かけない顔だ』
『こんにちは。この前からお世話になってます』
『あぁ!イズールから来たっていう、ライナのとこの』
『みなさん同じような反応するんですね』
『そりゃ、あの子のことだからね。ゆっくりしていって』
そういうと男はアベルとわかれ、すぐ手前の店の前に荷車を置いた。
アベルは何も気を止めず再び歩きはじめた。
ヒースは陽気に誘われコクリコクリと昼寝をしていた。
男の右手に包帯が巻かれていたことに、アベルは達は気づかなかった。
◇◆◇
村役場につくと入り口で村長を見かけ、声をかけた。
『悪いね、これから少し用があって一時間程度で戻る。もしよかったら訓練場を見に行くといい。ギルがアベルくんの話をみんなにしたらしく、興味を持ってたぞ』
『え、ギルさんもう訓練してるんですか?!結構な火傷だったのに?!』
『それがあいつらの取り柄だからな。じゃあ後で』
そう言うと村長は出かけていった。
アベルは敷地内にある訓練場に向かった。
『こんにちは、お邪魔します』
アベルは訓練場の扉を開けた。
そこでは10人ほどの青年たちが訓練に勤しんでいた。その奥の方にはギルもいた。
皆はアベルの存在に気がつくと訓練を中断し、ギルがアベルを手招いた。
『アベルくん!よく来てくれたっすね!』
『ギルさん、お怪我は?』
『こんなのは怪我に入らないっすよ。ライナに治してもらってなかったら一日の入院じゃ済まなかったかもしれないっすけどね』
へへ、とギルは自身の左下腕を軽く叩いた。
『おおぉい、ギル!気安くお嬢を呼び捨てにするんじゃねえぞ。姐御に知られたらしばかれるぞ』
そう大声を出したのは30代前半ほどの大男であった。焦げ茶に金が混じった髪を短く刈り上げたガタイのいい男で、深緑色の瞳が鋭く光る。
『隊長!すみません。ソフィーさんには黙っててください』
『まぁ、お前がわざとそうしてるのわかってるけどな。アベルくん、こんにちは。警備隊隊長のギャリックだ』
アベルはギャリックと握手を交わした。ギャリックの背丈はウルマーよりさらに少し大きく、アベルが見上げる程だった。
『こんにちは、ギャリック隊長。昨日は訓練服をありがとうございました。少し破けてしまって。汚れは洗濯で落としたのですが』
『がはは、気にするな!勲章じゃないか!律儀にありがとうな!こちらこそ、先日はすまなかった。ギルとあともう一人くらいつけてればよかった』
そういうとギャリックはアベルから訓練服を受け取った。
『いえ、ギルさんがいなかったら俺たちはどうなっていたか。怪我までさせてしまってすみません』
『俺はいいんすよ。入院するのもたまにはいいもんです』
ギルは爽やかに微笑んだ。そこでギャリックがアベルの両肩をバシバシと叩き、上から下まで見た。
『こりゃギルが言ってたとおりだな。こりゃ鍛えがいがありそうな少年だ。村を出るのが残念だ。いつかはケリーと並んで村の主力になりそうなのにな』
『げ。ケリーってそんなに期待されてるんですか?』
『そうだ。ケリーは魔法もそこそこ使えるし動体視力と瞬発力が恐ろしく良い。一撃が軽いのが課題だがな。あの世代の中ならトップクラスだ。まぁ、同世代の男が本気で訓練を始めたらまた変わるんだろうけどな』
ギャリックは後半部をすこし寂しそうに言った。
『そうなんですね。先日空き地で勝負を挑まれて。危うくやられるところでした』
『それは俺たちも知ってる。ケリーはお前に負けたのが悔しくて学校でも走り込みしてるらしいしな。まぁ、お嬢が取られそうになったもんだからケリーも焦ったんだろうよ』
『そういえば、なんで皆さんはライナをお嬢と呼ぶんですか?』
アベルは素朴な疑問を投げかけた。
警備隊の面々は少々苦笑した。
『ソフィーの姐御、村長秘書のソフィーさんは警備隊にも属してるんだが、その人がライナを尊敬、、もはや崇めてるんだよ。よかったな、ソフィーさんが任務中で。お嬢とアベルくんがイチャイチャしてるところを見られたりでもしたら、君の身の安全は保証できない』
『そ、そうなんですか。ソフィーさんは一瞬だけ顔を合わせたことがありましたが、そんな方だったとは』
アベルはピングブラウンの長髪の女性を思い出した。
『背後には気をつけろよ』
『怖っ!』
『ガハハ!それにしても、お嬢にも春が来たのか。我々警備隊としても嬉しいことだ!』
『いや、俺はそんな、、』
『お嬢が誰かに入れ込むことなんざ今までなかったんだ。ティオとケリーは別枠だけどな。もっと自信を持て』
『ありがとう、ございます』
『本当は手合わせ願いたいところだが、村長から止められてるんだ。大切な客人だから怪我させるなってな。残念だ』
ギャリックが心底残念そうに言った。
『いつか機会がありましたら、そのときはお願いします』
二人は再び硬い握手を交わした。
警備隊の訓練メニューに興味があったアベルはギャリックに色々と質問した。そうこうしているうちに約束の時間が近づいてきたので名残惜しく訓練場を後にした。
再び村役場に向かって歩き出した。
《僕はやっぱり女の子に囲まれる方が好きですね。むさ苦しいのは苦手です》
『そうか。俺はあれくらいのほうが落ち着くけどな』
《まさか、》
『お前の言いたいことはわかったが、違うぞ。誰も俺のことを腫れ物として扱わないのが本当にありがたい』
《あなたも大変でしたね》
『素直なのも気持ち悪いな』
《はぁ。これだからアベルは嫌いです》
『お前がいつも素直じゃないのが悪い』
《ふふ、傍から見ればただの独り言を言ってるやばいやつですけどね》
『そうだった。忘れてた』
すれ違う村役場の女性に怪訝そうな顔をされ、アベルは青ざめた。
◇◆◇
村長室に通され、客人用の椅子に座ったアベルは村長と向かい合った。
『わざわざすまないね』
『今までお世話になりましたので、そのお礼の挨拶も兼ねて』
『気にすることはないのに。困ったときはお互い様だ』
『その精神がこの村に染み込んでいることが、本当に素晴らしいと思います。僕は、どちらの国で過ごすことになってもこの村で学んだことを忘れずに生きていこうと思います』
『何をおおげさな』
『大げさではありません。そしていつか、必ず村にまた来ます。そのときは彼女を連れていきます』
アベルの強い眼差しに、ヘルムートはふっと表情を和らげた。
それは、村長でなく祖父の顔だった。
『そうか。この村はあの子には窮屈すぎる。色んな意味でな』
『ライナから聞きました。彼女の知っているほうの真実を』
『その言い方からすると、ゲルデから聞いてるな。私とゲルデ、彼女の両親しか知らないことなんだ。悪いが教えられない』
『はい。それはわかっています。知っていても知らなくても僕の意志は変わらないですが』
『君はいいかもしれないが、周りがどう思うか。相当な覚悟が必要だからな。ふふ、後はウルマーを説得するのが一番大変かもしれない』
『溺愛されてますよね』
『それはそれはもう』
『それでも、彼女にふさわしい人間になって戻ってきます。ウルマーさんにも認めてもらえるように。あ、村長、これを』
アベルは古い木製の小箱を取り出してヘルムートに渡した。
ヘルムートが箱を開けると、中には鮮やかに緋色に輝く小石が入っていた。それはアベルが先日ティオに渡したものと同じくらいの大きさのものだった。
ヘルムートはその正体に気が付き、首を横に振った。
『これは、受け取れない』
『僕が持っていたもう片方はティオに渡しました。僕には使いこなせないですから。母さんにも許可をとっています』
『これはイズールから漏れたら大変なものだろう?見たところ純度も相当高いものだ』
『それは、今は、です。近いうちにそうならなくなると思います。僕たちの影響で。そうなったらどのように流れていくかわかりませんが、この村であれば正しく使っていただけると信じています』
『ティオの研究には、その価値があると?』
『はい。私達はそう確信しています。だからこそ託すんです』
『分かった。時が来るまで私が預かろう。そして必ずや、正しい使いみちで人々に還元すると約束する』
『ありがとうございます』
『そうだ、分析結果だよな。一つわかったのは、あの実は普通に流通してるものよりも溜め込んでいる魔素の量が多かったんだ。桁違いといってもいいほどに。あんなものを食べたりしたら魔族も人族もたまったもんではないな。あんな森の片隅にあったなんて。あそこは地下迷路の出入り口からも離れてるから見回り対象じゃなかったんだ』
『そうだったんですね。あれはあそこでたまたま育ったのでしょうか?』
『それはわからない。ただ、誰かがあそこから実を回収して何かをしていたのは確かだろう。それが何者なのかはわからないが』
『もしかしたら、僕たちの追手が潜んでいるかもしれません』
『その可能性は低いだろう。ずっと村人に知られずに長い期間潜伏するのは至難の技だ。村中を警備隊がうろちょろしてるしな』
『では、村の誰かが、、』
『考えたくはないが、けが人も出ている。それに、君のことを狙ったというのも気になる。近々要人たちが来ることは他に漏れてはいないと思うが、何かあったらまずい。警備隊を含め、犯人を捕まえるために全力を尽くす』
『わかりました。ご協力よろしくお願いします』
『それはこちらのセリフだ。すまない、村のことに巻き込んでしまって』
ヘルムートはアベルに頭を下げた。
◇◆◇
アベルはその足で診療所へ向かった。入院しているスタンに会うためであった。
『もう意識が戻ってるといいんだが』
《わかりませんね。貴方も長く眠っていたのでしょう?》
『そうだな。たしか3日くらい寝てたはず』
《しぶとい貴方でそれですから、期待できないかもしれないですね》
『うるさいぞ』
《それにリオニーさんにも顔を合わせづらいですしね》
『それは、まぁ、そうだけど』
そんな会話をしていると診療所についた。時刻は昼時だった。
受付には別の看護助手がおり、アベルは内心ホッとしていた。
そこにゲルデが通りかかった。
『おう、がきんちょ。今日はどうした?』
『スタンさんの様子を見に来たんです』
『今日も起きないだろうよ。毒に体力を持ってかれたみたいだな。まぁもともとあいつは体力がないからな』
まさかこんなにとアホだとは思ってなかったよ、とゲルデは付け加えた。
アベルは気になっていたことを尋ねた。
『そういえば、ライナはスタンさんと知り合いだったんですよね』
『そうさ。スタンとソフィー、あともう一人ロイスってのがいてな、そいつらがよくライナとティオの遊び相手になってくれてたんだ。マチルダがミリーを身籠って大変だった時期なんかは本当にありがたかった』
『そうなんですね。だからライナはあんなに必死に』
アベルはライナがあんなに必死にスタンのことを治そうとしていたのを見て複雑な心境だった。
恋愛感情があったのでは、と疑ったりもした。
ちなみにそれをこっそりとコードに相談したところ、『貴方を治そうとしてたライナも相当必死でしたからね』と言われて嬉しくなってしまったのは他の誰にも言えない。
『スタンは魔法研究が大好きでさ、ライナの力がわかったときも文献広げて色々調べてくれたんだ。今思えば、あの時からアイツはライナの力に執着してたのかもしれないな』
ゲルデは小さくため息をついた。
『先生、起きたらすぐスタンさんから話を聞いてください。犯人を知ってるんです』
『言われなくてもそうするつもりだ。警備隊も交代でついてくれるから彼らにもお願いしてるさ。安心しろ』
『ありがとうございます。先生、最後までご迷惑おかけしました』
『最後のはお前は関係ないだろ?村の問題だろうよ。あ、昼飯にサンドイッチでもどうだ?リオニーの分も作ってきたんだが、あいつ今日休んじまってさ』
『いや、でも』
『食ってけ。毒は入ってないぞ。そっちのウサギには中庭の菜っ葉をやる』
『じゃあいただきます』
《複雑ですね、リオニーさんの代わりってのも》
"黙りなさい"
二人と一匹はアベルがキレイにした小部屋で昼食を取ることにした。
『いやー、助かった。こんなにキレイにしてもらって悪いな』
『いえ、これくらいは』
『最初はあんなにツンツンしてたのにさ。死にたがってたやつはどこにいったんだか』
『あれは忘れてください。彼女のおかげですよ。このサンドイッチ美味しいですね!』
アベルはサンドイッチを食むと目を丸くした。
『そうか?いつもと何ら変わらんけどな。あたしの愛情が入ってるからか』
『はい、そうですねー』
『棒読みとは可愛くないね。こんなんじゃ孫はやれないね』
『すごく美味しい!涙がでそう!』
アベルは涙を拭う仕草をした。
『極端なんだよ。あ、そうそう、リオニーとなんかあったか?』
『な、なんですかいきなり』
アベルは顔を引きつらせた。
『あー、やっぱりお前か。あいつ面食いだからな』
『ちゃんと丁寧にお断りしました』
『じゃなかったらぶっ飛ばしてるさ。さぁ、さっさとお食べ』
こうして、アベルの村での交流は終わりを迎えた。




