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村へ行くなら地下迷路をどうぞ  作者: 月 影丸
第1章 はじまり
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46話 学校での話

4の月25日目。

晴天の中、ケリー・シルフは朝から学校の敷地内を実習着で走り込んでいた。

"あんなやつに負けたなんて"

ケリーはアベルに負けたことを悔んでいた。魔法が使えない、しかもほぼ同学年相手に負けたというのが彼女のプライドを傷つけていた。



ホームルー厶の十分前に教室に戻ってきた彼女を複数の女子が取り囲む。

「はい、ケリー。お水」

「タオル使って」

「私のも使ってー」

ケリーは笑顔でそれらを受け取るとティオの隣の席についた。

ティオは先に席についており、授業の準備をしていた。ライナは荷物はあるが席を外していた。

「おはよう、ケリー。お前、相変わらずの人気だな」

「おはよう、ティオ。あたしが羨ましいかい?」

「いや、俺は別に」

ティオは金色の瞳を少し伏せた。

ここでケリーはティオがこころなしか沈んでいることに気がづいた。いや、ここ最近ずっと様子がおかしいことには気がついていた。

ティオにこんな顔さたのはあいつしかいない。気に入らない金髪野郎め。そう思いながらケリーは内心で舌打ちした。

「あいつか。くそ、今度はティオに何しやがったんだ」

ケリーは鬼の形相でここにはいないアベルのこと睨む。

「いや、これは俺の問題だから。あいつは関係ない」

「お前は優しいんだよ。誰に対しても。放課後、話聞くよ?」

「ありがとう。今日はお前の家でいいか?鉢合わせたくないし」

「おう、そうしようぜ。しっかり慰めてやるからさ!」

ケリーは大きくティオの背中を叩く。

「叩くな。すごく痛い。そしてでかい声で言うんじゃない」

ティオは背中をさすりながら言った。


このやり取りを、教室中の女子がのぼせながら聞いていたのは二人の知らない話である。



ライナは登校後すぐ図書室に行った。参考になりそうな本を数冊借りると、教室に戻り自分の席に置き、ケリーとティオの間に来た。

「おはよう、ケリー。朝から走り込んでるのね」

「おはよう、ライナ。次はあいつに負けたくないからさ!」

「なんか、ごめん」

「君が謝ることはないだろ?本当に、あたしのライナを独り占めしやがって」

そういうとケリーがライナの腹部に抱きつく。その瞬間、周りから悲鳴にも似た声がいくつも聞こえた。

「やめてよ、恥ずかしい」

「ライナが足りない」

「ソフィーさんと同じこと言わないで」

「お前ら、もうホームルーム始まるぞ」

ティオがその様子を見て呆れながら言った。

三人は席についた。



◇◆◇

ライナ、ティオ、ケリーはその後も授業を難なく受けていく。もともと最高学年の二人にとっては復習のようなものであり、ライナの実力的にも問題はないレベルであった。

あっという間に昼の時間になり、三人は昼食を取りに食堂へ向かった。

食堂は三人のいる中央棟の一番端にあり、全校の生徒と職員が利用する大きなものである。メニューは一律で日替わりになっており、費用は村が全面的に負担している。

三人は一緒に食堂へ向かい、真ん中の列の窓際の席を確保した。ここは3人の定位置とも言えた。


「昼休みは何する?ぬかるんでてボール使えないしさ」

ケリーは食事を運びながら二人に声をかけた。

「俺は午後の実験の準備の担当になってて。レオナ先生最近疲れてそうだし、早めに行って準備手伝おうかと」

「そうね、最近先生ちょっと辛そうだものね。ごめん、ケリー、私ちょっと調べものがあるの」

いつものライナならここで会話が終わっていたが、少し考え、もう一言付け加える。

「ケリーも手伝ってくれる?」

ケリーは瞳を輝かせた。

「ちょ、ライナ。あたしを頼ってくれるのか?!初めてじゃないか?!」

「そんな、初めてじゃないでしょ?ってかこぼすから落ち着いて!」


三人は席についた。

「調べものって?」

ティオの問に、ライナは少し答えにくそうにした。

「村の歴史のこと。少し気になってることがあって。朝もそれで本を探してたんだけどね」

「ふーん。詳しく聞きたい」

ケリーとティオが身を乗り出した。

「アジール村ができた当初のことが気になって。前に授業ではいざこざがあって負傷者が出たとしか習わなかったじゃない?ちょっと気になっちゃって」

「なるほどね。確かに詳しくは知らないな」

ケリーが腕を組んだ。

「それならさ、文献より生の声のほうがよくないか?」

ティオが少し考えてから言った。

ケリーとライナはティオの意図に気づく。

「ティオ、さすがだわ。その手があった!」

その後3人は楽しくランチを済ませた。




二人はティオと別れ、校長室へと向かった。廊下には数名の生徒が隣の職員室に質問に来たりしていた。

ライナが校長室のドアをノックしたが、いくら経っても返事がなかった。

『やぁ、ライナさん。ケリーさん』

そう声をかけてきたのはコードだった。

『コード先生、こんにちは。校長先生がどちらにいらっしゃるかご存知ですか?』

ライナの言葉にコードはすみませんと謝った。

ちなみにコードは家の中と学校では接し方を変えており、ライナもようやくそれに慣れてきた頃である。


『今週は高等部につきっきりらしいんだ。来週なら大丈夫だと思うよ。話しておこうか?』

『はい、よろしくお願いします』

『今日もアベルくんと出かけるんでしょ?』

コードは耳打ちした。

そう。この日はアベルとともに診療所に出向き、"薬膳茶"を作ることとなっていた。

『襲われないようにね?』

コードはそういうとキラキラとした笑顔を見せた。

それを見ていた周りの生徒がざわつく。

『その顔で言う話じゃないですよね?!ってか学校で言わないでください!』

ライナはもちろん真っ赤になっていた。

『あとケリーさん、うちのアベルくんが粗相をしまして。ご迷惑をおかけしました』

『あれはあたしも悪かったというか。ってか先生とアベルはどういう関係なんですか?』

ケリーが疑いの目を向ける。

『ふふ、大切な友人ですよ。貴女にとってのライナさんかそれともティオくんか、それとも両方か。そんな感じです』

コードは笑顔を絶やさない。

『ふーん。先生もあと一週間くらいしかいないんですよね?他の子たちが残念そうにしてましたよ』

『そうですね。僕としても、もっとカイ先生にいろいろと教わりたかったのでそれも残念です。では、そろそろいきますね』

コードは二人に挨拶すると職員室に入っていった。


その瞬間、ケリーは大きくため息をついた。

『ライナ、あたしあの人苦手だ』

『そうなの?珍しいね、ケリーが好き嫌いするなんて』

基本的にケリーは好き嫌いはない。アベルを除いて。


『なんか、いろいろ見透かされてるような気がしてさ』

『そうね、そういうところはあるかも。じゃあティオのとこに行こうか?』


二人は授業準備をして、ティオのいる実験室へ向かった。





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