27話 プライドを捨てて
沈黙を破ったのはウルマーだった。
『俺がどうこう言える立場ではないんだが、アクセルはナディアさんを本当に愛していたんだ。あいつは強制送還されて抜け殻になってた。本当に言葉の通りの抜け殻だ。子どもがいたことも知らなかったんだ。知ってたとしたらどんな手を使ってでも二人をリズニアに連れてきていたと思うんだ。決して悪いやつじゃない、それはわかってほしい』
その言葉に反応したのはゲルデだった。
『そんなことはヘルムートもロドルフもあたしもわかってるさ。あいつは真っ直ぐなアホだからね。だけど、こればかりは本当にどうなるかわからない。もしアベルたちのことが公になったとしても王妃と子ども達がすでにいるからナディアさんは正式な王妃にはなれない。となるとアベルは第一子だが王子にもなれないし、王位継承権も得られないだろうね。だからといって、イズールとのことも考えると無碍にするわけにもいかない。これが人族同士の国なら、いずれはどちらかの国の領地を与えて治めさせるなんてこともできるだろうけど、国交断絶状態の、ましてや人族と魔族の国同士となるとなぁ』
ゲルデは腕を組んで、んーと唸った。
カイが眼鏡をちゃんとかけ直しながら言う。
『それに、長年人族に対して敵対意識を持っているイズールが報復としてリズニアに戦争を仕掛けないとは限らない。"大切なイズールの王女様がリズニアの王の子を無理矢理産ませられた"なんて形で広まれば一発アウトだ』
カイも腕を組んで宙を見つめた。
『そんな、、戦争だなんて。まさか、アベルが殺されるなんてことはないですよね?戦争を回避するためにとか、、』
ライナは震えながら目の前の面々に問う。その青紫の瞳からは今にも涙が溢れそうだった。
ロドルフがそれに答える。
『正直、わからない。可能性はないとは言い切れない。今回アベルくんたちはイズールから亡命してるような形になっている。これを好機と捉え、戦争を回避するために犠牲になってもらおうと考えているやつがいるかもしれない。もしくはその逆で、アベルくんやナディアさんを殺して戦争に持ち込もうとするやつもいるかもしれない』
ロドルフは辛そうにしている。
『そんな!!』
ライナが両手をテーブルに着けガッと席を立つ。ロドルフがライナをなだめ話を続ける。
『でもそれは我々が全力で阻止しよう。村の警備隊を使ってでも。一人の犠牲で他を救うなんて考えちゃいけない。アベルくんを犠牲にしないで戦争を回避する方法を考えなければならないんだ』
『平和的に解決する方法はないのかしら。いっそ、イズールが開国しちゃえばいいのよ。変なプライドを捨てて』
エマがボソッと呟いた。
『エマさん、今なんて?』
ゲルデがエマに問う。
『イズールが開国すればいいって。よくナディア様が言ってたんですけどね。イズールは昨年も一昨年も、その前も、作物の出来が良くありませんでした。このままだと確実に餓死する平民が多く出ます。いや、もう被害が出てる地域も、、、』
『イズールには意外にも地下資源が多く、鉄鋼や宝石類がそこそこ取れるのに、取引先がないのでどうしようもないんですよね、先生?』
コードがカイに問う。
『よく覚えてましたね、その通りです。今までは人族への恨みから開国するという考えが停滞していましたが、もしかしたら』
『これが好機になるのかもしれんな。アベルが、架け橋になるかもしれない』
ロドルフの一言に、一同は一筋の光を見出した。




