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村へ行くなら地下迷路をどうぞ  作者: 月 影丸
第1章 はじまり
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22話 17年前の出来事

病室には一瞬の沈黙が流れる。外では雨が強く屋根に叩きつけており、病室に雨音が響いていた。

『俺の父親が、リズニアの国王?』

アベルはポカンとした表情でつぶやく。


『そうだ。2年前までは王子だったがな。ナディアさん、貴女がまさか、イズールの王女様だったとは。恥ずかしながら、名前が記憶になく、、』

ヘルムートがナディアに話しかけた。ナディアは申し訳無さそうに頭を下げた。

『すみません、アベルが回復した段階で打ち明けるつもりだったんです。父は私とアベルのことを疎んでいましたので』

『こちらこそ、早く伝えればよかった。そのブレスレットといい、アベルくんの外見といい全てが現国王アクセルにつながるものでした。相手が相手なので事実確認をしてからでないといけないと思い、伝えるのを渋ってしまったんだ』

ヘルムートはナディアの左手首にあるブレスレットを見つめた。ナディアもそれを見つめ話し始める。

『まさか、アクセルがリズニアの王子だったなんて。亡命した貴族だって言ってたんです。私も家出をしていた身だったので王女であることを伝えませんでした』

『なるほど、互いに身分を明かさなかったんですね』

カイの言葉に、ナディアが頷き、ぽつりぽつりと語り始めた。


『私はイズールのためにも人族と国交を進めるべきだと思っており、そのことを父に進言しました。しかし、女のお前には口出しさせないと反対されて、家を出たんです。もう二度と戻らないつもりで』

『ナディアさん、すごい』

ライナはナディアの行動力に驚いた。普段のおっとりした様子からは想像がつかなかった。

『彼とはラヴィーネ山脈のふもとにある森で出会いました。彼も人族と魔族の和解を目指して単身でイズールにやってきたそうです』

『色々あって意気投合した私達は、トワナから来たという一人の男性と知り合い、三人でトワナで新しいビジネスを始めようとしました。が、それからすぐにアクセルは姿を消してしまいました。二人で手分けしてアクセルを探しているときに、私のことを探していた捜索隊に捕まってしまったんです』

ナディアは悔しそうに話した。

『アクセルは国の捜索隊に見つけられ強制送還されたんだ。必死に抵抗したらしいが。村にも王子の逃走と強制送還の話は入ってきてたからな』

ヘルムートが言った。その表情は苦虫を噛み潰したようだった。

『そう、だったんですね。てっきり、私は嫌われてしまったのかと。それでもあの人のことを忘れられなかったんです』

ナディアは涙を瞳に溜めながら話し続けた。

『城で幽閉されているときに妊娠がわかったんです。大好きなあの人との子どもだから何が何でも諦めたくなかったんです。それが結果としてアベルを苦しめることになってしまったのですが』

ナディアは金色の瞳から涙を流してアベルを見つめる。

『母さん』

アベルは何を言っていいかわからなくなっていた。


『しかし、更に複雑になったな。王にはすでに王妃も子どももいるし、ナディアさんやアベルの今後の身分のこともある。さらにはあのイズールの国王がどんな動きをするか。課題は山積みだ』

ゲルデが核心をつく。


その言葉に、ナディアはドキリとした。

"そうだわ、子どもがいるって言ってた。王妃様もいる。私はアクセルの側にはいられない"

ナディアは下唇を噛みしめる。

"いいえ、ひと目会えるだけでもいいじゃない。少し前の私ならアクセルが生きていただけで嬉しかったはずよ"


『そうだな。もはや村だけでどうにかなる話ではない。ガリオン様もきっとお二人を探しておられるはず。彼にも来てもらうほかないかと』

ロドルフが村長に伝えた。ヘルムートもそれに同意する。

ここでナディアが口を挟んだ。

『今までの話ですと、お二人は父と面識が?』

『ええ。ロドルフはガリオン公が若い頃からの知り合いですし、私も村ができてすぐの頃に向こうで何度かお会いしています』

ヘルムートのその答えにナディアは一瞬目を見開いた。

『そう、だったんですね。当時からイズールは完全に閉じられた国ではなかったんですね』

ナディアは少し目を伏せた。

『ええ。交易を取り仕切っていたのは陛下自身だったので他の誰にも知られることはなかったのでしょう。彼は非常にガードの固いお人です』

『そうですね。本当に、本当に頑固者ですわ。国交が秘密裏にでも開かれていたのなら教えてくれればよかったのに。でも、その頑固さのおかげでアベルがいるのは事実ですわ。感謝しなくてはね』

ナディアはアベルを優しく見つめた。アベルは少しくすぐったくなって視線をそらせた。



『すみません、村長。ナディア様たちが保護されたあの日、僕が見に行っていればもう少し早く気付けていました』

カイはヘルムートに頭を下げたが、ヘルムートは頭を上げてくれと頼んだ。

『先生、気に病まないでくれ。どちらにせよアクセルには何も知らせずに来てもらうことになっていたはずだ』



『こうなったら、急いでイズールにも使者を出そう。カイ先生、アクセルとの事実が分かり次第、うちの秘書のソフィーと一緒に行ってきてもらえますか?いきなりアクセルのことを伝えるのはマズいので、ナディアさんたちが見つかったということで村にお越しいただこう。護衛も最小限に留めてもらうよう伝えてくれ。馬で飛ばせば4日もあればつきましょう。ソフィー、馬の手配を!』

村長がドアの方へ向かって叫ぶとドアが開き、ソフィーがお辞儀をした。

『承知しました。牧場で馬の手配をしてまいります』

ソフィーはそれだけ言うとまた優雅にお辞儀をしてドアを締めた。


『ちょっと待ってください。あの雪山は馬では無理なのでは?!』

アベルが村長に問う。

『そのへんも含めて話をしよう。この村の秘密を』

ヘルムートが話し始めようとしたとき、突如病室のドアがノックされた。



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