12話 ある男の話
大きな窓の外には賑わいの少ない街がひろがり、その奥に溶け始めた雪と茶色の目立つ畑、そしてさらに奥には白と緑のコントラストが美しいラヴィーネ大山脈が広がっている。
初老の金髪の大男は、大山脈の白味がかった部分を眺めていた。
男の命で2つの捜索部隊が動いているが、目当ての人物達がラヴィーネ大山脈に入ったという情報までしか入って来なかった。
"あの山で遭難してしまったのだろうか"
ーーあの村に遣いを出そうか。いや、どこから情報が漏れるかわからない。迂闊なことはできないーー
きな臭い動きをしている貴族の情報も掴んだ。やつらが彼らを山に追い込んだのだろう。
"バカなことをしてくれたものだ。いや、バカなのは俺か"
ーー気づいていた。アベルが嫌がらせを受けていることに。ナディアまでも嫌味を言われていたことに。でも気づかないふりをした。気持ちに蓋をした。
悪いのは人族であり、それと関わってしまったのだから仕方がないと、そう思い込もうとした。頭の奥底では警鐘が鳴っていた。アベルはもう限界ではないかと。私にとって孫。可愛くないわけはない。彼にはなんの罪もなかった。それなのに、俺は小さなプライドを捨てきれず、手を差し伸べることができなかった。気づいたときには遅かった。ナディア、アベル、エマ、コードの4人は姿を消してしまった。どうか、どうか生きていてくれーー
その時、後ろからドアをノックする音が聞こえた。この一報が彼の運命を大きく変えることになるのだが、それはもう少し先の話である。




