12話 お守り作り②
ティオとケリーはライナの合格祈願でお守りを作るべく、イーリス家へ向かった。
「ティオおかえり。あら、ケリーも来てくれたのね」
マチルダが二人を出迎えた。それに対しケリーが頭を下げた。
「マチルダさんこんにちは。お邪魔します」
「ふふ、あとで飲み物とお菓子持っていくわね。鍵は開けておくのよ。いい?」
「わかってるって」
ティオはマチルダの問いにぶっきらぼうに答えた。
二人はティオの部屋に入った。
ケリーは気になってたことを口にした。
「なぁ、マチルダさんなんであんなに念を押してたんだ?」
「あいつがライナに抱きついて泣かしたからな」
「うわ、最低だな。いや待てよ。あたしも同じようなもんか」
ケリーは少し青ざめた。彼女が思い出したのは二人の関係性が少し変化したあの日のことだった。
「確かに。俺は泣いてないけど」
ティオは少しだけ顔を赤くして言った。
「泣かれたらあたしへこんで立ち直れないかも」
「あいつもそうだったらしい」
「げ。似た者同士なのか。あいつとあたしは」
「んー、ノーコメントだ」
ティオは満面の笑みで答えた。
ケリーは胸を押さえる。
「同じなのか、、!」
「あはは。さぁ、取り掛かるか!空き部屋から椅子持ってくる」
「りょーかい。ありがとう」
ティオがこの前から使われなくなった部屋から椅子を持ってきた。多分、アベルが使ってた椅子だな、と言いながら。
「噂をすれば。なんか、不思議だな。あんなに近くに居たのにさ、全然違う世界にいるんだろ、あいつ」
「そうだな。あいつ、今どんな気持ちでいるんだろ。俺があいつの立場なら、本当に耐えられないかもしれない」
ケリーはアベルの気持ちに思いを馳せた。
「あたしもティオに忘れられたら耐えられない」
「ケリー」
「考えただけで怖くなる。あいつはこんな思いをしてるんだよな。何としても協力してやりたい。ちょっと不本意だが」
ケリーはアベルとのやりとりを思い出していた。アベルがライナのことを一番に考えていることはケリーもよくわかっていたのであった。
ケリーはここで、ティオの部屋にいた子ウサギにケージ越しに話しかけた。
「ヒース、こんにちは。お邪魔してるよ」
ヒースはペコリと頭を下げた。ケリーはそれを見て目を輝かせた。ライナの事件により、ヒースが念話できることを知ったケリーだったが、自分は念話ができないことにもどかしさを感じていた。
「すごい。本当に言葉がわかるんだ。なぁ、何か言ってるか?」
ケリーがティオに尋ねると、ティオは貼り付けたような笑顔を浮かべた。
「いらっしゃい、だって」
"うわ、なんか絶対違うことも言ってるやつだ、コレ"
ケリーは苦笑し、それ以上聞くことをやめた。
ティオやライナは普段からヒースのことを"性悪ウサギ"と呼んでいることを思い出したのだった。
「入るわよ。はい、紅茶とクッキーね」
ドアのノックとともにマチルダが部屋に入ってきた。彼女の手にはおぼんがあり、その上には二人分の冷たい紅茶と手作りのクッキーがあった。
「ありがとうございます」
「今日は二人で何こそこそしてるのよ?ライナには内緒のこと?」
マチルダはニヤリと笑いながら言った。
「そうだ。あいつ飛び級試験受けるだろ?お守りでも作ってやろうと思って」
ティオはポリポリと頬を右手の人差し指でかきながら言った。それはティオがよく照れたときに行う癖だということに他の二人は気づいていたのだった。
「あら、素敵!二人からもらえるならライナは大喜びね。あの子、本当に変わったわ。彼女は無意識なんだろうけど、あなた達のことをしっかり頼るようになったっていうか。アベルくんには感謝してるわ」
「あたしたちもです。何かあれば、なんでも協力するので言ってくださいね」
ケリーはいつもの営業スマイルで言った。これでときめかない女子は少ないのだ。それは大人であってもあまり変わらない。
「もう。ケリーったら本当に素敵ね。これはモテるわけよね」
マチルダは眼福だわ、と言いながらデレデレしている。ティオは小さくため息をついた。
「学校にはファンがたくさんいるんだ。俺、いつか刺されるかも」
ティオは少し青くなって言った。
「あんたもうかうかしてたらケリーに逃げられるわよ。この子はもう少ししたら大人の男の人からもモテるわよ。ちゃんと捕まえておきなさい」
マチルダはびしっという効果音がつく勢いで言った。
「か、母さんまで。恥ずかしいからやめろ」
ティオは頬を少し赤らめた。それを見てケリーも赤くなった。
「ふふ。じゃあごゆっくり。ライナが帰って来たら一階の天井箒でつつこうか?」
「それ助かる」
「お願いします」
二人はマチルダに頭を下げた。
「じゃあね。健全なお付き合いを。ヒースちゃんも、二人のことよろしくね!」
マチルダはヒースにウィンクした。無論、マチルダも例の事件以降ヒースが念話できることを知っている。
「わかってるから!一言多い!そしてヒースに頼むな!」
ティオはマチルダにツッコミを入れたのだった。
「さすが、ゲルデ先生が育てただけはあるな。マチルダさんすごい」
「うちの女たちは強い。そして俺の地位はイーリス家で一番低いんだ」
「わかってる。そんなティオも好き」
「バカ。さらっと言うなよ。さっさと作るぞ」
ティオは耳まで赤くなったのをごまかすかのように机の引き出しから金属加工用の道具を取り出した。いくつかの金属製の道具が机の上に広がる。
金槌やペンチの類はケリーでもわかったが、太いペン状の道具だけは初見だった。ティオはそれを手に取ると、黒い小箱に入っている"芯らしきもの"を上部から入れ、マッチで火をつけた。上部から少しはみ出た芯は真っ赤になり、高温になっているのがわかった。
それをスタンドのようなものに引っ掛けて準備が整ったようだ。
さらに木の小箱から金属製の空洞の半球を8つ取り出した。まだ磨きが甘く輝きが少ない。それを1つとって金槌で丁寧に形を整えていくための準備を始めた。
「いつ見てもすごいな。本当に尊敬する」
ケリーは目を輝かせて言った。
「趣味だからな。ケリーには鈴の中身の核を作ってほしいんだ。土魔法で。そのときに、これを練り込んでほしい」
そういうとティオは別の小箱を取り出し蓋をあけた。中には青い粉が薬さじの半量ほど入っていた。本当にごく少量である。その粉はほのかに青い光を纏っている。
「なんだ、これ?」
「企業秘密だ。とにかく貴重なものだから無駄にしないでほしい」
「わかった。あ、何か入れ物貸して。庭から少し土もらってくる」
「あぁ。」
ティオは適当な容器をケリーに渡した。ケリーはそれを持って庭に向かった。
庭の端で、ケリーは左手に少量の土を握り土の呪文を唱えた。
魔法は自然界に存在する"媒介"があったほうが魔力の消費量を抑えられる。
土の魔法の場合、どんなに少量でも土が存在していれば、それを媒介として良質で多量の土を得ることができる。
ちなみに良質というのは術者の技量やイメージで大きく変わる。形状や色、含まれる有機成分まである程度コントロールできるので、土魔法適合者は昔からイズールでは農業関係者や陶芸などの芸術関係者に重宝されるのであった。
なお、金や銀や宝石などといった鉱物を生成することはできない。
ケリーは魔法で得た土を容器に入れた。そこから更に"粘土"を生成していく。
薄い灰色のそれはサラサラで目が細かく、ケリーが実力のある術者であることを物語っていた。
"ティオ、喜んでくれるかな"
などと表情筋を緩ませながら、ケリーはティオの部屋に戻った。
得た粘土とさっきの青い粉と混ぜ、少量の水を加えた。無論、水も魔法で出した"純水"である。
そして右手に意識を集中させ、土の呪文を唱える。
『フェルス』
その瞬間、土と粉は自然にまとまり青白く光り出した。そしてぎゅっと小さく固まり、直径1センチ弱ほどのキレイな球体が出来上がった。
光は最初に比べると弱まったものの、固まり自体が淡く青白く光り続けている。
「ちょっと待て。さっきの粉何なんだ?こんなふうになったことないぞ?なんで光り続けてるんだよ」
ケリーは目の前の現象に目を瞠った。
「やっぱりそうか。この量でこうなんだからやっぱりとんでもないよな」
「わけわからん。とりあえずやばい粉なんだな」
「そうだ。ライナの記憶のことが解決したら教える」
今すぐ知りたい、という気持ちを抑え、ケリーは頷いた。
「で、どうする?4個に分ける?」
「8個にできるか?小さい核を2つずつ入れたいんだ」
「了解」
ケリーはまた呪文を唱え、元の球体を8つの球体に分解した。8つの玉はほぼ同じ大きさになった。
そして最後に、土魔法でぎゅっと圧をかけ、2人で部屋の小さな暖炉で焼いた。こうして直径数ミリの茶色い球体が完成した。
「さすがケリーだ。こんなきれいにできるなんて」
「土魔法が一番得意だからね。ご褒美にハグしてくれてもいいんだよ?」
そう言うとケリーは両手を広げてティオを待った。ティオはそれを見て一瞬息を飲み、さっと視線をケリーから外した。ティオはまた耳まで赤くなっていた。
"やばい、可愛すぎる"
とティオに抱きつきたい衝動にかられたのは内緒である。
「それはまた今度な」
「え、してくれるの?!冗談だったんだけど」
「じゃあしない」
「冗談じゃないです。本気です!」
「お前ってやつはさ。さ、早く作るぞ。核を入れて接着するから、鈴全体に魔力を練り込んでほしい。無属性のやつな」
「あ、ああ。わかった」
ケリーは顔を赤くしながら作業に取り掛かろうとした。おまえってやつはさ、のところでティオが見せた少し困ったような笑顔にドキドキしてしまったのだった。
ティオは半球の中に核を2つ入れ、2つのパーツを重ねて作った球の継目を先程のペン状の道具で熱して溶かした金属でほんの一部を残してぐるりと接着した。この残した隙間から音が出る仕組みである。
この接着する道具はウルマーから数年前にもらったリズニア本土の土産であるらしい。
冷めたところで、ティオはケリーに鈴を渡した。
ケリーは軽く両頬を叩いて気を取り直し、鈴を左手で握り締め、魔力を込めていく。ライナが受かるようにという願いを込めながら。
「ちょっと、何これ?」
ケリーは自分が思っていた以上に魔力を吸われる感覚に驚き、声を上げた。
「どうした?」
「すごく、持ってかれる。びっくりした」
「やめよう。ケリーが倒れたら困る」
ティオの心配が、ケリーにとって何よりも嬉しかったりする。
「ふふ。ティオが介抱してくれるならいくらでもやるけど?」
「お前な」
「嘘だよ。4つくらいなら全然どうにかなる」
「本当か?本当に無理してないか?」
ティオがこう何度も聞いてくるのは、ケリーが何でも無理する傾向があるからだった。彼女は何をするにもストイックであり、限度を超えることで実力が伸びると信じてやまないのだ。
「してない」
「ケリーに何かあると俺、すごく困る」
「何?誘ってるの?」
ケリーはニヤニヤとしながらティオを見つめた。ティオはどんどんと赤くなっていく。
「ち、違う。なんでそうなるんだよ」
「可愛い。あたしはいつでも待ってるからね」
「悔しい」
ティオのそんな恨めしい顔ですら、ケリーは愛しくて仕方がないので、ひたすらにニコニコしていたのだった。
そんな会話をしながら二人は他の鈴も完成させていく。
残すは形を整えるだけになった。ライナも帰ってくるくらいの時間になったので二人は作業をやめた。
「はぁー、眠い」
ケリーはあくびをしながらぐんと伸びをした。
「ケリーは魔力って使いすぎると眠くなるんだったな」
「眠気でよかったよ。人によっては気持ち悪くなったり、食欲が増えたりするらしい。毎日トレーニングもしてるし、魔力もそんなに少ないほうじゃないんだけどな」
ケリーはまたもやあくびをした。
「やっぱり使い方を気をつけないとだよな。悪かった、実験に巻き込むような感じになっちゃって」
「別にいいよ。あたしはティオの役に立つならなんでもするよ?」
ケリーはあくびで少し潤んだままの瞳でティオを見つめた。
ティオは赤くなりそっぽを向いた。
「それさ、他のやつの前では言うなよ?」
「何で?あ、妬いちゃうから?」
「そ、そうだ」
ティオはそっぽを向きながら答えた。ケリーは予期せぬティオの言葉にどぎまぎしてしまった。
「え、す、素直に言うなよ。気が狂う」
「うるさい。もう言わないからな」
「拗ねるなよ。こっちおいで?」
ケリーが両手を広げた。
「俺は猫か?」
「むしろ犬だな」
「どっちみち動物か」
二人は笑った。
そのときマチルダからライナ帰宅の合図があった。
ケリーは帰る仕度をすませると、すっとティオを抱きしめた。
「おい、いきなり抱きしめるな」
ティオはどぎまぎしながら言った。ケリーはティオの耳元で囁く。
「さっきのはティオにしか言わない。他のやつに興味ないからね」
ティオは顔を真っ赤にし、返す言葉に詰まっていた。
「じゃあな!また明日!見送り不要だからな」
ケリーは自分のカバンを持つと爽やかに挨拶してティオの部屋を出た。
ティオもしばらくした後にはっと我に返り、ケリーを追いかけて部屋を出た。
階段でライナにすれ違った。
「ライナ、おかえり」
「ただいま。ケリー来てたのね?」
「あ、ああ。勉強してたんだ」
「そっか。あたしも一緒にしたかったな」
「明日しよう。俺、ケリー送ってく」
「走って帰るって言ってたよ。ケリーの脚ならもう家の前までついてるかもね?」
「そうか」
「何かあったの?二人とも顔赤いけど」
「何もない!」
「そう」
ライナはニヤニヤしながら自室へ向かったのだった。
ティオはキッチンに向かった。
キッチンではマチルダがビーフシチューを作っていた。
「母さん、合図ありがとう」
「ふふ。あら、顔が赤いけど、どうしたの?」
「なんでもない」
「さっきの話ね。ギルさんとか、結構ケリーのこと気に入ってると思うのよ。入隊前のケリーをあんなに熱心に指導して」
「そうなったらそうなったで、俺は別に」
「そろそろ自分の気持ちを大切にしたら?」
「だって、都合が良すぎるだろ。なんか、乗り換えたみたいでさ」
「タイミングが大切なのよ、何事もね。私はティオに、次こそは後悔しないでほしいの。可愛い可愛い息子ですからね」
「母さん。俺のことからかいたいだけだろ?」
「バレたか」
「だと思ったよ!」
「でも本当だからね。さ、ライナとミリーを呼んできてちょうだい」
ティオは頷き、ライナとミリーを呼びに行った。
「私は素敵な家族に巡り会えて幸せ者ね」
マチルダはそんなことを言いながら上機嫌でビーフシチューを盛り付けるのであった。
◇◆◇
就寝前、ティオは最後の仕上げとして鈴を磨いていた。
鈴は見た目は普通の銀色のものである。そして中は見えないが、青白い光を仄かに放っているのだ。彼は仕上げに鈴に青紫色の紐をつけた。
ティオは鈴を鳴らしてみる。コロコロとした心地良い音が部屋に響く。次に彼は鈴を握り、鳴るなと念じる。そしてもう一度鈴を振ると音がしなくなった。
最後にもう一度鈴を握り、鳴れと念じる。すると再び鈴はコロコロと鳴り始めた。
「成功だ。どれくらい持つのかは使ってみないとわからないな」
この鈴の金属の内側には、イズール産の"簡単な思念――イエスかノーか程のもの――を感知する特殊な薄い金属が貼られており、それと鈴の中身が反応して音が出たりでなくなったりする仕組みになっている。この特殊な金属の配分が難しく、少ないと思念の感知が難しくなり、多いと中身の魔力を大量に消費してしまうのである。以前からこの鈴の構想は彼の頭の中にあっていくつか試作したこともあり、今回の配分にたどり着いたのである。
《ティオはすごいですね。こんなものを生み出してしまうとは》
「ヒースに褒められるとなんかくすぐったいな」
《ふふ。たまにはね。それに今日は空気を呼んであまり話しかけなかったでしょう?》
「あぁ、それは本当に助かった。ありがとう」
《あぁ、ギルさんのことですか。知りたいですか?彼の気持ち》
ヒースは口角をくっと上げた。ティオは首を横に振った。
「いい。これは俺の気持ちの問題だから」
《だから金髪に奪われるんですよ、巫女様を》
「いいんだ。ライナが幸せになるためなら俺はなんでもするさ」
《本当に貴方という人は。あの金髪に貴方の爪を煎じて飲ませたいですね》
「やめてくれ。俺はあいつを尊敬してる部分もあるんだ。あ、そうだ」
《それがいいですね。貴方たちとお揃いならきっと喜ぶと思いますよ》
「先読みするなよ。次の手紙に同封するさ」
ティオは笑顔で鈴を見つめた。
◇◆◇
次の日の放課後。三人はティオの部屋で勉強会をしていた。三人はライナの勉強のためにイズール語で会話をしていた。勉強会もそろそろ終わりに差し掛かったころ、ティオがケリーとアイコンタクトをとり、ライナに声をかけた。
『あのさ、ライナ。これ、俺達からなんだけど』
そういうとティオは机の中から昨日完成させた鈴を取り出し、ライナに手渡した。
『ありがとう。鳴らしてみてもいい?』
ライナがそう言うと、二人は首を縦に振った。ライナは鈴を優しく振った。すると2つの芯がコロリコロリと転がり、心地良い音が部屋に響いた。
『キレイな音。どうしたの、これ?』
『ティオが作ったんだよ。あたしもちょっと手伝ったけどさ』
ケリーは得意そうに言った。ティオはケリーのおかげだ、と呟いた。
『え、すごい!お兄ちゃんなんでもつくれるのね。ケリーもありがとう!』
『しかけもあるんだよな、ティオ?』
ケリーがティオにパスをつないだ。
『あぁ。握りしめて、鳴るなって念じてみてくれ』
ティオに言われたとおり、ライナは念じた後に鈴を振ってみた。
『え、すごい!音がしない!』
『次は鳴れって念じてみて』
ライナが鳴れと念じると鈴はまた鳴り始めた。
『鳴った!これ、すごい!どんな仕組みなの?』
『話すと長くなるからまたな。ざっくりいうと中身とかに工夫してるんだ。魔道具っちゃ魔道具か。魔力を込めたのはケリーだ』
『ありがとう!すごく嬉しい。二人とも昨日これを作ってくれてたのね?』
そうライナに言われ、ティオとケリーはすこし恥ずかしそうに顔を見合わせた。ライナはやっぱりねと言った。
『えへへ。ライナが受かりますようにって魔力込めたから』
ケリーは照れながらライナに言った。
『嬉しい。え、どうしよう。涙でてきた』
ライナは瞳を潤ませた。ティオとケリーはわたわたとし始めた。
『ちょ、泣かないでよ。ティオのせいだからな!』
『俺のせいにするな。同罪だ』
『二人とも、ありがとう。大切にするね』
ライナは瞳をうるませながら、笑顔で二人に言った。
ティオは徐ろにまた引き出しを開けて鈴を2つ取り出した。
『ちなみに、ケリーにもやる』
『え、いいのか?』
『だって4つ作っただろ?』
『まぁね。じゃあみんなでお揃いだな。大切にする』
ケリーはティオに笑顔を向けた。ティオもそれを見て笑みを浮かべた。ライナはふと首をかしげた。
『あと一つは誰の分なの?』
ティオは4つ作ったと言ったのだ。計算が合わないのである。二人は一瞬顔を見合わせたが、ティオがすぐ答えた。
『それはあれだ、予備。ライナがなくしてもいいように』
『え、ひどくない?なくさないよ。ねえ、二人のも鳴らしてみてよ』
コロンコロンと軽やかな音が鳴り響く。
『どれも可愛い音。似てるけど微妙に違うんだね』
『中身は恐ろしいほど同じ形だけど外見が少しちがうからな。ちなみに鳴らないときに魔力を消費する仕組みだ。魔力が切れたらただの鈴になるけど、魔力を補充すればまた復活する』
『はーい。ちなみに何で鳴らないようにもしたかったの?』
『音出したくない時ってあるだろ?誰かを尾行するときとか』
『尾行しないだろ』
ティオの言葉にケリーはツッコミをいれた。
『まぁ、そういう機能をつけてみたかったんだ。今後の開発のために』
『流石お兄様ですね。商品化も視野に入っているとは』
ライナは少し棒読みで言った。ちなみに彼女が完全に棒読みになるときはお兄様ということが多い。
『これから村がどうなっていくかわからないからな。村に安定した収入源があったほうがいい』
『村長の孫は考えるスケールが違うな』
ケリーは関心したのだった。
『ただ、俺がやってることは危険と隣り合わせだから、販売特許とかも慎重に取らないと。悪用されたり兵器として改造されたらまずい』
ティオは大真面目に言った。ライナはその様子に少し吹き出した。
『そんなやばいものまで作ってるのか?!』
ケリーは顔を青くしてティオに尋ねた。ケリーの頭の中では警備隊にもあるようなないような危ない兵器や道具が想像されていた。
『今のところ危なそうなのはパン焼き器くらいだけどな』
ティオは笑いながら答えた。
『しかも最近調子悪いしね』
ライナも笑いながらツッコミを入れた。
二人の様子にケリーはほっと息をついたのだった。
『しょうがない、また改造するか』
『あたし、協力するからな?』
『ありがとう。助かる』
そんな会話をしながら、この日の勉強会は終了したのであった。




