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彼女は3×8メートルの範囲をモップで磨いでいる。  作者: 和田好弘


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24_国家に対して報復することに決めました

※餡栗屋←は誤字ではありません。



 モデルとするものは、1980年代のアニメに登場した、暗殺用人型アンドロイドにしましょう。


 えぇ、あのアンドロイドのデザインは本当に秀逸なのです。


 とはいえ、一部――顔の部分は変更します。こちらは本来の人に酷似したものではなく、フェイスマスクにゴーグルをつけたようなデザインとします。


 明らかに人ではないとわかるデザインです。髪の部分も、髪を模したようなヘルメット的金属パーツとしましょう。ですが後ろ髪のあたりは髪の毛のように放熱ユニットをつけておきます。


 なにをしているのか?


 人型オートマトンの設計です。といっても、ほぼ外見のデザインが主になりますが。


 各種可動部と装甲を考えると、オートマトンのデザインはなかなかに奥が深いものになります。実際、現在3層でモンスターを迎撃しているオートマトンは、人に偽装するために鎧騎士としています。ですが鎧というのはかなり動きを制限されるのですよ。


 ヨーロッパでも、銃が剣に変わるようになるにつれて、鎧が陳腐化。もはや儀礼の場でしか使われなくなったころの、デザイン重視の軽量化された鎧であればともかく、実用性重視の鎧を着こんだ騎士はカタツムリと揶揄されていましたからね。


 よし。設計完了。では、これを作るとしたら、コストはどの程度掛かるのでしょう?


 ……おや、思ったよりも安く済みそうですね。ふむ。なんでもかんでも魔法的ギミックで済ませるのが良いわけではないようですね。


 魔力によってミスリルやオリハルコンなどを用いた合金を、文字通り伸び縮みさせるよりも、シリンダーとかを用いた現代科学の機械的機構の方が安上りです。ついでにパワーも上です。


 これはもう、外殻を頑強でありながら柔軟性のある魔法金属合金で作り、中身はシリンダーやらワイヤーやらを用いた現代科学製の機械の塊としましょう。


 動力部分をちょっと工夫しなくてはなりませんが、そこは頑張ってどうにかしましょう。


 出来上がったデザインを見て、ひとりほくそ笑みます。


 見るものによっては、各種SF作品のアンドロイドの寄せ集めのようにも見えますが、致し方ありません。なにせ参考にしているのがそれなのですから、当然というものです。


 それにしても40年近く前のデザインを参考にしたわけですが、いまでも十分問題なく通用するデザインです。


 70年代にのものとなると、完全にリアリティが行方不明になりますが。主に関節部において。


 さて、私がなぜこうも真剣に人型オートマトン。いわゆる自動人形の設計に熱中しているのかというと、私をこの状況に陥れた連中に報復するためです。


 先日、ロッティさんよりウルバン伯爵なる貴族がどこの貴族であるのか教えていただきました。


 ここ、アデカーナ自治領を有するテラメリタ王国より東へ、国ひとつまたいだ先にあるアングーリア……あれ? アングーリヤでしたが? とにかくそんな名前の国の貴族と教えていただきました。


 そしてあのナターリオとかいう小僧は、第2王子の側近のひとりの魔法馬鹿(凡庸)であるのだそうです。


「凡庸なのに私を召喚などできたのですか……」

「パズルのような謎解きに関しては天才的とのことですよぅ。召喚魔法は破壊されつくされて、その魔法陣は断片がわずかに各地に残るだけなのですが、それらを?き集めて再現したみたいですねぇ」


 という会話をロッティさんとしましたよ。あの小僧、無駄な才能を発揮しやがって。


 ではなぜそうまでして召喚魔法を再現し実行したか? それについてもロッティさんは教えてくれました。……ご実家の情報網とのことですが、ロッティさん、国家よりも仕事が早いとか凄すぎませんか?


 と、なぜあの小僧が召喚を実行したか、ですね。


 なんでも餡栗屋では王太子レースが激化しており、第2王子は脱落しかけであるとか。そのため、起死回生の一手として神人の召喚に踏み切ったようです。


 神人というのは、天使教の方々がいう女神様のこと。えぇ、私と同じく日本人の方ですね。話に聞く感じから、どうやら私とほぼ同年代から召喚されているようです。


 召喚は時代を無視して行われていると考えていいんでしょうね。


 そしてウルバンの小倅のパズルの才は本物であるという証拠です。畜生め。


 ということで、かなり微妙なところですが、国家に対して報復することに決めました。


 動機が王大使レースですからね。王様がとっとと王大使を指名してしまえばよかったんですよ。よっぽどんの盆暗でないのなら、例え一番優秀でなくとも長男を後継に指名してしまえば波風立たなかったでしょうに。


 まったく、いい迷惑です。


 さて、報復すると決めた餡栗屋とかいいう国の産業は、ダンジョンです。


 えぇ、ダンジョンだけです。国内にある17のダンジョンから得られる物品、並びにそれらを求める冒険者たちによって、経済を支えている国家です。


 ダンジョンの管理、採掘品の買取販売を国家事業としているということです。


 これを聞き、渡者報復内容を決めました。


 全てのダンジョンを完全攻略し、その仕様を書き換えるのです。


 それこそ、冒険者絶対死ぬダンジョンに。ここでポイントなのは、“死ぬ”であって、“殺す”ではないということです。


 ということで、それを成すため、ダンジョン攻略用の自動人形を設計しているわけです。


 ゲームのボスのような、理不尽な戦闘能力を持たせれば、3体もあれば十分にダンジョンを攻略できるでしょう。


 生物ではありませんから、飲食も不要ですし、ダンジョン攻略にはもってこいだと思うのですよ!


 ちなみに、名前はアン、ドゥ、トロワとしまs。フランス語の1、2、3です。

 あ、そうだ。3体作るわけですから、顔の部部のデザインはそれぞれ違うものにしましょう。色違いというだけでは面白味がありませんからね。


 そうこうして集中すること暫し。首周りの痛みから机から身を起こしました。


 椅子の背もたれに体を預け、ぐっと伸びをします。折角体を新調したばかりだというのに、もうそこかこが凝って傷みます。


 えっと、いまは何時……うわぁ、もう21時じゃないですか。


 今日の作業は終わりにしましょう。食事――いえ、先にお風呂に入りましょうか。


 机から離れ、風呂場へと向かいます。歩きながらダンジョン管理デバイスと化したスマホで、お風呂の給湯を開始――あれ?


 スマホの画面を見ます。


 上部に表示される小さなアイコン。アンテナが一本立っています。


 ……は?


 そこから一歩下がります。アンテナが消失しました。二歩進みます。アンテナが立ち、すぐに消えました。


 一歩戻ります。間違いありません。


 思わずごくりと唾を飲み込みました。


 もしかして、繋がる? ヴァーミリオンさんは云っていました。まだ、私は日本と繋がっていると。


 であるならば、もしかしたら電波も繋がるかもしれません。


 掛けるなら家族。すぐ上の兄、歳三兄に掛けるのがいいでしょう。賢一兄と祐二兄は、この時間だとまだ仕事をしている可能性があります。祐二兄は確実ですね。父と道場にいるに違いありません。


 そして母は機械音痴であるため、固定電話絶対主義者です。いえ、固定電話に掛けてもいいんですが、母がでると大騒動になる未来しか見えませんからね。


 そもそもの話、電話が繋がること前提の心配事ですね。そんな心配をするくらいならとっとと電話をしましょう。


 歳三兄に電話を掛けます。忙しいとしても原稿を書いているところでしょうから、電話には出てくれるでしょう。


 電話帳から兄の名を選択し、電話を掛けます。


 よ、呼び出し音がなっています。え、本当に繋がる!? あ、繋がった……。


『……千世か?』

「歳三兄ちゃん?」


 ……。


「え、本当に繋がった……」

『千世か? 千世なんだな!? いまどこ――』

「兄ちゃん、動かないで。じっとして、できたら息もしないで」

『無茶云うな! 1分程度ならともかく、止め続けたら普通に死ぬわ!』

「正直こうして繋がったの奇蹟なの! いま絶対に大丈夫なようにするからそこでじっとしてて。っていうか、いま家のどこにいるの!?」

『洗面所のそば。電話のところだ』


 レトロ趣味のダイヤル式黒電話。それが実家の電話です。ダイヤル式ですが、ちゃんとデジタル方式に改造してあるため、問題なく使える代物となっています。


「とにかく、そこでじっとしてて」

「お、おう。なんだかわからんが、待ってる」


 私はここに放り込まれた当初のように、眼前にARのようにダンジョン制御のためのコンソールを出し、モンスターの召喚(実際には生成)をはじめます。


 召喚するのはフェアリー……いえ、ピクシーの方が小さいですね。こちらにしましょう。性格は悪戯好きとありますが、それではこまるので、良識を遵守する真面目な性格にしておきましょう。


 それと、転移魔法陣をふたつ。これはカーペット式のもの。カーペットでは暑いですね。シーツにしましょう。そして一番肝心なもの。こことの繋がりを確立するためのポート……でいいのでしょうか。それをつくりましょう。ピラミッド型のオルガナイト、なかに魔法陣が仕込まれたものにしましょうか。魔法陣は刻まなくてはなりませんし。あぁ、あと稼働用に魔力を吸収する機構も組み込んでおきましょう。


 さして難しいものでもありませんし。設計はこれでいいでしょうかね。それじゃ作製。ぽちっとな。


 出来上がりまで魔法陣シーツは3分、オルガナイトは8分ですが。素材も準備していませんでしたから、ちょっと時間が掛かりますね。まぁ、いいでしょう。


 これが出来上がれば、日本とのつながりは確固たるものにできるでしょう。


 この奇蹟的つながりがいつまでつづくか分かりませんからね。それに、あの小僧に私の首は持っていかれたのです。いつ召喚魔法を完結した状態にされるか、わかったものではありません。日本と繋がる、確固たる経路を築いておくに越したことはありません。


 よし。召喚完了。


 本来、ピクシーやフェアリーは全裸であるのが基本です。ですがさすがにそれは問題でしょう。女の子ですからね。……そういえば以前、全裸ヒゲ面親父フェアリーが登場するRPGのゲーム動画を見たことがありますね。さすがにインパクトがあり過ぎて覚えていますよ。青肌白目のヒゲ親父フェアリー。


 と、それはどうでもよろしい。とにかく裸は問題なので、服を着てもらいます。妖精らしいドレスの類ではなく、スウェットです。羽根がある関係上、背中は大きく開いていますが。


 これなら歳三兄のところに送り込んでも問題ないでしょう。言語設定もちゃんと日本語にしましたし、知識、情報も十分にインストールしていあります。


 よし。それでは送り込むとしましょう。彼女には、これから送るオルガナイトやらなんやらの設定などをしてもらわなくてはなりません。


 そうそう。彼女の命名はドゥで。アンはまだ作ってはいませんが、既に設計した自動人形のほうにつけることを決めましたから。


「ではドゥ、よろしくお願いしますよ」

「かしこまりました!」


 妖精はやたらきびきびした動作で敬礼しました。



……。



 いや、だから、なんでみんな敬礼をするんですか!?



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