第7章 : 神の領域
「シグマ。お前は昔から、自分の作ったコードの美しさに酔いしれる癖がある」
静まり返った館内に、蓮の落ち着いた声がスピーカー越しに響いた。
「な……『Zero』……! 戯言を言うな! 貴様は三年前のあの事件で消えたはずだ! 今の私が、昔のままなわけがないだろう!」
シグマの怒号が響く。画面の向こうで、彼が狂ったようにキーボードを連打する音が聞こえてくるようだった。
「来い、『Zero』! お前が命をかけて作った過去の遺物、プロトタイプ『Aegis』の完全改修版でお前を迎え撃ってやる! 今の私なら、お前を超えられる!」
シグマが繰り出したのは、自律型攻撃プログラムによる無数の同時多重サイバー攻撃だった。
画面を埋め尽くす赤い警告灯。普通のハッカーなら一瞬でPCごとフリーズし、脳が焼き切れるような情報量の暴風。
しかし、蓮の表情一つ変わらない。
「変わっていないな、シグマ」
蓮の指先が、まるでピアノの鍵盤を優しく叩くように動き出す。
その動きには一切の無駄がなく、流れるような美しさすら漂っていた。
「お前が誇るその防壁も、攻撃プログラムも……すべて俺が三前に捨てたアイデアの焼き直しだ」
「な……なに……!?」
次の瞬間、シグマの画面上に表示されていた無数の攻撃ラインが、一瞬で『緑色(安全)』へと塗り替えられていった。
攻撃しているはずのシグマのプログラムが、そのまま蓮の手によって逆利用され、ネメシスの本拠地サーバーを内側から崩壊させていく。
「バカな……! 私のプログラムを……乗っ取っただと!? 一瞬で!?」
「15分と言うのは、お前を倒す時間じゃない」
蓮はスマートフォンの画面を軽くタップし、操作を終えた。
「お前たちが逃げ出さないよう、警察のサイバー犯罪課とインターポールへ、お前たちの所在と証拠データを全送信するための時間だ」
『――警告。全システム制御権が喪失しました――』
シグマの部屋のモニターがすべて真っ黒になり、中央にポツンと白い文字で、**『CLEANED(清掃完了)』**とだけ表示された。
「残り時間、3分」
蓮はスマートフォンをポケットに仕舞うと、隣で呆然と立ち尽くす冴子に向き直り、静かに頭を下げた。
「お疲れ様でした、お嬢様。ビルのセキュリティは完全に復旧しました」
第7章をお読みいただきありがとうございました!
ついに15分以内で敵を完全制圧した“Zero”。
物語はいよいよ結末、そして二人の関係性の変化へと向かっていきます!
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