表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/23

第9話 消えゆく命の信頼

現在の生存者 残り8人

涼・怜華・霧崎・男

?・?・?・?


死亡者

吉沢・笹原


 暗い教室の空気が、さらに重く淀んだ。


 霧崎の呼吸が、急に乱れ始めた。

 背中に受けた強烈な一撃の傷口からどくどくと血が流れ続け

 床に暗い染みを作っている。


 顔は紙のように白くなり、唇が紫色に変わりつつあった。

 彼は床にうつ伏せのまま、指先を小さく動かそうとしたが

 もう力が入らない。


霧崎「北條……さ…ごめ……俺、もう……。」


 声は掠れ、途切れ途切れ。

 最後に、怜華の名前を呼んだ直後——


 霧崎の体から、すべての力が抜けた。

 頭がガクンと床に落ち、目が虚ろに開いたまま動かなくなる。


 息は、浅く、間隔が長くなっていった。

 多量の出血で、限界だった。


 怜華は、その姿を見て息を詰めた。

 両手で口を押さえ、目から大粒の涙が溢れ出す。


 声を出せない彼女は、ただ肩を震わせ、涼の袖を必死に掴んだ。


 ——霧崎くん……死んじゃう……私のせい……?


 心の中で叫びながら、涼の背中に体を寄せた。


 涼は、気絶した男を縛り終えた手を止め、霧崎に視線を落とした。


 彼は無言で霧崎の首筋に指を当て、脈を確認した。


 弱い。

 とても弱い。


 このままここにいても、助かる見込みはほぼない。


涼「……霧崎、限界だな。」


 低い声で、淡々と呟く。


 涼の目は、教室の出口——

 今は開いたままのドアに向いた。


 気絶した男がいつ目を覚ますかわからない。


 このまま3人でここに留まっていれば、確実に全滅する。

 怜華を守るためにも、移動するしかない。


 涼は立ち上がり、怜華の手をそっと握った。

 今度は、さっきより少し優しく、しかし確実に。


涼「怜華、行こう。ここにいても、霧崎は助からない。

  ヤツが起きる前に、別の場所へ移動する。

  ……俺の後ろにくっついて。絶対に離れないで。」


 怜華は、涼の顔を見て、涙で濡れた目で小さく頷いた。

 声は出ない。


 でも、家族以外の男性の手を握り返すことで

 必死に「わかった」と伝えた。


 彼女の指は、まだ震えていたが、離そうとはしなかった。

 涼は、怜華の手を離さず、教室の中を素早く見回した。


 モップの柄を武器代わりに持ち

 気絶した男の傍を通り過ぎる際

 念のためもう一度うなじを軽く確認した。


 まだ動かない。


 霧崎の方は、もう一度だけ視線を向けたが、何も言わなかった。

 言葉は無駄だとわかっていた。


涼「行くぞ。」


 短く告げ、涼は怜華を連れて、開いたドアから廊下へ踏み出した。

 怜華は涼の背中にぴったりと寄り添い

 足音をできる限り殺して歩く。


 廊下は暗く、埃っぽく、遠くで何かが軋む音が

 微かに聞こえるだけだった。


 1年3組の教室を後にした2人は、廃校の長い廊下に立っていた。

 後ろでは、霧崎が静かに息を弱め

 気絶した男が床に縛られたまま残されている。


 死亡者2名、霧崎が死んだら残りは7名か。

 涼は怜華の手を強く握ったまま、低い声で言った。


涼「次は、どこへ行くか…まずは、別の教室を探す。

  鍵のかかる部屋、または隠れやすい場所……

  怜華、何か覚えがあるか?」


 怜華は首を横に振り、ただ涼の手に自分の指を絡めるようにした。

 二人はまだ、廊下の真ん中に立ったまま——


 次の危険がいつどこから来るかわからない状態で動き始めた。

 廃校の夜は、2人の脱出を、さらに厳しく試そうとしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ