第10話 安全な場所へ
現在の生存者 残り8人
涼・怜華・霧崎・男
?・?・?・?
死亡者
吉沢・笹原
暗い廊下を、涼と怜華は足音を殺して移動していた。
怜華は涼の手を強く握り、ほとんど彼の背中にくっつくように歩いていた。
制服のスカートが埃で汚れ、長い黒髪が乱れている。
家族以外の男性と手を繋いで歩くなど
普段の彼女なら絶対にあり得ないことだったが
今は恐怖がそれを上回っていた。
その時——
カチッ。
天井のスピーカーが、再びノイズを立てて起動した。
不気味な、湿った声が、校舎全体にゆっくりと流れていく。
スピーカー「ふふふ……お知らせです。
霧崎 竜星くんが、ようやく死亡しました。
……なかなか頑張りましたね。
これで死んだのは3人。残り生存者7名です。
脱出まで、あと5人死ぬ必要がありますよ?
……まだまだこれからです。
頑張って殺し合いを続けてくださいね〜♪」
声は最後に、くすくすと笑って途切れた。
スピーカーが再び沈黙に戻る。
霧崎くん——同じクラスの
あの情けない悲鳴を上げていた霧崎竜星が、死んでしまった。
彼女の指が、涼の手を痛いほど強く握りしめる。
目からまた涙が溢れ、唇を強く噛んで声を殺した。
声が出せない分、ただ涼の手に体重を預けるように体を寄せる。
涼は足を止め、怜華の震えを感じながら小さく息を吐いた。
涼「…3人目か。霧崎は結局助からなかったな。」
彼の声は低く、感情がほとんど乗っていない。
しかし、怜華の手を握る力は、わずかに強くなった。
涼「怜華、泣いちゃダメだ。今は生き残ることを優先する。
…あの男がいつ起きるかわからねない、他の人も動いてる。
隠れる場所を探そう。」
怜華は涼の横顔を見て、涙を拭いながら小さく頷く。
2人は再び歩き出し、1階の廊下を慎重に進んでいく。
やがて、涼の視線が1つの教室のプレートに止まった。
【家庭科準備室】
ドアは少し開いていたが、中は暗く、静かだ。
窓もベニヤ板で塞がれ、外光はほとんど入らない。
中には古い調理台、大きな冷蔵庫、食器棚
布や裁縫道具が散乱している。
鍵はかかっていないが、中から鍵をかけることはできそうだ。
涼は怜華の手を引いたまま、ドアをゆっくり押し開けた。
中を素早く確認し、誰もいないことを確かめてから
ゆっくりと入っていく。
涼「家庭科準備室。一時的に隠れるには良さそう。
鍵がかかるか確認してみる。」
怜華は中に入るなり、埃っぽい部屋の隅に体を寄せ
膝を抱えて座り込んだ。
彼女はまだ震えが止まらず、両手で自分の腕を抱きしめている。
涼はドアを閉め、内側から鍵がかかることを確認した。
古い鍵だったが、なんとか回った。
カチリ。
鍵の音が響き、二人はようやく少しだけ息をついた。
部屋の中は薄暗く、わずかに残った非常灯のような
小さな明かりだけが、調理台と棚をぼんやり照らしている。
涼はドアの近くに立ち、耳を澄ませながら低く言った。
涼「ここなら、少し休める。外の足音が聞こえたらすぐ動く。
…怜華は少しでも寝ていい。俺が見張る。」
怜華は膝を抱えたまま、涼の顔をじっと見上げた。
声は出せない。
でも、目で「ありがとう」と、そして「怖い」と訴えていた。
彼女はそっと、涼の近くの床に体を寄せ
震えながら目を閉じようとしていた。
二人は家庭科準備室に隠れ始めた。
脱出まであと5人死ぬ必要があるという
残酷なカウントが頭の中に刻まれている。
廃校の夜は、まだ深く、静かに続いていた。
家庭科準備室の鍵のかかったドアの向こうで
次の誰かの悲鳴がいつ響くかわからないまま。




