第11話 新たな気配
現在の生存者 残り7人
涼・怜華・男
?・?・?・?
死亡者
吉沢・笹原・霧崎
暗い家庭科準備室の中で、涼は埃っぽい棚の奥を探っていた。
古い座布団が二つと、長い毛布が折りたたまれて落ちているのを見つける。
毛布は少しカビ臭かったが、少なくとも体を隠したり
寒さをしのいだりするには使えそうだ。
涼はそれを手に取り、怜華の方へ振り向く。
涼「怜華、これ——。」
その瞬間。
カツン……カツン……という軽い足音が、階段の方から聞こえてきた。
続いて、若い女性の声が2つ。
自分たちと同じくらいの年齢——おそらく高校1年生か2年生だろう。
女性A「なーんでフライパンが理科室にあったんだか。
あの男、頭おかしいんじゃないの?」
女性B「まあいいじゃん。家庭科室があったら使ってみよっか。
武器とか料理とか、探せばあるかもよ〜?」
声は明るく、まるで学校の探検でもしているような
危機感の欠片も感じられない軽いトーンだ。
2人は笑いながら、1階の廊下をこちらへ近づいてきている気配があった。
怜華の体が、ピンと凍りつく。
彼女は座ったまま、両手で自分の胸を強く押さえ、目を大きく見開く。
その声に、はっきりと聞き覚えがあった。
怜華は、震える声で——初めて、はっきりとした言葉を口にした。
怜華「…高崎 楓さんと、逢坂 芽依さん……。」
声は小さく、掠れていたが、確かに出ていた。
家族以外の男性である涼の前で
声が出たことに自分でも驚いた様子で、すぐに口を押さえた。
しかし、恐怖と動揺が勝り
彼女は涼の袖を掴みながら、早口で続けた。
怜華「二人とも……私のクラスメイト。
最近の校外学習で、同じ班だった人たち…
楓さんはいつも明るくて、班のまとめ役で…
芽依さんはちょっとお調子者で、よく笑ってる子……
どうして、ここに……。」
怜華の声は再び震え、途中で小さくなる。
彼女は座布団を握りしめ、毛布を自分の膝に抱き寄せながら、体を小さくした。
同じクラスの女子が2人、すぐ近くを歩いている。
しかも、フライパンや武器と料理を探しているような言葉を口にしている。
涼は毛布を怜華に渡そうとしていた手を止め、ドアの方へ耳を澄ませる。
低い声で、静かに言った。
涼「……クラスメイトか。声の感じからすると
まだルールを知ってるけど、本気で殺し合いを始めてる感じじゃない。
ただ、武器を探してるのは確かだ。
ここに来られたら少し面倒なことになるな…。」
2人の足音は、廊下を進みながら準備室の隣にある家庭科室の方向へ
近づいているようだ。
「家庭科室あったら使ってみよっか」という言葉が
準備室のドアのすぐ外で響いた気がした。
怜華は涼の横に体を寄せ、震える指で彼の腕を掴む。
怜華「どうしよう……。
私、声が出ちゃった……ごめんなさい……。
でも、あの2人…本当に殺す気があるのかわからないけど……。」
涼は怜華の手を軽く握り返し、ドアの鍵を確認した。
まだかかっている。
彼は毛布を怜華の肩にかけてやりながら、淡々と答えた。
涼「今は静かにしてる。ドアを開けられたら、その時に対処する。
怜華が知ってる子たちなら、話が通じる可能性もあるが、信用はできない。
あの放送のルールを知ってる以上、誰がいつ裏切るかわからないから。」
外の廊下では、2人の女子の声がまだ続いていた。
笑い声と、軽い足音が、家庭科準備室のドアのすぐ近くまで来ている。
家庭科準備室の中にいる2人は、息を殺したまま
ドアの向こうの気配に神経を集中させていた。
新たなクラスメイト2人が、すぐそこに迫っている。
廃校の夜は、怜華の知り合いを巻き込みながら、さらに複雑に絡み合っていった。




