第12話 再会
現在の生存者 残り7人
涼・怜華・男
芽依・楓・?・?
死亡者
吉沢・笹原・霧崎
隣の家庭科室のドアが開く音がした。
2人の会話が時々聞こえてくる。
芽依「まぁ、大きさとしてはそこそこじゃない?
6つテーブルがあるってことは
1つぐらいなにか入っててもおかしくないよね~。」
楓「それな~。」
すると楓が何かを見つけたらしい。
楓「あっ!鍵だぁ!
どれどれ…。準備室って書いてあるよ?」
暗い家庭科準備室の空気が、一瞬で張りつめてくる。
芽依「なら、準備室に入ってみようよ。
きっと何か使えるものあるかも!」
芽依の明るい声が、ドアのすぐ外で響いた。
続いて、楓の軽い笑い声も聞こえる。
楓「いいね〜。使えそうなものないかな~?」
カチッ……ガチャ。
怜華が事前に鍵をかけたはずの家庭科室側準備室の
ドアノブが、ゆっくりと回された。
鍵が外れる金属音が、部屋の中に小さく響いた。
涼は即座に怜華の肩を引き、自分の体でかばうように立ち上がる。
目線をドアに集中させ、右手にはさっき見つけたモップの柄を握りしめている。
怜華は涼の背中にぴったりと体を寄せ、両手で彼の制服の裾を強く掴んだ。
心臓の音が、耳の中でうるさいほど鳴っている。
ドアが、ゆっくりと開いた。
薄暗い非常灯の光の中に、まず逢坂芽依の顔が現れた。
ショートカットの活発そうな女子生徒。
聖条院の制服を少し乱したまま、片手にフライパンを握っている。
芽依は中を見て一瞬、目を丸くする。
芽依「…え?」
次の瞬間、怜華の姿を認めた途端、芽依の顔がパッと明るくなった。
満面の笑みが広がり、まるで普通の学校の休み時間のように声を上げた。
芽依「ちょ…怜華じゃーん!」
芽依は涼の存在など完全に気にも留めず
嬉しそうに準備室の中に踏み込んできた。
後ろから楓も顔を覗かせ、驚きながらもすぐに笑顔になる。
楓「うそ、怜華もここにいたの?よかった〜!
1人で怖かったでしょ?」
2人は迷わず怜華の方へ近づいてきた。
その顔には危機感がほとんどなく
ただ「同級生を見つけた」という喜びだけが浮かんでいる。
芽依はフライパンを軽く振りながらこう言った。
芽依「ねえねえ、怜華も一緒に探そうよ!
なんかさ、さっき変な放送流れてたけど…
8人死んだら出られるんだって。
でもまだ3人しか死んでないんでしょ?
とりあえず武器集めて、他の危ないやつらから身を守ろうよ!」
怜華は涼の背後に隠れたまま、震える声で小さく言った。
怜華「芽依さん…楓さん……。」
声は出ているが、明らかに怯えきっている。
彼女は涼の体を盾にするように、さらに体を縮めた。
家族以外の男性と、同じクラスの女子2人が同時にいる状況に
頭が追いついていない。
涼は無言で怜華を庇ったまま、芽依と楓をじっと見つめていた。
口数は少ない彼は、ただ低く、静かに言った。
涼「……北條怜華は、俺と一緒にいる。
君たち、武器を探してるのはわかるが、
ここに勝手に入って来ないでほしい。」
芽依はようやく涼の存在に気づいたようで、首を傾げた。
しかし、笑顔は崩れない。
芽依「え、まさか怜華の彼氏!?
まあいいや。あなたも一緒にいようよ!
怜華!人数多い方が安心でしょ?」
楓も、ドアの近くでニコニコしながら頷いている。
楓「そうだよ。怜華、1人じゃ心細いでしょ?
ねえ、準備室のものをみんなで分けようよ!」
怜華は涼の背中で小さく震えながら、
言葉を詰まらせる。
彼女の指は、涼の制服を離そうとしない。
家庭科準備室の中に4人が揃った。
ドアは開いたまま、廊下の暗闇と繋がっている。
怜華のクラスメイト二人が、予想外の明るさで加わった今——
状況は、再び大きく動き始めようとしていた。
涼は怜華を自分の後ろに守ったまま、
2人の女子の笑顔を、静かに、しかし鋭く見つめ続けていた。




