第7話 人間の破壊衝動
現在の生存者 残り8人
涼・怜華・霧崎・男
?・?・?・?
死亡者
吉沢・笹原
暗い教室のドアが、突然、爆音を立てて蹴り開けられた。
ガァァンッ!
木製のドアが壁に激突し、埃と霧崎が舞い上がる。
霧崎「うぎゃぁあッ!!」
血に濡れた影が、飛び込むように室内に躍り出た。あの男だった。
制服は血と汗で黒く染まり、短い髪が乱れ、目が血走っている。
唇の端が裂け、歯を剥き出しにした狂気の笑みが浮かんでいた。
手に持ったのは、折れた椅子の脚——先端が尖った即席の凶器。
男「見つけたぞ……クソガキども!」
男は叫ぶなり、3人に向かって一直線に飛びかかってきた。
低く構えた体勢から、凶器を振り上げながら突進。
距離はわずか3メートル。
一瞬で詰められる。涼の動きは、反射的だった。
涼は怜華の手首を強く掴み、自分の体で庇うように引き寄せた。
同時に、横っ飛びに体を倒す。
怜華の体が、涼の胸に密着する形で床に転がった。
男の凶器が、空を切って床に突き刺さる——直前だった。
怜華「——!」
怜華の喉から、声にならない悲鳴が漏れた。
家族以外の男性に手を掴まれ、胸に抱き寄せられる。
普段なら失神するほどの恐怖なのに、今はそれどころではなかった。
心臓が爆発しそうなほど鳴り、視界が白く霞む。
でも、涼の体温と力だけが、彼女を現実に繋ぎ止めていた。
霧崎は、間一髪で体を横に跳ねさせた。
血まみれの体が床を転がり、倒れた机にぶつかって止まる。
霧崎「うわっ……!」
霧崎も回避は成功した。しかし、足がもう限界だった。
さっきまでの殴打で膝が腫れ上がり、左足首が明らかに曲がらない。
立ち上がろうとしても、ガクンと崩れ落ちる。
霧崎「はあ…かはッ…動けねェ……!」
男は凶器を引き抜き、すぐに体勢を立て直した。
目が3人を交互に捉え、息を荒げながら笑う。
男「へへっ……3人まとめて片付けられるじゃねえか。
テメエ…さっきはよくも逃げやがって……今度こそぶっ殺す。
残りの2人も、ついでだ。
こいつらを殺してあと3人死ねば、俺は出られる……!」
男は再び飛びかかろうと、足を踏み出した。
涼は怜華を抱えたまま、素早く体を起こした。
彼の目には、いつもの静けさが戻っていた。
ただ、握った怜華の手を、決して離さない。
涼「怜華、絶対離れるな。」
低い声で、短く告げる。
もう片方の手で、近くに転がっていた掃除用具のモップを掴み
男に向き直った。
簡易の棒として構える。
怜華は涼の胸に顔を埋めたまま、震えながら小さく頷いた。
声は出ない。
でも、涼の手の温かさが、唯一の支えだった。
霧崎は床に這いつくばったまま、必死に後ずさり、
怜華と涼の後ろに隠れるように体を寄せた。
1年3組の教室は、一瞬で戦場と化した。
3人はまだ、教室の奥に追い詰められたまま——
ドアは開いたまま、外の暗い廊下に繋がっている。
男は、出口を塞ぐ位置に立っていた。
男「来いよ……お前ら全員、死ね!」
男の次の突進が、始まろうとしていた。
廃校の夜は、ついに3人を飲み込もうとしていた。
死亡者2名、残り8名——
この教室で、さらに数が減るかもしれない。




