第6話 知らせ
現在の生存者 残り8人
涼・怜華・霧崎・男・?
?・?・?
死亡者
男性・女性
隣のクラスからの暴力の音が収まった。
あの男女と少年はどうなったのか分からない。
もしかしたら…と思ったその時──。
暗い教室に、再びスピーカーが息を吹き返した。
カチッ——。
あの不気味な、湿った声が、再び校舎全体に流れ始めた。
スピーカー「ふふっ……お知らせです。
1年2組にて、男女2名、笹原 蘭子と
吉沢 光輝が死亡しました。
……あの乱入してきた男に…ね。」
笹原蘭子と、吉沢光輝。
おそらく少年を嘲笑いながら殴っていた男女だろう。
スピーカー「笹原は背中を踏み潰されて、吉沢の方は……
まあ、すごい死に方でしたね。
これで死亡者2名。残り生存者8名。
あと6人死ねば、出口が開きますよ?
頑張ってくださいね〜♪」
声は、まるでゲームの進行状況を読み上げるように、楽しげに尾を引いた。
そして、唐突に切れた。
その瞬間——
ガラァァン!
1年3組のドアが、勢いよく開け放たれた。
血まみれの少年が、転がり込むように教室に飛び込んできた。
制服は聖条院のもの。
ブレザーの袖が裂け、顔は腫れ上がり
鼻血と涙でぐちゃぐちゃになっている。
隣の教室で殴られていた少年だった。
少年「はあ……はあ……はあっ……!」
彼は床に両手をつき、荒い息を吐きながら顔を上げた。
目が、まず怜華を捉えた。
同じクラスの——高嶺の花、北條怜華。
いつも遠くから見ていた、声をかけることすら憚られる存在。
今、彼女がここにいる。
しかも、知らない男子生徒の隣で、怯えた顔をして。
少年「ほ……北條……さん……?」
少年の声は掠れ、震えていた。
怜華の顔を見て、わずかに安堵の色が浮かんだが
すぐにまた恐怖が塗りつぶした。
彼は涼の存在に気づき、びくりと体を引いた。
——誰だ、この男。聖条院の制服じゃない。
でも、今はそんなことどうでもいい。
後ろの廊下から、あの狂った男の足音がまだ聞こえる気がして
少年は慌ててドアを後ろ手で閉め、背中を預けた。
少年「助けて……北條さん……!
アイツら…突然俺を殴り出して……そしたら別の奴が来て……
2人ともボコボコに……!俺、死ぬかと思った………。
ここ、隠してくれ……頼む……!」
怜華は、目を大きく見開いたまま、涼の腕にしがみついていた。
霧崎くん——確かに同じクラス。
いつも体育で情けない声を出していたのに
今は血と汗と恐怖で顔が別人のようだった。
声を出せない彼女は、ただ唇を震わせ、涼の袖を強く握りしめるだけ。
家族以外の男性が2人もいる。
しかも1人(霧崎)はクラスメイト。
頭が真っ白になり、息が上手くできなかった。涼は、無言で立ち上がった。
彼は少年と怜華の間に体を入れ、静かにドアの方へ一歩近づいた。
口数は少ないまま、しかしはっきりとした低い声で言った。
涼「……中谷涼。怜華と同じ高校1年だ。」
少年は涼の顔を見て、戸惑いながらも頷いた。
知らない相手だったが、今は味方かどうかなど選べる状況じゃない。
少年「う、うん…北條さんの知り合いか……?
俺は、霧崎 竜星……。とにかく、俺は…逃げてきた……。
あの男、まだ近くにいるかも……。」
教室の中に、血の匂いが広がり始めた。
霧崎の制服の袖から、ぽたぽたと血が床に落ちる音がする。
怜華は、涼の背中に隠れるように体を縮め、霧崎の顔をちらりと盗み見た。
霧崎も怜華の怯えた様子を見て、申し訳なさそうに目を伏せた。
3人は、まだ1年3組の教室の中にいた。
ドアは今、霧崎の背中で塞がれている。
外の廊下は、再び静かになったように感じる——。
しかし、それはただの静寂ではなく、次の誰かが動き出す前の
息を潜めた緊張だった。
涼は倒れた机をもう一つ引き寄せ、ドアの前に重ねた。
涼「声が出せない怜華の代わりに、俺が聞く。
霧崎、何があったか、詳しく話してくれ。
……でも、大きな声は出すな。カメラがどこにあるかわからない。」
怜華は、涼の影の中で小さく頷いた。
霧崎は床に座り込み、震える手で顔の血を拭いながら
掠れた声で話し始めた。
廃校の夜は、死亡者2名を数え、残り8名でさらに混沌を深めていた。
そして、1年3組に、新たな「生存者」が加わった。




