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第5話 救済か絶望か

現在の生存者

涼・怜華・霧崎・男性・女性

?・?・?・?・?


 暗い教室に、新たな足音が割り込んだ。


 ドタドタドタッ——。


 それは隣の教室へ向かう、荒々しい駆け足だった。


 一人の男の息遣いが、壁越しに荒く響く。


男A「てめえら邪魔だぁ!!」


 次の瞬間、状況は一変した。

 先ほどまで「やっちゃえやっちゃえ!!」と

 楽しげに叫んでいた女の声が、突然、悲鳴に変わった。


女「ぎゃっ!?何すんのよ、テメェ——うわああっ!」


 ドゴッ! バキッ! グシャッ!


 鈍く、重い殴打音が連続して炸裂した。

 今度は女の体が床に叩きつけられる音。


 続いて、霧崎の弱々しいうめき声も、再び混じった。


男B「う……ぐあっ……!やめ……誰だよ……!」


 新しい男の低い怒声が、壁を震わせた。


男A「うるせえ! お前ら3人とも、ぶっ殺してやる!

   全員皆殺しにしてやる……最初にテメエらから送ってやるよォ!」


 ボコボコに殴る音が、止まらない。

 机が倒れる音、壁に体がぶつかる音、血の混じった吐息。


 さっきまで加害者だった女が、今は床に這いつくばって泣き叫んでいる。

 霧崎もまた、逃げ場を失ったまま、ただうめき続けている。


 1年3組の教室の中。涼はドアの隙間に目を近づけたまま、完全に固まっていた。


 彼の表情は、いつもの無口な顔からさらに一層、硬くなった。


涼「……何だ、これ。」


 怜華も、涼の袖を握ったまま体を寄せ、息を殺していた。


 さっきまで「やっちゃえ」と興奮していた女の声が

 今は「助けて……誰か……」と泣き崩れている。


 霧崎の情けない悲鳴も、完全に別の恐怖の響きに変わっていた。

 新しい男——誰だかわからないが

 明らかに別の生存者が乱入し、状況を逆転させた。


 怜華の頭の中は、真っ白だった。


 ——どうして……?さっきまで女の人が霧崎くんを殴ってたのに……

 今度はその女の人が……そして霧崎くんも一緒に……


 理解できない。


 放送のルールは「8人死ねば出られる」だったはず。

 なのに、なぜ突然味方同士が……いや、最初から味方なんてなかったのか?


 彼女は涼の腕に顔を埋め、震える指で彼の制服を強く握りしめた。


 声が出ない分、ただ体全体で「わからない……怖い……」と訴えていた。

 涼はゆっくりと息を吐いた。


 口数は少ない彼にとって、こんな混乱は初めてだった。


涼「さっきの女は、あの男子を殺そうとしてた。

  今度は新しい男が、二人まとめてボコボコにしてる……

  ……同盟?復讐?それともただ狂ってるだけか…。」


 彼は怜華の肩を、もう片方の手で軽く押さえた。


涼「…状況が読めない。誰も信用できないってことだ。

  あの男、声からして同じ年くらいだけど……本気で殺す気だ。

  霧崎も女も、すぐに死ぬかもしれない。」


 隣の教室では、殴打音がまだ続いていた。


 新しい男の荒い息と、女の嗚咽

 霧崎の弱々しい「やめて……」という声が、重なり合う。


男A「はあ……はあ……てめえらで3人分だ。

   残り6人殺せば……俺と……誰か一人が出られる……」


 男の独り言のような呟きが、壁越しに聞こえてきた。

 涼と怜華は、完全に言葉を失っていた。


 二人はまだ、1年3組の教室の床に座ったまま——

 怜華は涼の腕にしがみついたまま——動けずにいた。


 ドアの向こうで、10人の「ゲーム」は、予想もつかない方向に暴走し始めていた。

 最初に死ぬはずだった霧崎は、まだ生きている。


 でも、今度は彼と男女が一緒に、別の誰かに殺されようとしていた。


 廃校の夜は、ますます混沌と、血の匂いを濃くしていった。



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