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第21話 最後の1人

現在の生存者 残り7人

涼・怜華・男(左目負傷)

芽依・楓・?


死亡者

吉沢・笹原・霧崎・姫森


 暗い4階の廊下に、放送の残響がまだ漂っていた。


 怜華は涼の背中にぴったりと寄り添ったまま

 震える指で彼の制服の裾を握りしめている。


 涼は周囲の教室のドアを1つずつ確認しながら

 ゆっくりと歩を進めていたが、ふと足を止めた。


涼「…そういえば、まだ1人会ってないな。」


 低い声で、独り言のように呟く。

 怜華が小さく首を傾げると、涼は壁に背を預け

 薄暗い天井の明かりを見つめた。


涼「最初に放送で言ってた生存者10人。

  今、死亡者4人だから残り6人。

  俺、怜華、楓、芽依、左目を潰されたあのガタイのイイ男…。」


 涼は数えるごとに指を1つずつ伸ばしていく。


涼「あと1人、完全に姿を見ていない。

  ここまで誰とも接触せずに生き残ってるってことは

  相当潜伏が上手いか…。

  それとも、最初からどこかに隠れて、様子を伺ってるだけか。」


 涼の目が、少しだけ細くなる。


 口数の少ない彼にとって

 こんな風に誰かのことを「気にする」のは珍しいことだ。


 劣悪な環境で育ち、1人で生きてきた涼にとって

 他人は基本的に「信用できない存在」だった。


 でも、この最後の1人だけは、なんとなく引っかかっていた。


涼「男か女かもわからない。

  名前も顔も知らない。

  ただ、静かに息を潜めて、誰かが死ぬのを待ってる……。

  そんなタイプかもしれない。」


 怜華は涼の横顔をじっと見上げ、震える声で小さく言った。


怜華「…怖い……。その人…味方、かな……?」


 涼は怜華の手をそっと握り返し、首を横に振る。


涼「わからない。今まで出会った人たちはみんな、すぐに動き出した。

 霧崎は逃げて、男女は楽しんで殴って

 乱入男は殺しまくって、先輩は守ろうとして…。

 でも最後の1人は、ただ『生き残る』ことだけを考えてる気がする。

 ……それが1番厄介だ。」


 2人は再び歩き出した。


 4階の最上階は、廊下が長く、教室の数が少ない。

 1つの教室のドアが半開きになっていたので

 涼は先に中を覗き、誰もいないことを確認してから怜華を連れ込んだ。


 そこは、以前の1年3組とは違う、古い理科準備室のような部屋だった。

 机が積み重なり、ガラス瓶や実験器具が埃をかぶって並んでいる。


 窓は全て塞がれ、鍵は内側からかけられるタイプだ。


 涼はドアを閉め、鍵を回す。

 カチリ、という小さな音が、静かな部屋に響く。


涼「ここで少し休む。

  怜華、座布団代わりにこの毛布を使って。

  俺はドアの近くで見張る。」


 怜華は頷き、涼のすぐ隣に体を寄せて座る。

 彼女は膝を抱え、震えながらも涼の横顔を盗み見た。


 最後の1人の存在が、彼女の胸にも重くのしかかっていた。


 ──あの人は、今、どこで何をしているのだろう。


 味方か、敵か。


 それとも、ただ静かに「8人死ぬのを待っている」だけの

 影のような存在か。


 涼は壁に背を預け、目を閉じずに廊下の気配に耳を澄ませた。


 最後の1人は、まだ見つかっていない。

 でも、確実にこの廃校のどこかにいる。


 残り生存者6名。


 4階の理科準備室で、2人は再び息を潜めた。


 廃校の夜は、最後の1人の影を、静かに2人に近づけようとしていた。

 その人物がどんな顔をして、どんな考えを抱いているのか──


 今はまだ、誰にもわからないまま。



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