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第16話 対峙

現在の生存者 残り7人

涼・怜華・男

芽依・楓・姫森・?


死亡者

吉沢・笹原・霧崎


 家庭科準備室のドアが、激しい音を立てて開け放たれる。


 ドガァァンッ!


 男の肩がドアを突き破るようにして飛び込んできた瞬間、

 涼は迷わず動いた。


 彼は低く構えていたモップの柄を、鋭く突き出す。

 狙いは、男の左目。


 中学時代に習った護身術の基本——相手の視界を一瞬で奪う攻撃。


 ズブシュッ!


 モップの先端が、男の左目に深く刺さった。


男「ぐああああああっ!!」


 男が凄まじい悲鳴を上げ、両手で顔を押さえて後ろにのけぞった。


 血が噴き出し、左目が潰れたような激痛で体がくの字に折れる。

 その隙に、涼は即座に振り返る。


涼「今だ走れッ!!」


 怜華、芽依、楓の3人が、涼の合図と同時に準備室から飛び出した。


 怜華は真っ先に廊下へ出ると

 涼の背中を確認しながら全力で走り始めた。

 芽依と楓がその後ろに続き、3人は廊下の奥にある非常口の方向へ

 必死に駆け出した。


 足音が暗い廊下に響き渡る。

 怜華の長い髪が乱れ、息が荒い。


 声は出せないが、心の中で何度も叫んでいた。


 ──涼……!早く……!


 男はまだ左目を押さえ、床に膝をついて悶えている。


男「てめえ…。ブッ殺してやる……!!」


 男の怒りのうめき声が、背後から聞こえてくる。


 涼は三人が十分に距離を取ったのを確認すると

 モップを男に向かって投げつけ、すぐに踵を返し全力で走り出した。


 廊下を駆け抜ける。

 埃を巻き上げ、倒れた椅子や机を飛び越えながら非常口へ向かう。


 怜華は振り返りながら走っていた。

 涼の姿が見えた瞬間、彼女の目がわずかに安堵で潤んだ。


 芽依「早く!早く!」


 小声で叫び、楓が怜華の手を引いて走る。

 非常口のドアは、幸い鍵がかかっていない。


 芽依が最初にドアを押し開け、3人が転がるように外へ出た。


 続いて涼が飛び込み、最後にドアを勢いよく閉めた。


 バンッ!


 廃校の外——夜の冷たい空気が、4人の体を包んだ。

 しかし、そこはまだ校舎の裏手。


 フェンスに囲まれた校庭のような空間で

 完全な脱出には程遠かった。


 遠くに山のシルエットが見え

 月明かりだけが地面をぼんやり照らしている。


 4人は息を荒げながら、非常口のドアに背中を預けた。


 男の怒声と足音が、まだ校舎の中から聞こえてくる。


 怜華は涼の腕にすがりつき、震える声でようやく言葉を絞り出した。


怜華「涼、大丈夫……?目、刺したの…怖かった……?」


 彼女の瞳には、恐怖と同時に、涼を心配する色が強く浮かんでいた。

 家族以外の男性にここまで頼り、声まで出してしまった自分に

 戸惑いと安堵が混じっている。


 芽依と楓も、膝に手をついて荒い息を吐きながら、涼を見た。


芽依「す、すごい…本当に1人で(おとり)になって……。」


 涼は息を整え、左手の甲で額の汗を拭う。

 表情は相変わらず静かだったが、指先がわずかに震えていた。


涼「まだ終わってない。ここは校庭みたいな場所だ。

  完全に外に出られたわけじゃない。

  あの男、左目をやられたけど、死んではいない。

  ……次はどうする?」


 4人は、廃校の裏手で肩を寄せ合いながら

 次の行動を急いで考えなければならなかった。


 あの狂った男は、まだ生きていて、確実に怒りを燃やしている。

 夜風が冷たく、4人の制服を揺らした。


 脱出は、まだ始まったばかりだった。



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