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第15話 デンジャーゾーン

現在の生存者 残り7人

涼・怜華・男

芽依・楓・姫森・?


死亡者

吉沢・笹原・霧崎


 姫森先輩の逃走から数分が経った。

 男の気配もない。


 移動しようと思った矢先、階段を下りる音が聞こえた。


 その音は姫森先輩のような軽くも不安定な足取りではなく

 どっしりとした足取りだ。


 ヤツが来た────。


 ガラガラッと廊下側の家庭科室ドアが開けられる音が聞こえてくる。


 そして家庭科準備室の鍵がかかったドアのすぐ外で、足音が止まる。


 ガチャ……ガチャ……。


 ノブが回される音。

 続いて、ドアが激しく揺さぶられた。


男「開けろッ!中に誰かいるんだろ!?」


 あの男の声だ。

 荒く、怒りに満ち、息が上がっている。


 準備室のドアを、力任せに蹴り始める。


 ドゴンッ! ドゴォッ! ドバギィッ!!


 木のドアが軋み、鍵がガタガタと音を立てる。

 いつ壊れてもおかしくない。


 部屋の中の4人は息を殺していた。


 怜華は涼の背中にぴったりと体を押し付け、震えが止まらない。

 芽依と楓は壁際に寄り、互いに肩を抱き合って青ざめている。


 涼はモップの柄を強く握り、ドアを睨みつけたまま

 低く静かな声で言った。


涼「……いざとなったら、俺が(おとり)になる。

  3人はここから逃げろ。怜華は絶対に離れるな。

  芽依と楓も、怜華を守って一緒に走るんだ。」


 それを聞いた怜華が小さく首を横に振った。


怜華「いや……涼くん、行かないで……。」


 声が掠れている。

 涼は彼女の肩を軽く押さえ、振り返らずに続けた。


涼「中学の時、体育の先生に個別で護身術と拘束開放を習ってた。

  …親がろくでもなかった頃、俺を守るために教えてくれたんだ。

  逃げ方と、相手を一瞬止める方法くらいは知ってる。

  みんなより少しは長く持つ。」


 ドゴンッ! ドゴォンッ!


 ドアの揺れが激しくなり、男の怒声が響く。


男「開けねえとブチ殺すぞォ!隠れてんじゃねェぞォ!!」


 涼は怜華の手を一度強く握り、すぐに離した。

 彼はドアの横に体を寄せ、モップを構えながら冷静に指示を出す。


涼「鍵が外れたら、俺が飛び出して男を引きつける。

  その隙に、3人は反対方向へ全力で逃げて。

  階段じゃなく、廊下の奥の非常口の方を目指して。

  …怜華、声が出せなくてもいい。2人の後をちゃんとついてきて。」


 怜華の目から、涙がまた溢れてくる。

 彼女は震える指で涼の袖を掴み、必死に首を横に振ったが

 声はもう出なかった。


 恐怖で喉が完全に固まっている。

 芽依と楓も、顔を真っ青にして涼を見つめていた。


 楓が小声で震えながら言う。


楓「…本当に、1人で大丈夫なの…?

  先輩みたいにボコボコにされたら……。」


 涼は短く答えた。


涼「大丈夫じゃない。でも、他に方法が無いんだ。」


 ドアの鍵が、ガタンと大きく音を立てる。

 もう限界だ。


 男の肩でドアをぶつける音が部屋全体に響いている。


 涼は深く息を吸い、怜華の目をまっすぐ見た。


涼「怜華。

  生き残るんだ。絶対。」


 その言葉を最後に、彼はドアの横で身を低く構える。

 準備室の薄暗い明かりの下で、4人の緊張が頂点に達した。


 ドアが、今にも壊れようとしている。

 廃校の夜は、ついに家庭科準備室にまで牙を剥き

 中谷涼という静かな少年に


 初めて「自分を犠牲にする」覚悟を迫っていた。



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