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24.全力で他力本願

 T21に戻る道中、私は前を行くみんなの背中を見ながら一人ずっと悩んでいた。


 シロカさんにミヅキにマサキ。三人は寄ってたかって私に決断を迫ってきた。ぶっちゃけて言えば「カイとレイトとどっちにするか決めろ」ということ。


 しかし恋愛に疎い私にはどっちかに決めるとか無理だった。決めるとか以前に、好きなのかどうかすら分からないんじゃあね。


 二人とも素敵な人だとは思うし、友情とか信頼はある。それは確かだ。世界を救う愛は相変わらずちょいちょい発動してるし、最近は発動時間も長くなってきている。どうやら自覚のあるなしとは関係なく、私は彼らにときめいているようだ。……マサキが言うように二股かけてるっていうのかな、これは……。


 悩んでいても何も変わらなさそうだったので、覚悟を決めてステータスウィンドウを開けてみた。ずいぶん久しぶりだ。


 アイラ

 レベル 14(UP!)

 HP 119/119(UP!)

 力 5

 知恵 18(UP!)

 体力 14(UP!)

 素早さ 20(UP!)

 器用さ 15(UP!)

 運 12(UP!)


(スキル)

 世界を救う愛 Lv.3(UP!)

 鑑定 Lv.8(UP!)

 ハイディング Lv.2

 オフェンシブ・デコイ Lv.3(NEW!)


 この段階で二、三回突っ込みを入れたくなった。いつまでも上がる気のない力、そしていつの間にやらレベルアップしている「世界を救う愛」。なんだお前、レベル上がるのか。


 「回避強化」と「おとり」が消えているけど、たぶん「オフェンシブ・デコイ」がこれらの上位スキルなんだろうし、これはまあいい。

 私は一つ深呼吸してページをめくった。問題の三ページ目、そこには。


『PAGE 3』

(LOVE度)

 カイ 89/100(UP!)

 レイト 85/100(UP!)

 サクヤ 50/100(UP!)


「うひゃっ」


 驚いて変な声が出た。近くにいたサクヤとマサキがこちらを振り向く。二人に何でもない、と返しながらも冷や汗が止まらなかった。


 なんだこれ、ちょっと見ない間にずいぶん上がっちゃってるし。確か最後にLOVE度を確認したのはシロカさんに会った時だ。


 あれから何があったっけ……ロシェ博士の伝言見て、いっぺん死にかけて……ああ、普通に好感度上がりそうな大きめのイベント結構あったわ。なるほど。


 って納得してる場合か。そろそろLOVE度100が見えてきてるぞ。そうなると世界を救う愛発動しまくりの私が真っ先に兵器を完成させかねないぞ。


 世界を救う勇者の役はサクヤに押し付けたい。そんなこっ恥ずかしい肩書はいらん。そういえばやつのLOVE度はどうなってるんだ。


 いけないこととは思いつつ、こっそりとサクヤを『鑑定』する。プライバシーの問題もあるので、余計なところを見ないようにしてぱぱっとLOVE度の載っている三ページ目を開けた。このページが一番プライベートな気がするけど気にしない気にしない。


(LOVE度)

 ミヅキ 68/100(UP!)

 ヒマリ 87/100(UP!)

 アイラ 35/100(UP!)

 シロカ 15/100(UP!)


 わー。なんかかわいそうになってきた。何がってシロカさんの塩対応が。あれだけ毎日アピールしまくってるのにこれはひどい。

 そしてついでにのぞいてみたが、サクヤの「世界を救う愛」スキルはLv.1のままだった。


 まずいまずいこれはまずい。たぶんだけどサクヤより私の方が兵器の完成に近いところにいる。えーっと、じゃあシロカさんはどうなってる!?


 毒を食らわば皿までと、今度はこっそりシロカさんを鑑定した。


(LOVE度)

 マサキ 72/100(UP!)

 ヨウ 37/100(UP!)

 レン 43/100(UP!)

 サクヤ 87/100(UP!)


 うっわー。サクヤの片思いっぷりがかわいそすぎる。しかもしっかり他のメンバーもきっちり上がってるし。美少女おそるべし。しかし彼女も「世界を救う愛」スキルはLv.1。


 あ、駄目だ。ステータスチェックしたら余計に追い込まれた気がする。




 ……あれだな。ここから誰かに一発逆転決めてもらうしかないな。私を除くとたぶん一番可能性があるのはヒマリとサクヤのペアだ。サクヤのやつはシロカさんに片思い中だけど、あいつはあれでけっこうほだされやすそうだし、シチュエーションがそろえば何とかなるかもしれない。


 よし、可及的速やかに二人をくっつけよう。私の心の平穏のために。




 その日は、T21への通り道であるT12で行きと同じように一泊することになった。それぞれが自由に行動し、ある程度ばらけたところでそっとヒマリを呼び止めた。ヒマリは不思議そうな顔をしながらも素直についてくる。


 そうして二人きりになったところで、私は小声で切り出した。


「ねえヒマリちゃん、あなたってサクヤのことが好きだよね?」


「!!」


 ヒマリは無言のまま真っ赤になった。かわいい。サクヤめ、こんな可愛い子をスルーするとは見る目のないやつだ。


「私、あなたのこと応援してるの。それでね、私あいつとは古い知り合いだし、アドバイスくらいはできるかなって思うんだけど、どうかな」


「ぜひお願いします!」


 真っ赤のまま前のめりになるヒマリ。健気だ。サクヤめ以下略。


「えっとね、サクヤはちょっとにぶいところがあるし、戦闘中は前しか見えなくなってるんだよね。ヒマリはいつもサクヤより少し後ろにいるでしょ? それだとサクヤには気づいてもらえてないかもしれない。だからね、ちょっとだけ前に出るの」


「一歩前、ですね」


「そう。頑張っているところを印象づけるの。あと戦闘以外の時も、もうちょっとだけ積極的になるといいかも。サクヤに気づかれないようにそっと手助けするんじゃなくて、もっと堂々と分かりやすく世話を焼くといいかも」


「分かりやすく手助け、ですね」


「うん。できるだけサクヤの視界に入っていく感じかな」


 私がそう締めくくると、ヒマリは輝かんばかりの笑顔になって礼を言い、立ち去っていった。その背中を見送りながら私は心の中で叫んだ。


(なんで他人の恋愛には的確なアドバイスができるのさ私!)






 それからT21に帰り着くまで、ヒマリは私のアドバイス通り、いやそれ以上に積極的になっていた。もともと彼女の恋心は周り中にばれまくっていたけれど、もうそんな次元じゃない。私恋してますって宣言してるも同然だった。みんなちょっと驚いてるし、さすがのサクヤも彼女の好意に気づいたようだ。


 ただあいつは元の世界にいたころからモテ慣れている。ヒマリの好意を素直に受け取りつつも、彼女相手にときめくところまではいっていないようだった。ちっ、あと一歩といったところか。




 行動が変わったといえばシロカさんもそうだった。T8でのクイーン・デルタ戦に参加できなかった悔しさからか、「私も戦うわ」と言い始め、道中のポーンを相手に戦闘訓練を始めたのだ。


 彼女は本当ならカイに戦闘を教わりたかったのだろうが、カイは「俺は適任じゃない」と言って断ってしまった。どうもカイは彼女の感情に気づき始めた上で避けてるんじゃないかと最近思う。単に押されまくって引いているだけの可能性もあるけど。


 結局ヨウがシロカさんに戦い方を教えることになった。最初は当然のようにサクヤとマサキが立候補したのだが、「武器の種類が私のものとは違うわ」とシロカさんに断られていた。しかし彼女と同じハンドガン使いの私とヒマリは二人とも彼女の恋敵だ。


 そして残りのメンバーで話し合った結果、一番押しが弱いヨウにその役目が回ったのだった。「ヨウだって武器の種類が違うじゃん」「そうだよ、だったら俺達でもいいだろ」とマサキとサクヤが吠えていた。


 シロカさんも彼らの好意に気づきつつスルーしていると思う。彼女も元の世界では異常にモテまくってたし、恋愛対象外の相手をかわすのは得意なのだろう。


 つくづくうまくいってないな、この辺の三角関係。まあうまくいかないからこその三角関係なんだけど。




 そうやってどたばたしつつも、私たちはT21まで戻ってきた。ずいぶん長く留守にしていた気がする。みんな元気かな。


 そう考えていた自分が少しおかしかった。留守にして、ってまるでここが私の家みたいな言い方だな。もう戻れないとロシェ博士に指摘された時に割とあっさり受け入れられたこともそうだけど、もしかしたら私は元の世界への未練はあまりなかったのかもしれない。


 それはもちろん、ここで私を支えてくれた人たちがいるからだ。私は大切なその人たちと一緒に、我が家のような拠点の中へと向かっていった。



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