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15.打ち解けるにも時間がかかる

 サクヤの突然の提案にシロカさんはぽかんとしていた。そりゃ驚くわ、いきなり「俺と一緒に世界を救ってよ!」なんて言われた日には。


「え……でも私、戦えないし」


「戦うのは俺たちがやるよ。君だって『世界を救う愛』の持ち主なんだし、あの兵器を宿せると思うんだ。兵器を使える人間は多い方がいい」


「兵器なんて……怖いわ」


「大丈夫、君は俺が守るから! お願いだ、勇気を出して!」


 サクヤが熱くなってるし言い回しがなんかクサいし、恋って人を変えるのねえ。面白いからもうちょっと放っとこ。さて、どこまで暴走するかな。


「あの……本当に私、足手まといにしかならないし……」


「君はそれでいいんだ! 君はただ、愛をもって兵器を完成させる、それだけでいいんだ。俺だけじゃない、こいつもいるし、それに俺たちと一緒にいた四人もいる。みんな戦い慣れてるし、君一人くらい戦えなくたって支障はないさ」


「…………分かったわ」


 シロカさんが熟考の末うなずいた。おお、説得成功。サクヤ、見た目はかっこいいので真面目な物言いをするとそれなりに説得力があるんだよな。案外シロカさんともお似合いかもしれない。ううんしかしそうするとヒマリちゃんの恋心が……既に三角関係の兆しが見えているような。


「よし、だったらまずセンターに行って登録印を押してもらおう。その時に兵器ももらえるはずだよ。今日はもう遅いから、明日出発しよう」


「あの、だったら私の知り合いにも同行してもらってもいいかしら……外に出たいときはいつでも声をかけてくれ、って言われているの」


「あ、ああもちろんだ」


 サクヤの声が一瞬裏返った。たぶんその知り合いっていうのはシロカさんのLOVE度メンバーだろうし、サクヤからしたら恋敵だもんねえ。けどそこで心の狭いところ見せちゃったら、シロカさんが幻滅するかもだしねえ。


 あー、他人の恋愛事情って、はたから見てる分には結構面白いかも。






 私たちは部屋を出るとまずカイたちに合流した。それからシロカさんが言っていた三人を探す。うちの一人は技術班ということもあって、割とあっさりと見つかった。技術班って大概プレハブにいるしね。


 彼の名前はレン。大学生くらいに見えるほっそりとして温和な雰囲気の、眼鏡をかけた知的な男性だ。ちょっと癖があってふわふわとした黒髪がチャームポイントだと思う。


 残り二人はとんでもない方法で見つかった。シロカさんが技術班の人たちに「二人を探してるの」と言ったとたん、何人もの技術班の人が作業をほっぽり出して探しにいってしまったのだ。


 何だかこれと似た光景を元の世界でも見たことがあるような気がする。彼女はこっちでも、周囲の人間を自然と下僕にしてしまっているようだ。


 私がそんなことを考えていると、あっという間に男性が二人、彼らに捕まえられるようにして連れてこられた。


 彼らはマサキとヨウと名乗った。ハイライト入りの金髪でややチャラいし表情も軽めだけど、イケメンのせいでそれがよく似合ってしまっているのがマサキ。シロカさんに親しげに笑いかけている。対するシロカさんはいつも通りの無表情だ。


 そして悟ったような眼をして無抵抗で引きずられてきたのがヨウ、さらっさらのアッシュグレイの髪をした中性的な美形だ。また顔面偏差値の高い連れができてしまった。




 これで私たち三人とそのLOVE度メンバーが全員集結したわけだが、事情を説明するにはもう時間が遅くなっていた。スキルやらなんやらを省いて説明するにしても、一から話さないといけないので時間がかかる。


 だから今日はいったん解散し、また明日改めて全員で集まることにした。いつものように空き部屋を二つ借り、そこに泊まる。なぜかシロカさんも私たちの部屋にやってきた。


「あれ、シロカさんどうしたの?」


「私もこれからあなたたちと一緒に旅をすることになるんでしょう? だったら、少しでもお互いのことを知っていきたいって、そう思ったの」


 そこからミヅキとヒマリも加えてのガールズトークになった。昼間、サクヤが明らかにシロカさんのことを気にしているのを見ていたヒマリは、若干不機嫌ではあったけど。


 そして何故か、シロカさんは私たちのことをやたらと聞きたがってくる。この人、こういうキャラだったっけ。


 ぽつぽつと話しているうちに、最初は警戒気味だったヒマリも徐々に打ち解けてそれなりに盛り上がった。まあ何となく全員遠慮がちではあったけど。


 仕方ないよね、ここにいるのは自称陰キャの私、かっこよくて少しクールなお姉さま系のミヅキ、引っ込み思案のヒマリ、物憂げな美少女シロカさんの組み合わせだ。このメンバーだと盛り上げ役がいないのだ。


 そもそも盛り上げ役って、だいたいサクヤの仕事だしなあ。あと、たぶんマサキもそっち寄りだ。ちゃんと話したことがないから、あくまで勘だけど。


 それでもシロカさんはそのまま私たちと一緒の部屋に泊まることにしたらしい。まあ、お互いこれから慣れていけばいいか。






 次の日、私たちは全員で空き部屋に集まり、私とサクヤが状況を説明することになった。


 私たち三人がこことは違う世界から来たということ、私とサクヤはパルフェット博士の兵器を宿しているということ、おそらくシロカさんも同じように兵器を宿せるだろうということ。


 そして、未完成の兵器を完成させるためには、おそらくこの場にいる者の協力が必要だということ。サクヤのやつがラブパワーでどうこうという頭の沸いたことを言おうとしていたが、即物理で黙らせた。この辺の正確なところをカイとレイトに知られたら、間違いなく恥ずかしさで死ぬ。


 それにしても、改めて言葉にしてみると訳が分からないにも程がある。ステータスウィンドウとスキルのおかげである程度の解説が見られる私ですらそう思うんだから、その辺が見られないカイたちからするとちんぷんかんぷんだろう。


 思った通り、みんな理解に苦しむという顔をして黙ってしまった。どうしよう、もっと具体的に説明するしかないのかな。LOVE度とかあの辺の……やっぱり黙っていたい。


 ところが、ありがたいことに沈黙を破るようにしてすぐにミヅキが口を開いた。困ったように小さく笑い、肩をすくめている。


「サクヤが訳の分からないことを言って突っ走るのは、別に今に始まったことじゃないから。こうなったらどこまでも付き合うわよ」


「わ、私も! 私もサクヤさんにずっとついていきますから!」


 ミヅキに遅れをとってたまるかとばかりにヒマリが声を上げた。カイとレイトが苦笑しながら顔を見合わせている。


「僕たちの力が必要なら、喜んで貸すよ」


「そうだな。兵器の完成に俺たちの協力が必要な理由が分からないが……君の様子を見る限り、嘘ではないんだろう。ならば俺も君に助力する」


 どうやら四人はもう腹をくくっているらしく、訳が分からないなりに私たちの力になってくれるようだった。これもこれまでに築いてきた絆のたまものだろう。自分で言っててちょい恥ずかしいけど。


 一方、話についていけない顔をしているのがマサキとヨウだった。レンは興味深そうに目を輝かせている。どうやら彼は技術班ということもあって、兵器自体に興味があるらしい。


「うーん、突拍子もない話でさ、ちょっと俺はまだついていけてないかも。なあヨウ?」


「僕には何とも言えない。口から出まかせだとは思えないけど、だからと言ってにわかには信じがたいし。レンはどうなんだ?」


「確かに信じられないけど、同時にとても興味深いよ。私はそのパルフェット博士の伝言を見てみたい」


 三者三様の反応を見せている。そんな彼らにシロカさんが言った。


「私、サクヤ君とアイラさんの二人と一緒に行ってみたいの。……私は戦えないけど、兵器が手に入ればみんなの役に立てるから。……その、よければあなたたちも力を貸してくれないかしら」


 そう話すシロカさんはいつも以上に儚げで、守ってあげないと壊れてしまいそうにすら見えた。あんな雰囲気をあっさり出せるなんて、さすがは美少女といったところか。私にはとても真似できない。ただ、すごいとは思うけどうらやましいとは思わなかったりする。


 そしてシロカさんのお願いは効果抜群で、マサキはやや鼻の下を伸ばしながらオーバーアクション気味にうなずき、ヨウは長いまつ毛の目をやや伏せて考えた後、静かにうなずいた。レンは最初から乗り気だったので、満面の笑みで同意している。


 一方で、そんな三人を見たサクヤがこっそりと歯ぎしりをしているし、そしてそのサクヤを見たヒマリが泣きそうな顔をしている。あ、既にもう色々とややこしいことになってきてるな。まあ私には関係ないけど。




 こうして無事に話もまとまったので、私たちは準備を整えてここから近いセンターに向かうことにした。まずはシロカさんが兵器を宿せるかどうか確認しないといけない。


 ちなみに私とサクヤは同じセンターで兵器を受け取っていたけれど、これから向かうセンターはまた別のセンターだ。


 といっても、ここまで旅してきた私たち六人は元々フル武装ということもあって、もう一度外に出るのに特段の準備も必要なかった。私たちは先にT8のバリケードの出入口に向かい、その近くでシロカさんたちが準備を済ませてくるのを待つことにした。




 しばらくして四人が姿を現す。シロカさんは私と似た迷彩服とスカート、厚手のタイツといったいでたちで、防具の類は一切身に着けていない。武器も、腰に下げた小さなハンドガンだけ。


 同じく戦闘慣れしていないらしいレンは技術班のつなぎの上から白衣を重ね着して、さらに小ぶりのマシンガンを背負っていた。


 一方のマサキはあちこちにサポーターのような防具をつけて小ぶりのライフルをかついだ重装備、逆にヨウはかなり刃渡りの長いナイフ、というかもう刀としか言いようのないものを腰から下げていた。どうやらこの二人は戦い慣れているようだ。


 こうして総勢十名になった私たちは、最寄りのセンター目指して出発したのだった。それにしても人数増えたなあ。ちょっと落ち着かないよ。



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