アリエスの想い
胸がこそばゆくて目が覚めた。
下を見るとご主人さまが私の胸に顔を埋めて気持ち良さそうに寝ている。
私はギューっと抱きしめた。
ご主人さま、好きです。大好きです。
私はアリエス、銀狼族の女、冒険者アキラさまの奴隷、アキラさまの女。
最近は、ステラさんの胸に顔を埋めていることが多いご主人さま。
大きさだけなら、シルフィだと思うけど、何故かご主人さまはステラさんのが一番のお気に入りのよう。
・・・私のはどう思っているのかな?
ご主人さまに可愛がられて最近すこし大きくなった気がする。このまま成長すればステラさんくらいにはなれそう。そうしたら、もっと私の胸、ご主人さまは可愛がってくれるだろうか?
今日の添い寝当番は私、このままご主人様を抱いていられる・・・はぁ、しあわせ・・・
私は再び眼を閉じた。
私はダンジョンでオークに追いかけられていた。逃げる先々にオークが現れ、もう何匹に追いかけられているのか訳がわからない。
でもあと少しで出口、逃げ切れる・・・
ガッ、
油断して気が緩んだのだろう、人一人が通るのがやっとの狭い通路で足がもつれて転倒してしまった。
「ブヒィイイ!」
ガブ!
追いついてきたオークが私の右腕に食いついて来た。
「ああああああ!」
ブチ!
オークはそのまま右腕を食いちぎった。
いたい、いたい、いたい。
ドガァ
顔面を鋭いツメでえぐられ、目が見えなくなる。
「ぎゃああああ!」
ああ、気が遠くなる・・・私はここで死ぬのかな・・・
・・・いやだ、こんなところでオークなんかにやられてたまるかぁ!
私は耳と鼻に集中する。
左手には・・・鉄の長剣が・・・ある。
いける!
私は鉄の長剣をオークの顔と思われるところに突き出した。
ドシュウ!!
「ブヒイイイイイ!」
オークは既に私をしとめたと思って油断していたのだろう。剣をまともに食らって絶命し、光の粒子となって消えていく。
ドドドドドド
私は起き上げって鉄の長剣を構える。
まだだ、オークはまだいる。
集中しろ、全部を倒すのはムリだ。幸いここは狭い通路、足を狙って転倒させ、やつら自身を壁にするんだ。耳と鼻に集中するんだ。
「はああああああ!!」
ドシュ、ドシュ!
「ブヒィイイ」「ピギィイイ」
私は後退しながら、オークの足を切り、行動不能のやつらで壁を作っていき、やがてそれで道を塞ぐことができた。
そして、私はなんとか出口にたどりつき、気を失った。
「・・・リエス、アリエス!」
はっ!
ここは?、オークは?
「大丈夫かアリエス?、うなされていたみたいだけど・・・」
「・・・ご主人さま?」
ガバ!
私はご主人さまに抱きついた。
「オークにやられた時の夢を見ました。こわかったです。もう死ぬかと思いました。」
「・・・そうか、大丈夫だ。オレがついててやるから・・・」
ご主人さまはそう言ってギュッと抱きしめてくれた。
「はい、ずっと、ずっと一緒にいてください。」
ご主人さまは、オークにやられて大怪我をし、治療費が払えずに奴隷となった私を買い取ってくれた。
高いハイポーションを3本も使って私の右腕と目を治してくれた。
毎晩、ご主人さまは私を抱いてくれ、女としての幸せもいただいた。
もう十分私は幸せだ。
でも一昨日・・・ステラさんとご主人様が結婚の話をしているのを聞いてしまった。
ご主人さまは自分を愛してくれる抱いた女全部と結婚する・・・と言っていた気がする。
私もご主人さまのお嫁さんにしてもらえるのだろうか?、
この世界では、愛し合う男女は女神モニカさまの仲介によって結婚契約をして夫婦となる。
この契約がないと、何故か子供がほとんどできないのだ。ごくたまに奇跡的にできることもあるが、それはあくまでも同族間でのこと。
異種族間で、結婚契約なしに子供ができた話は聞いたことがない。
私がご主人様の子供を生むためには、結婚契約は必要不可欠なのだ。
いまのままで十分幸せ・・・でも、やっぱりご主人さまとの赤ちゃん・・・欲しいなぁ。
「アリエス、散歩に行こう。」
昼食の後、ご主人さまが誘ってくれた。
「はい!」
十分お金は稼げたそうで、ステラさんの護衛で王都に行くまでの空き時間はのんびりするそうだ。
ご主人さまとデート、楽しみだ。
イネルバの街のメインストリートをご主人さまと一緒に歩く。
思いきってご主人さまの左腕に抱きついてみた。
あ、ちょっと動揺してる?、ふふ、楽しいな。
露店でミノタウロスロースの串焼きが売られていた。あれは、ご主人さまが冒険者ギルドに卸した材料で作られているかもしれませんね。
・・・美味しそう。
私が欲しそうにそれを見ていると、ご主人さまが買ってくださった。
2人で食べながら歩く。さすがミノタウロスロース、美味しいです!、
「あ、アリエス、頬っぺたにソースついてるぞ。」
ペロ、
ご主人さまが私の頬っぺのソースを舐めとってくれました・・・うぅ、恥ずかしい・・・でも幸せです。
南公園の噴水前のベンチに私とご主人さまはいた。
柔らかな日差しが降り注ぎ、とても気持ちいい。
「ご主人さま、どうぞ。」
私は自分の膝をパンパンと叩く。
今日の私はショートパンツにニーソックス。ご主人がこの僅かな太ももの素肌が大好きだってことは分かっている。
「あ・・・ああ、じゃあ、遠慮なく。」
ふふ、鼻の下をのばして、ご主人さまが頭をのせてくる。
そのまま、グリグリと私の太ももに頬ずりをしている。ご主人さま幸せそう。その顔を見ると私も幸せになれます。
夕日がイネルバの街を赤く染めていた。
私たちは、イネルバの街の南側にある小高い丘の上にいた。
ここはスライムダンジョンの出口になっているので、ご主人さまのスキルを使えばすぐ来ることができるのだ。
「やはりここからの景色は綺麗ですね。」
「ああ、そうだな。」
ご主人様は私の正面にまわり、片膝をついた。
「アリエス、これを受け取ってくれないか?」
ご主人様は、ポケットから、緑色の魔石がついたペンダントを取り出した。
「それは?」
「婚姻魔石だ。今日、アリエスとデートしながら、オレの魔力をそそいでたんだ。さっき、やっと緑になった。」
ご主人さまはそれを私の首にかけてくれました。
「アリエス、オレと結婚してくれ、オレの子を産んでくれ。」
目に涙が溢れてきた。そして私はご主人さまに抱きついた。
「・・・・はい、はい、はい。私、ご主人さまのお嫁さんになります。ご主人さまの赤ちゃん、いっぱい、いっぱい生みます。」
「ああ、いまよりもっと幸せになろうな。」




