ステラとモニカ
冒険者ギルドに入ると大勢の人がいた。
以前はこの昼前の時間だと、閑古鳥が鳴いていたのだが、今ではこの時間でも人がいなくなることはない。
オークダンジョンの奥にミノタウロスダンジョンが発見、開放されたことで、ガンツたちをはじめとする。この街で育ち、旅立っていった白金ランクの冒険者たちが帰ってきたのだ。
オレは忙しそうに冒険者の相手をするデイジーとメアリーさんに軽く手を振って、職員専用スペースに入った。
奥の廊下を進み、ギルドマスター執務室のドアをノックする。
コンコンコン、
「どうぞぉ」
ドアを開いて中に入る。
「おつかれさま、ステラさん。素材の買取り、お願いできるかな?」
「おつかれさま、アキラさん。いいわよ、じゃあ、倉庫に行きましょう。」
倉庫に行って、次々に素材を出していく。
今回初めて買取りに出したドラゴンの肉を見てステラさんが歓声を上げた。
「これがドラゴンの肉ね。ドラゴンダンジョンが発見されて、各方面からこれの要請がひっきりなしに来てたのよ、ようやく手に入ってほっとしたわ。ありがとう、アキラさん。」
「いえいえ、喜んでもらえて、オレも嬉しいです。じゃあ、オレは先に執務室に戻って待ってますから、査定の方よろしくお願いしますね。」
「わかったわ。」
オレが執務室に戻るといつのまにかダージリンが淹れられたカップがテーブルにのっていた。ステラさん、いつのまに淹れたんだ?、
ダージリンを飲んでまったりしているとステラさんが戻って来た。
「お待たせ。今回、ミノタウロス魔石小が10、中が3、大が1、トロール魔石小が12、中が3、大が1、アースドラゴン魔石が12、ゴールドドラゴン魔石が1、ミノタウロスの斧が3、長剣が1、トロールの短剣が3、剣が1、トロールローストが12、ドラゴンの肉が12、ミノタウロスレバーが2、ヒレ肉が1、肩肉が2、バラ肉が3、モモ肉が2、黄金の宝箱が1、黄金の矢が1で白金貨35枚、金貨119枚、銀貨4枚ね。」
「・・・確かに、しかし、前も思ったけど、これだけの大金、よく金庫に入ってるね。」
「ふふん。それはアキラさんのような大物冒険者がいつ来てもいいように、あたしがキッチリ管理してますからね。」
「さすがやり手のギルドマスターだ。」
「えへん、もっと褒めて褒めて、」
ステラさんが長椅子ソファに座ったオレの隣に滑り込んできたので、頭を撫ででやる。
「えらい、えらい。」
「えへへぇ。」
気持ちよさそうに目を細めるステラさん。可愛いなぁ。
「それで、アキラさん。モニカ教の教会には行ってきたの?、」
「うん、行ってきた。」
「じゃあ、婚姻魔石、もらってきたのね・・・ちょっとだけ見せて?」
「うん。」
オレはアイテムウィンドウから婚姻魔石を出して、ステラさんに見せた。
「へぇ、これが婚姻魔石なんだ。男性が魔力を入れる前のまっさらの状態のは初めて見たわ。ん?・・・1・2・3・・・・9?、」
あ、しまった。全部出しちゃった。
ステラさんの額に青筋が浮かんだ・・・怖い。
「アキラさん。・・・ちょっとそこに座りなさい。」
ステラさんは、床を示す。
「はい。」
オレはその床に正座をする。
「この婚姻魔石を渡す予定の女の子の名前を言ってみて。」
「ステラさん、アリエス、シルフィ、トレイシー、ゴールド、ブルー、アイ、レイ、・・・」
「・・・と?」
「・・・モニカさまです。」
「モニカさま?」
「女神モニカさまです。」
「はぁあああ?!」
「いや、あの・・・教会にいって婚姻契約数を確認しようと思ったら、白い空間にモニカさまに呼び出されて・・・そこで、その・・・モニカさまがあまりにも魅力的だったもので・・・」
「・・・まさか、モニカさまに手を出しちゃったの?」
「・・・はい。」
「・・・」
あ、ステラさんの額に青筋が増えていく・・・怖いよぉ、怖いよぉ。
「ごめんなさい!!」
オレは顔を床に擦り付けて土下座した。
「ふぅううううう、」
ステラさんは、大きくため息を吐いた。
「・・・よし、落ち着いた。もう大丈夫よ。」
「怒ってない?」
オレはおそるおそる顔を上げた。
「うん、怒ってないから、ここに戻ってきなさい。」
ステラさんは、長椅子ソファの自分の隣をパンパンと叩いて示す。
座りなおしたオレの頭をステラさんは胸に抱いてくれた。ああ、キングオブオッパイ、気持ちいいよぉ。
「女神さまにまで手を出しちゃうなんて、本当にしょうがない人ねぇ。」
「ごめんなさい。」
「・・・ねぇ、あたしも女神さまに逢いたい。アキラさんと一緒に教会にいったら逢えるんじゃないかな?」
「どうだろ・・・行ってみる?」
「うん!」
夕方、ギルドの仕事を終えたステラさんと2人で再びモニカ教の教会に行った。
礼拝堂に入ると誰もいなかった。
2人で女神像の前まで行って両手を合わせて祈った。すると光につつまれた。
オレはいきなり暖かくて柔らかいものに包まれた。
「アキラさん!、逢いたかったわぁ!」
オレは例の白い空間でモニカさまの胸に抱かれていた。ああ、気持ちいい。
「モニカさま。」
ステラさんが、真剣な表情でモニカさまに話しかけた。
「あら?、あなたは・・・」
モニカさまはオレを胸から離し、ステラさんの方を見た。ああ、もうちょっとぉ。
「アキラさんと結婚する予定のステラです。」
ババ!
ステラさんは土下座した。
「この度はアキラさんが、女神さまにとんだご無礼を働き、申しわけありませんでした。」
モニカさまは土下座をしているステラさんに歩み寄り、その肩に手を置く。
顔を上げたステラさんと目があう。
「いいのよ。実はアキラさんがわたしを襲うように誘導したんだし・・・あなたと同じように・・・ね?」
モニカさまがステラさんを見てニヤリと笑う。
ステラさんもニヤリと笑い返す。
ガシ!
ステラさんは立ち上がり、モニカさまとガッチリと握手をした。
「モニカさまとは気があいそうですね。」
「そうね、ステラちゃん、これからよろしくね?」
「はい、こちらこそよろしくおねがいします。」
パチン!
モニカさまが指を鳴らすと、なにもない空間に突然肘掛のついた大きめのイスが現れた。
「アキラさん。婚姻魔石を1つずつ両手にもってそこに座って、」
「はい。」
ガシ!
オレが婚姻魔石をもってそのイスに座ると肘掛の部分からロープが出てきてオレの両手が固定された。
「え?、なにこれ?、」
モニカさまがオレの右足の上に上ってきた。
「ステラちゃんは左足の上に乗って」
「はい、モニカさま。」
ステラさんがオレの左足の上に乗ってきた。
おぉお、なにこの状態?
「アキラさん、わたしもう待てないの、この場で婚姻魔石を緑にして欲しいのよ。わたしたちがスリスリしてあげるから、わたしたちを肌で感じながら魔力を魔石に流してちょうだい。そして魔石が緑になったら、拘束をといてあげる。ね、ステラちゃんもお願いね。」
「はい、モニカさま、わかりました。」
2人は同時にイスに拘束されたオレをスリスリしだした。
おぉおおお、気持ちいい。でも動けないから何もできん。こんな、ヘビの生殺し・・・くそぉ、こうなれば全力で魔石に魔力を流してやる。
オレは全力で、ステラさんとモニカさまを感じながら魔石に魔力を流した。
そして、30分後、MPが半減したところで両手の魔石は青から緑に変わった。
「やったわ、アキラさん。こんなに早く変わったの初めて見たわ。いま拘束をといてあげるわね。」
拘束を解かれたオレは野獣のように2人に襲いかかった。
「「ああん!」」
光とともにオレとステラさんは、教会の女神像の前に現れた。
ステラさんがオレの腕に自分のそれを巻きつけてきた。
「さ、帰りましょ、アキラさん。」
「はい。」
輝く笑顔のステラさんの胸には緑色の婚姻魔石のペンダントがあった。




