幼女ブースター
オレは人肌の柔らかさに包まれ、幸せな気持ちでまどろんでいた。
しかし、突然あたりが闇に包まれ、深海に沈んだ。
く、くるしい。息ができない。
オレは両手を必死に動かして浮上しようとした。
「ブハアアアッ」
「「ああん!」」
目が覚めると両側に立派なオッパイがあり、オレはそれを鷲づかみにしていた。
どうやら、オッパイで窒息しそうになっていたようだ。
「「おはようございます。アキラ様。」」
「おはよう、アイ、レイ。・・・添い寝してくれるのは嬉しいんだがオレの気道の確保はしてくれな?、」
「はあい。オッパイで顔をつつむとアキラさんが幸せそうな顔をするから、ちょっとやりすぎちゃいました・・・てへ。」
「あたしもアイと張り合ってる内にアキラさんの口と鼻を完全に塞いじゃってたみたいです。すみませんでした。」
ダイニングに行くと、アリエスとゴールドが駆け寄ってきた。
「おはようございます。ご主人様。」「おはようなのじゃ、ご主人様。」
「おはよう、アリエス、ゴールド。」
オレは2人に手を引かれてテーブルにつく。
「おはようございます。アキラさん。」「おはようごじゃいましゅ、ごしゅじんたま。」
テーブルの向かいでステラさんの膝の上に5歳児サイズのブルーがちょこんと乗っていた。
「おはようございます。ステラさん、ブルー。」
ブルーは時間がたつと5歳児サイズに戻ってしまうのかな?
今朝の朝食はフレンチトーストとハムエッグだった。
「今朝はアリエスが作ってくれたのかな?」
「はい!」「我も手伝ったのじゃ、」
「そか、ありがとな2人とも、」
ワシャワシャと2人の頭を撫でるとドラゴンの尻尾と狼の尻尾がブンブン振られた。
ステラさんの出勤を見送った後、オレたちは装備を整え、スライムダンジョンに向かった。
先日のキングミノタウロス戦ではヒヤリとした場面があった。
ダンジョンモンスターであるゴールドを戦わすことをこれまでためらっていたがそうも言っていられなくなった。
使える手札は活用しなければならない。
いや、実際に活用するかどうかはともかく、その力を最低でも把握しておくべきだろう。
オレはスライムダンジョンのサブメニューからモンスター設定を選んでクリックする。
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モンスターの出現場所、種類、数を選択してください。
出現場所:広間
マンモススライム:2
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よし、この条件で広間を開放。
スライムダンジョンの広間には約10メートルの2匹のマンモススライムが現れた。
オレはアイスボールのウィンドウを展開し、数発適当に撃った。
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!、ピキピキピキピキピキピキ、
瞬く間にマンモススライムは凍りついた。
よし、これで安全は確保できた。
「ゴールド、ドラゴンに変身だ。」
「わかったのじゃ!」
ゴールドは光につつまれ・・・なかった。
「・・・ん?、どうした?、ゴールド。」
「・・・だめじゃ、変身できんのじゃ。」
「なに?、・・・ブルーはどうだ?、変身してみろ。」
「はい・・・・」
「・・・だめか?」
「・・・はい。だめでしゅ。」
ちなみにブルーは5歳児の姿のままだ。朝は他の皆と同じに少ししか食べていないからか、姿は変わらなかった。
しかし、これはどうしたことだ。ダンジョンモンスターは他のダンジョンでは本来の姿になれないのか?
ダンジョンの外では普通に変身できていたから、変身してから入ればいいのか?、しかしそれだと大騒ぎになりそうな気もするし・・・
オレが悩んでいると、肩に重みを感じた。
ゴールドがオレの肩によじ登ってきたのだ。
「ちょっ、ゴールドなにやってるんだ?、」
「この姿でもできることはあるのじゃ。ご主人様、この状態で風魔法か光魔法を使ってみるのじゃ。」
風魔法か光魔法って、オレにとってはウィンドボールしかないな。
オレはウィンドボールのウィンドウを展開し、クリックしてマンモススライムに向けて撃った。
ドオーン!
10メートルくらいあるマンモススライムの1/3ほどが消し飛んだ。
「な?!」
確かマンモススライムは大分前だがアリエスのスラッシュ乱舞でも撃破するのに3回くらいはかかったはず。それと同等の威力がオレのウィンドボールででたのか?、
「どうじゃ?、我は接触している者の魔力を任意に高めることができるのじゃ!!」
「ああ、すごいな・・・」
続けてクリックする。
ドドオーン!!
続けて2発のウィンドボールでマンモススライムは綺麗に消し飛んだ。光の粒子になる暇もなかった。後にはスライムの魔石極大とエリクサーがあった。
オレは肩からゆっくりとゴールドを下ろすと、今度はブルーを肩車した。
「ごしゅじんたま、高いでしゅ!」
ブルーは肩車に大興奮だ。かわいいな・・・っと和んでいる場合じゃなかった。
「ブルー、さっきのゴールドと同じことはできるか?、」
「できましゅ。」
「ブルーの得意な属性はなんだ?」
「水と氷でしゅ。」
「そか、じゃあ、たのんだぞ。」
「りょうかいでしゅ!」
オレはアイスボールのウィンドウを展開し、クリックして残ったマンモススライムに向けて撃った。
ドーン!
いつもはソフトボールくらいの大きさのアイスボールが今回はバスケットボールくらいの大きさのものが放たれた。勿論、既にマンモススライムは凍りついているので変化はないが、これはこのアイスボール1発でも氷漬けにできそうだな。
「よし、じゃあ、シルフィがゴールドを肩に乗せて、ウィンドカッターを放ってみろ。」
シルフィがゴールドを肩に乗せた。
「よろしくね、ゴールドちゃん。」
「まかせるのじゃ!」
シルフィはマンモススライムに手を向ける。
「ウィンドカッター」
ズババーン!
巨大なスライムが風の刃で真っ二つになった。
マンモススライムは光の粒子となって消えていき。極大魔石とエリクサーを残した。
「これは・・・すごいな。」
「そうじゃろう、そうじゃろう。もっと褒めよ、我をたたえるのじゃ!」
ゴールドがシルフィの肩の上でふんぞり返っている。
「ゴールド、ブルー、すごい!、流石カイザーだ。」
「え?、ブルーもちゅごい?、」
「ああ、2人ともすごい!」
「えへへ、」
ブルーもオレの肩の上でふんぞりかえる。
「ご主人様、ちなみにブリザードやファイヤートルネードも風魔法の派生じゃからな。我を肩に乗せて使うと効果があるはずじゃぞ。」
「そうなんだ。ブリザードは氷と風、ファイヤートルネードは炎と風の複合魔法ってことか・・・あれ、じゃあ、ブルーとゴールドを両肩にのせて、ブリザードを使えば・・・」
「うむ、とんでもない威力となることであろう。」
ゴールドがさらにふんぞりかえる。落ちそうになるのを慌ててシルフィが支える。
「ゴールドちゃん。あんまりはしゃぐと落ちますよ。・・・あ、そうだ。今ならアレができるかも?、アリエスちゃん。ちょっとジッとしててね。」
「はい?」
シルフィーがアリエスに手を向ける。
「ウィンドシールド!」
アリエスを風の障壁が囲った。
「これは・・・私だけについたバリア?」
「ええ、これまで、ウィンドシールドは私自身にしか使えなかったんですが、ゴールドちゃんの力を借りれば、仲間にも使うことができるようです。」
「そうか、これは使えるな。これからは、戦闘の始まる前に全員にかけるようにしてくれ。たのんだぞ、シルフィー、ゴールド。」
「はい。」「わかったのじゃ。」
「ブルーもごしゅじんたまの肩の上でがんばるよ!」
「ああ、たのんだぞ、ブルー。」
幼女によって得られる補助魔力・・・幼女ブースターと呼ぼう。これは使える。




