アンブレラアタック
コブリンが光の粒子となって消えていくと、黄色い魔石だけが残っていた。
「魔石だけ?」
「はい、普通のコブリンは魔石しかドロップしませんね。」
スライムはザコでも必ず魔石とポーションかマジックポーションをドロップしてたのに。コブリンってうまみないなぁ。
魔石を回収して先に進む。また赤い光点が一つ先にあった。
「アリエス、今度はオレが魔法で倒してみる。」
「はい。」
三十メートルくらいあるが目視でも確認できる。やつはまだこっちに気付いていないようだ。先手必勝。
「ファイヤーボール!」
叫んでオレはミニマップの赤い光点をクリックする。
目の前に火の玉が現れて山なりの軌道でコブリンに飛んで行く。この軌道なら味方に当たることはなさそうだな。
ドカン!
火の玉はコブリンに命中し、爆発。すぐにコブリンは光となって消えていった。
「お見事です。ご主人様。」
「うむ。」
魔石を回収して先に進むと左右の分かれ道があった。右に進む。
ミニマップに敵の反応。今度は三つある。
「敵が三匹いるぞ。」
アリエスがロングソードを構える。
「ファイヤーボール!」
ドカン!
手前のコブリンが爆散した。残りのコブリンが気付いて走りよってくる。
「スラッシュ」
ザシュ
左の一匹がアリエスによって切り伏せられる。
「はぁ!」
右の残った一匹にオレが槍をつきいれた。
ドス
「ギャアア!」
腹の真ん中に命中して苦しそうにしているが致命傷にはいたっていないようで、棍棒でなぐりかかってきた。それをなんとか避けた。しかし、槍って懐に入られるとやりにくいな。
「はっ!」
ザシュ、
横からアリエスがとどめをさしてくれた。
「ありがとう、アリエス。」
「いえ。ご主人様を守るのは当然のことです。」
かっこいいよアリエス、惚れちゃいそう・・・まぁ、もう惚れてるんだけどね。
魔石を回収して先に進むとウィンドウが開いた。
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コブリンダンジョン(1)を掌握しました。
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やっと袋小路に到達したか。良かった。まぁ、普通は喜ぶとこじゃないけど。オレはうれしい。
「ひと休みしよう。」
そう言ってオレは1LDKの扉をダンジョンの壁にだす。
一時帰宅して、お茶をのんでまったりした。・・・よし、もうひと頑張りしよう。
コブリンダンジョンにもどって分かれ道まで戻ってきたが、敵にあうことはなかった。領域確保はここまでか、残念、アリエスにオレの無敵壁無双を見せたかったのに・・・
左の道に入り、普通の攻略を再開した。何回か敵に遭遇したが、コブリンは一匹から三匹までだった。もしかしたらここでは三匹以上の集団はいないのかもしれない。
それにしても・・・槍のスキルがとれるようにならない。修練がたりないのか、オレに才能がないのか・・・・
「アリエス、ちょっと待ってくれ。」
「はい。」
オレは立ち止まってアイテムウィンドウを開き。一番下の一行を凝視した。
[鋼の傘]
朝方、スライムダンジョンの広間の宝箱から出たものだ。
・・・まぁ、かっこつけてる場合じゃないか。
オレはそれをクリックして鋼の傘を取り出した。
手にもっていた槍を入れると[鉄の槍]と表示された。
手に持った傘をじっくり見る。一見普通の黒い傘だが、その先端は鋭く尖っており、丈夫そうだ。もち手の部分も鋼でできており、敵に引っ掛けて使うこともできそうだ。
スキル追加でアンブレラアタックをとった。
「またせたな行こう。」
コブリンが一匹現れた。
「アリエス。こいつはオレがやる。下がっていてくれ。」
「はい。」
コブリンが気付いて駆け寄ってくる。オレは傘を構えて待ち構える。
距離が三メートルほどになった時に叫んだ。
「アンブレラアタック!」
ドシュ!
自然と捻りの入った突きを繰り出していた。コークスクリュー回転を伴った突きがコブリンを鋭く突き刺し、簡単に突き抜けた。
コブリンは光の粒子となって消えていった。
「かっこいいです、ご主人様。」
「うむ、ありがとう。」
アリエスがキラキラした瞳で見て褒めてくれたが・・・・これ本当にかっこよかったか?




