↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒銀の魔眼剣士  作者: 神名一葉
第3章:強さを求めて
98/124

消えたアイナ

sideレイア


目を覚まして1時間弱、どうやら全員頭が冷えたらしい。今では俺を気絶させたことを多少悔いているようだ。多少、だが。

その事を少し脱線しつつもアレスさんたちに説明して時間が経ったわけだ。


「はっはははは!いやぁ、分かってはいましたが皆さん仲がよろしいですね!失礼だとは分かってるんですが、どうしても面白くて」


「い、いえいえ、正直、お恥ずかしい限りです。こんな内輪揉めを聞かせてしまって・・・」


仲良くはなってるが、どうにも敬語が抜けない俺だが、敬語使ってるのは彼らと俺と、ソフィだけだ。そう思うと俺たちがよそよそしいのか、アリシアたちが適当なのかわからなくなってくるな。


今日の移動はゴブリンの襲撃があっただけで終わった。今日は久々に野営だ。


「しっかしゴブリンの中にゴブリンナイトが居るなんて珍しかったな」


「ええ、ゴブリンの中に一体だけと言うのは珍しいですよね」


「・・・・偶然進化したのかも」


ベルゼとアリシアとアイナはどうでもいい事や前に話した話題を蒸し返して強引に話をつなげ続けている。理由は言うまでもなくエンヴィだ。

あれからずっと機嫌が悪く、殺気を振りまくとまではいかないが、それに近い気配を纏っていて近寄りがたい。原因になったベルゼと、身内であるアリシア、あと何となくアイナが雰囲気を持ち直そうとしてる。

アヴァールは動じないしソフィは怯えて俺の陰に隠れている。俺も時間が解決すると思っていたんだが、エンヴィの機嫌は相変わらずだ。

話に出てたゴブリン戦の時なんか1人で特攻してゴブリンナイトを殺した後その血を近くで戦ってたベルゼの顔にかけたりしてた。移動中に席が向かいになると睨みつけていた。話しかけても無反応だった。


既に殆ど全員が察して居る。今、エンヴィを刺激するのはまずい、と。


ベルゼも謝ったのだ。何が悪いかわからないまま兎に角謝った。だが、返ってきた言葉は酷かった。




『エ、エンヴィ、なんかわからんが、すまんかった』


『・・・・・』


『お前が何でそんなに機嫌悪くしてるのか知らないが、今後勝手にああいう所行ったりしないから、許してくれ』


『・・・・・』


『エンヴィ・・・?』


『その汚い口を今すぐ閉じろ。さもないとこの場で愚息を二度と使い物にならないよう消してやる・・・!』


『・・・・すんませんでした』




とまぁ、こんな感じだ。

ちなみに最後の台詞の時エンヴィは刀をベルゼの首筋に添えてた。最早行ってることとやってる事が滅茶苦茶だ。


「皆さん、何があったかは聞きませんが、食事はしっかり取らないと今後に支障をきたしますよ。

シチューとパンでお腹を満たして、それからゆっくりと考えてはどうでしょう」


それまで料理をしてたギニアさんとライオスさんが人数分の食事を持って仲裁してくれた。

流石に個人間の問題に(形式上)依頼主を巻き込む訳にもいかず全員が無言で食事を終わらせ、予定通り見張り組と仮眠組に別れた。

ちなみに俺とエンヴィとソフィは見張り組、アリシアとアヴァールとベルゼとアイナは仮眠組、アレスさんたちは護衛対象なので普通に熟睡組だ。


ソフィが索敵用の結界を展開し、周囲の生き物への警戒を始めてから、俺はエンヴィに話しかけた。


「・・・なぁエンヴィ、言いにくい事なら良いんだが、せめて何で怒ってるのか教えてくれないか?」


「・・・・・」


「流石に皆精神的に疲れてきてるし、ベルゼだって相当気に病んでるはずだ」


「・・・・・」


「話したくないなら良い、でもせめて、明日から少しくらいはベルゼや皆に歩み寄ってやってくれよ。これから強敵と戦うんだ。このままじゃ俺たちは死ぬ。死んだら、もう何も伝えられないんだからな」


「・・・・・」


「・・・・・」


エンヴィは何も反応してくれなかったが、話は聞いててくれたのだろう。

俺はそう勝手に解釈して、周囲の警戒のために意識を張り巡らせた。


そして少しずつ、眠りについていった










瞼越しに太陽の光を感じて、朝だということを理解する。

そしてまだ眠たい目を何とか開けようとしたところで、異変に気がついた。


「ーっ!!?」


おかしい。昨晩は最初に俺たちが見張りをしていた。エンヴィに話しかけもした。だが、そこから先の記憶がない。

覚えてないだけなわけがない。それならこの異様な不安感は消えるはずだ。


目を見開いて周囲を確認すると、確かにあったはずの物がいくつか消えている。

男女別で使ってた俺たちのテント、側で眠っているエンヴィと、結界を使った時に登った木の上で眠っているソフィ、そして俺、それ以外のあらゆる物が消えている。


つまり、アレスさん達のテントと馬車が消えている。


「起きろエンヴィ!ソフィ!」


「〜〜っ!?な、なんだレイア」


「ん、んぅ〜・・・・どうしたのですか?お兄さま」


2人ともまだ眠たげだが、目は覚ました。


「アレスさん達のテントと馬車が消えている!エンヴィはアヴァール達を、俺はベルゼを起こす。ソフィは索敵用の結界準備!急いで状況を確認する!」


俺の言葉に素早く反応したエンヴィは女性用テントの中に入って行った。

俺も急いでベルゼの居るテントに入ってベルゼを叩き起こす。


「起きろ!」


「グフォぉっ!!?な、なんだ!?」


「異常事態だ!すぐに外に出ろ!」


「わ、わかった!」


ベルゼを外に引きずり出して、テントの中を一通り確認するが、やはり何もなかった。

急いで外に出る。


「エンヴィ!そっちはどうだ!?」


「ダメだ!アイナが居ない!寝袋ごと消えている!」


「何だと!?」


アイナが居なくなった!?アレスさん達も居ない。態々女性用テントの中に入ってアイナだけを連れ去った訳はなんだ?そもそも何が連れ去った!?アレスさん達はテントも馬車も無い、逃げたのか?そもそもそれだけの異常事態になぜ俺たちが気がつけなかった。いや、そもそも・・・


「エンヴィ、ソフィ、昨夜の最後の記憶を教えてくれ」


「確かにソフィが結界を発動して、レイアの話を少し聞いて・・・・そこからの記憶がない」


「私もです。結界を発動して、木の上で警戒してましたが、それ以降の記憶がありません」


なら確定か?いや、まだベルゼ達の話を聞いてないな


「アリシア、アヴァール、ベルゼ、昨夜の最後の記憶は?」


「私はあれからすぐ寝たわ・・・・そう、すぐに眠れたのよ!」


「・・・・同じく」


「俺も同じだ。殆ど時間をかける事なく一瞬で寝ちまった。ってことは・・・」


「あぁ、睡眠薬を盛られたな。考えたくはないが、アレスさん達の手によって」


昨晩アレスさんたち以外の手によってそう行ったものを口にする機会はなかったし、魔法ならソフィの結界が反応する。移動中に何かあったなら気づかないわけがない。


「と言うことは、彼らがアイナさんを・・・?」


「まだわからない。だが、既に馬車が出て居る。盗賊に脅されてやったと言うことも・・・・可能性は低いがあり得る」


わかってる。この可能性はほぼゼロだ。それなら俺たちは1人残らず殺されるか連れ去られるかして居るはずだ。

それにアイナのステータスと経歴はかなり特殊だ。もし何らかの方法でアイナを識別できたなら、攫うことくらい出来ただろう。


「とにかく、アレスさん達を犯人と仮定して、急いで馬車の後を追うぞ!アリシアはは俺が背負って行く。ベルゼはアヴァールを背負ってくれ、エンヴィは1人で空から先行して状況確認を!俺たちも急いで後を追う!」


「「「「「了解!」」」」」


俺の指示が終わり、エンヴィが翼を出して空から周囲を探る。俺たちは馬車の後を見つけ、その方向に向かう。

俺は【部分龍化】を使って、ベルゼはアヴァールから支援魔法を受けて走る。

後を見る限り行き先は次の町。そこに彼らが止まるとは思えないが、とにかくそこまで行くしかない。


移動すること2時間、結局俺たちは何の痕跡も見つけられずに町に着いた。


「どう言うことだ!何で何も無い!?馬車の跡は間違いなくこっちに向かっていたはずだ!」


「お、落ち着いてレイア!まだ町の前よ。門番の人に聞いてみましょう。記録くらい取ってあるはずよ」


確かにまだ列の途中だ。アヴァールとエンヴィが列の前まで行ってるから何か見つけたら【念話】が入るだろう。でも、


「でも!アイナが!」


「落ち着いてレイア!」


ーパァンッ!!


アリシアに頬を叩かれる。

非力な身とは言え、アリシアの一撃に頭が冷えた。


「・・・・すまない。取り乱した。アヴァール達の報告を待とう。その間これまでの情報から推理してみよう」


「ええ、わかったわ」


最初に話し始めたのはソフィだった。


「私は眠る瞬間までは確かに結界を維持していました。少なくともそれまでは何もなかったはずです」


アヴァールの魔法は攻撃の方に特化しているため、実戦でならソフィの方が結界魔法は強力だ。それを抜けるのはほぼ不可能だ。


「あぁ、俺たちの状況を見るに薬でも盛られたんだろう。魔法ならアヴァールかソフィが気づく。問題はアイナを連れ去った理由だ」


彼らは少なからずアイナを崇めていた。彼らの宗教の思想からすればアイナを連れ去ることはしないはずだ。もっとも、彼らの話自体が嘘ならどうしようもないが。


「そうね、行っては何だけれど、誘拐するなら私やソフィの方が楽なはずよ。

確かにアイナよりは強いけど、王族と公爵令嬢だもの、狙う価値は十分にあったはずよ。

でも、アイナの裏事情を知っていれば話は別ね」


アリシアの言葉にハッとしたベルゼが続ける。


「確か、回復系の固有魔法に魔法適性が3つ、おまけに加護で【神の王の最愛】、【創造神の庇護】【魔法神の庇護】なんて持ってるんだろ?

アレスさんたちが犯人なら、宗教関連で連れ去られた可能性は高いよな」


・・・・いや


「まだある。アイナは雷魔の依り代だった。何故神の加護をあれだけ受けた存在が雷魔の依り代だったのかはさておき、雷魔の手下か何かがアレスさん達で、彼らが雷魔の為に連れ去った可能性もあるぞ」


そうなると、下手したら聖女に会う前に雷魔に遭遇するわけか。出来るならそれは避けたいな。


「雷魔絡みだとして、なんで移動させる必要があるのかしら?雷魔は霧になって動くのだから、合図でも決めておけば動けるんじゃない?」


「いや、雷魔は『ぼく』に怯えている。警戒しているなら直接手を出したりはしないだろう。やはり雷魔の線は薄いな」


そうなるとやっぱり宗教関連、だけどアイナの情報を得られるはずがない。

知ってるのは俺たち以外だとイリス様とエンドルフ様、父さんと母さん、エルスとエッジとクラリス、あとは『ぼく』と雷魔か


「そうなると雷魔しかあり得ないんだよなぁ・・・やっぱりアリシアが言った通り雷魔関係かも・・・・でもなんで態々こんな回りくどいことをする必要がある?今までは力づくだったはずだが、方針でも変えたのか?」


どちらにせよ、強力な何かがバックに控えてるのだろう。

と、そこまで話し合ったところでアヴァール達が帰って来た。


「確かにこの町に入ったようだが、記録では早朝に入って今朝の8時には出て言ったらしい」


「今は午前8:30前後、急げばまだ可能性はあるな。方角は?」


「ここから北西に行ったところだ。地図でいうとこの町の北西で聖都の南西、丁度中間だ」


「この町と聖都の中間から西・・・列から外れて移動を開始する。その辺りの村まで行ければ情報も得られるはずだ!」


そう言ってさっきまでと同じ方法で移動しようとするが・・・


「・・・・【強欲《アワリティア》】」


「うわっ!?」


一瞬で景色が変わった。


「・・・・ん、【強欲】、で、転移、した。さっき、は、急で、使え、なかっ、た」


俺たちの心強い魔導士様はここでも頼りになる存在だ。

エンヴィと俺の予想は当たっていたようで、村の中に一際目立つ馬車がいる。


「ーっ!アイナ!」


「まっ、待てレイア!まだアイナが居ると決まったわけでは・・・」


エンヴィが俺を止めるが、俺はそれを無視して馬車の方へ走って行く。踏み込んだ時点で大きな音を立ててしまったからか、馬車に乗ってる人が顔を見せた。

見えた顔は・・・


「ジェインさん!」


「ーっ!出発するぞ!」


俺を見たジェインさんが馬車を走らせ、村の自警団の制止を無視して出て行く。

流石にステータスが高くても馬車には追いつけない。再び【部分龍化】を使って追いかける。


「待て!アイナを、アイナを何処にやったぁぁぁぁ!!!」


「ーっ!?ア、アレスさん!例の物を使ってください!」


ジェインさんが何か言うと、いきなり大量の魔力が馬車から発生して加速した。

かなり加速しているが、魔力の消耗も激しそうだ。つまり、体力勝負だ。

馬車の魔力が尽きた時に見逃してなければ俺の勝ち、逃げ切られたらあっちの勝ちだ。


「『フレイムブーツ』!」


「クッ・・・荷物を捨てて軽量化しましょう!」


馬車からいくつも木箱が落ちて来て更に加速し、木箱が邪魔してくるがまだなんとか喰らいつけている。


それから10分くらいだろうか、遂に馬車の加速が止まり追い付いた。


「はーっ、はーっ、はーっ、追い付き、ましたよ!アイナを、返せ!」


「そう言うわけにはいきませんよ!」


アレスさん、スウェインさん、ライオスさんが武器を持って馬車から飛び出して来た。

ただし3人には明らかな変化があった。


「3人とも、何ですか、その服は」


3人は、今まで着てた白い神父服は黒い神父服に変わっていた。そして服の胸に無かったはずの紋章があった。

その紋章は2年前に大陸の殆どの国が知っている紋章。指名手配と言っても過言ではない組織。


「我々は邪神教団、そして私は司祭のアレス。貴方方には悪いですが、アイナ様は我々が預からせて頂きます!」


邪神教団、2年前の学園交流祭で情報の収集をしているにも関わらず情報が殆ど無い組織だ。

分かってるのは3人の司祭と1人の教主が居ること、その4人はいずれも強力な魔法使いであること、14年前から活動が激しくなったこと、邪神という神とは対極の何かを崇めていることだ。


「なんでアイナを連れ去ろうとする!?」


「それは言えん。言えんが、彼女は我々にとって重要な役割を担う者なのだ!返すわけにはいかない!」


アレスさんがそう言うと、持っていた杖を振り上げた。


「『ダークバレット・レイン』!」


アレスさんの魔法が発動し、【闇魔法】の弾丸の雨が降ってきた。

幸い俺の【部分龍化】は解けていない。加えて俺にはこのスキルがある。


「【救済者】!【神聖剣】!」


【神聖剣】が爪に付与され、爪でガードして魔法が消えて行く。流石に全て弾くのは無理だったが、今の俺は半龍な為ダメージはあまり無い。


アレスさんの魔法を防いだ直後、左右からスウェインさんとライオスさんが俺に向かってメイスを振り下ろす。


「ハァッ!」


「くらえ!」


「無駄だ!龍の鱗はその程度じゃやられない!」


俺はメイスを2本とも腕で防いだ後、2人を無視してアレスさんに向かって走る。


「『フレイムナックル』!」


【火魔法】の攻撃支援魔法を手に纏い、アレスさんに殴りかかる。


「無駄ですよレイアさん!貴方の情報は割れてるんです。この程度効きませんよ!」


アレスさんは手に持っていた杖を構えると、杖から青い刃が飛び出てきた。

アレスさんは杖を振るって俺の拳を弾いてくる。


「ーっ!なんですかそれは・・・氷?」


「ええ、氷です。杖は魔力の制御や増幅をする物です。ならこの程度できて当たり前でしょう!」


アレスさんは氷の杖をレイピアのように使って攻撃してくる。その攻撃速度はかなりのもので、合間合間に魔法を撃ってくるのもいやらしい。


「絶対、負けるわけにはいかねぇんだ!【龍圧】!」


物理的圧力を発生させるこのスキルは、このスキルと組み合わせると相性がいい事に気がついた。俺だって修行してきたんだからな。


アレスさんが一瞬動きを止めた隙に体勢を整えると、アレスさんが再び動き出そうと力を込めたところを狙って・・・


「【重圧眼】!」


「ぐぁ!?」


【重圧眼】を発動して、完全にバランスを崩させる。アレスさんは倒れはしなかったが膝をついた。

俺はアレスさん目掛けて一撃入れようとしたところでスウェインさんとライオスさんが背後からメイスで殴ってきた。

流石に2人ぶんの力には勝てずに飛ばされてしまう。


「チッ、随分と連携が上手いですね」


「ゲホッゲホッ、そちらこそ、随分と硬い上に戦い慣れてますね。このまま貴方と戦い続ければ我々とて無事では済まないでしょう。勝てるかさえ怪しい」


体勢を整え、3人でいつでも動けるように構えたアレスさん達はジリジリと距離を取ろうとする。


「逃がしませんよ。ここで逃がしたら、恐らく貴方達を追うことは出来ないしアイナも助けられない」


俺も少しずつ近づいて攻撃体勢を整え、逃げようものなら背後から昏倒させれるようにする。


「なら、数の差で負けているにもかかわらずこのまま戦い続けますか?どう考えても貴方のが先に力つきる」


「・・・確かに俺がこのまま戦い続けても意味はないでしょう」


1人なら・・・な


「・・・・そう言うことですか。お仲間が助けに来てくれると言うのでしょう?

あの村から追いかけて助けてくれると、無理ですよレイアさん、あの村は我々の拠点の1つ、村人全員が邪神教団なんです。いくら彼女達でも戦闘員114人を相手に即座に駆けつけられるわけがない」


「ーっ!!」


だから、町で補給したにもかかわらずあの村に立ち寄ったのか!

正直アリシア達が気になるが、あちらは大丈夫だろう。人数が多いからといって皆をどうこうできるわけがない。


俺の動揺が一瞬で収まったのを見たアレスさんが言葉を続ける。


「今のを聞いて動揺が一瞬だったのは戦士としては素晴らしいですが、策士としてはイマイチでしたよ。

あの114人では彼女達を仕留められませんが、時間稼ぎは出来ます。では、何故時間稼ぎをするのかを貴方は警戒すべきだった」


アレスさんが杖を振り上げると魔法を唱えた。


「『全てを呑み、喰らい、侵し、破壊する深淵よ、闇の眷族たる我が声を聞きその力を発現せよ』」


「ーっ!させませんよ!」


明らかに上位の魔法の詠唱。詠唱は人によって変わるため何の魔法かまでは分からないが、魔法というだけでやりようはある。

今まで全く使ったことのない魔眼の力を思い知れ!


「【反魔眼】!」


「『闇跳び』!」


魔力を散らす魔眼と闇の上級魔法、発動はほぼ同時だったが、その効果は・・・


「・・・・どうやら、魔法の無効化は出来たようですね」


何も起こらなかった。

初めて使った魔眼だったがその威力は確かなようだった。

少なくとも俺は、そう思ったんだ。


「クックックククク、レイアさん、確かに貴方の力は私の魔法を妨害しましたが、魔法そのものは発動していますよ」


「・・・・なに?」


【闇魔法】の特性は『侵食』と『破壊』だ。どこまでいっても他の属性と混ぜない限りはこの2つしか出来ない。

俺にもアレスさん達にも何かが起こった痕跡はないはずだ。


「気づいてないようですね。貴方は、何の為にここに来たのか、よ〜く目標物を見てみなさい」


「ーっ!まさか!?」


俺が馬車の方を見ると、確かに馬車があったはずの場所は周囲の土ごと消え失せていた。まるで何かにえぐり取られたかのように。


「まさか、アイナとジェインさんとギニアさんを殺したのか!?」


「まさか、闇の真髄の1つは『侵食』、では侵食した物は一体どうなるのか知っていますか?」


アレスさんは右手に持っていた杖を【闇魔法】で包み込み消し去ると今度は左手に魔法を発動した。すると、左手に消えたはずの杖が出て来た。


「答えは、詳しくは私もわかりませんが、無くなったわけではないんです。侵食すると言うことは消える事ではなく取り込む事、なら取り込んだものを分離できると思いませんか?」


「・・・・まさか、転送、か?」


俺の言葉にアレスさんはニヤリと口を歪めた。


「そうです!私の魔力で侵食したので私以外取り出すことは不可能!つまり、私を殺せばアイナ様は2度とこの世には戻れないと言うわけです。

私は身体中に自害用の凶器や毒を仕込んでいます。彼女を生かしておきたいのなら、我々をこのまま見逃してもらいますよ」


アレスさんがそれだけ言うと、ライオスさんとスウェインさんが移動系の支援魔法を全員に発動する。


「それではレイアさん、追って来てはダメですよ。あっははははは!!」


アレスさんたちはこちらに背を向けると、そのまま消え去った。


「・・・・・くそがぁあああぁああぁあぁぁぁああ!!!!!!」


それから10分後、アリシア達がこちらに駆けつけた時にはアレスさん達の姿は跡形もなく消えていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。