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黒銀の魔眼剣士  作者: 神名一葉
第3章:強さを求めて
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国境を越えて

sideレイア


例の5人の神官たち(名前はアレス、ギニア、スウェイン、ライオス、ジェインと言う)と旅を始めて2週間が経った。

2カ国程の小国を渡ってそろそろ神聖国の端まで着く頃だ。

俺たちと彼らの関係は良好、狂信者も居ないためそれなりに楽しめているようだ。未だにこちらの事情は何も話して居ないが。


戦闘はそこそこあったが、アレスさん、スウェインさん、ライオスさんは最低限の戦闘ができるらしく、防御魔法で助けてくれて戦いが非常に楽だった。


そして今、神聖国の関所を通る所だ。


「・・・・良し、入国を許可する。良い旅を。最近少し物騒らしいから気をつけろよ」


「ふぅ、皆さん、漸く神聖国に入りました。

これから移動のみで4日すれば聖都に着きますが、今までもそうでしたしここからはこまめに休憩を挟みましょう」


「「「「やった!」」」」


纏め役をしているジェインさんの言葉に俺を含む何人かが喜びの声をあげる。

ずっと移動で戦闘と食事と簡単な体拭き以外はずっと移動で皆疲れてたからな。

これから休憩を挟んで行くと着くのは1週間丁度、悪くないペースだ。問題があるとすればあまり俺たちが鍛えられてないことだけだ。


その日は関所があった街に泊まり、次の日に出ることになった。






入国したその晩、俺たちは宿屋の一室で集まって話し合っていた。


「さて、神聖国に着いたわけだが、聖都に着くまでの間休憩を挟むと言って居た。

そして俺たちは移動に専念しすぎてあまり修行ができていない。聖都に着くまでに度々鍛錬の時間を設けよう」


このまま聖都に着いても俺たちでは力不足で雷魔を倒せない。

それは雷魔と対峙した全員がわかってるはずだ。対峙してない何人かは微妙だが。


「そうだな。私も最近身体が固まっていかん。鍛錬には賛成だができれば模擬戦のような形で頼む」


エンヴィは夜中の番の時ずっと刀を振ってたからな、交代の時は何事かと思った。


「俺も構わないぜ。【悪食《グラ》】も最近伸び悩んできたし、ここらでそれ以外を鍛えねぇとな」


そう言いながら露店で買いまくった食べ物を次から次へと口に運ぶベルゼ。これで伸び悩んでるのと太らないのが信じられない。


「・・・・賛成、最低限、体力、は、欲しい」


アヴァールは移動中ずっと魔法の開発ばかりしていた。そのせいで何回か酔ってゲロ・・・粗相をしたからそのせいで言い出したかもしれない。


「私も良いわよ。この中では弱い部類に入るもの。力をつけないと」


「アリシア、そんな事言ったら私のが弱いんですよ?お兄様、私も賛成です」


アリシアとソフィは基本的に後方支援をしているが、どうしてもアヴァールに劣ってしまう為苦労しているようだ。


「・・・めんどうくさい」


こいつは知らん


「良し、全員賛成だな」


「・・・私は反対d「じゃあ明日の休憩の時からやろう。アリシアとソフィとアイナとアヴァールで魔法の訓練、俺とエンヴィとベルゼで模擬戦だ。魔法組はアヴァールに任せるぞ」」


アイナの声を妨げて話を続ける。こいつは真面目な時はしっかりしてるのにそれ以外はどうもふざけてるように見える。


それから軽く雑談した後、皆自分の部屋に戻って眠りについた。






数日前からそれなりの頻度で不思議な夢を見る。

並ぶ丈夫な建物、硬い地面、大きな施設、黒い髪と黒い目をした人々。その中で俺は誰かで、その誰かの生活を送っていた。体は勝手に動き、その誰かが感じたのであろう感情が伝わってくる。


朝起きて、一緒に生活している女性に笑顔で話しかけられ、過剰なスキンシップを取られてるのに、無愛想に対応する『俺』。

無愛想だが、伝わってくる感情は愛情と幸せ、そして心の何処かにある冷静で冷たくて何も感じない部分。


制服らしき服を着て、そとに出ると友人らしき少年と出くわす。その少年には信頼と呆れを感じる。


他にも様々な人が現れるが、どんな人にも、どんな現象にも心は動かない。苛立ちや孤独、怒り、諦めなどの感情が伝わってくるが、最後には何も感じなくなる。

とても寂しい人生。



風景が変わる。



俺たちが普段生活しているような街並みで、金髪の女騎士と翠の髪と翠の眼をした女の子がいる。


女騎士には信用とわずかな好意を感じる。

翠の女の子には小動物に対する様な感情と僅かな嗜虐心、信頼、淡い恋心を感じる。


この2人と一緒に旅をしているようだ。

強い力で全てを薙ぎ払い、蹂躙している『俺』、人も魔物も平然と殺すけど、この誰かが抱く感情は失う事への恐怖と楽しいという感情、そして何も感じない冷めきった心。


旅をして、人生を楽しむのではなく楽しもうとする焦りを感じる人生。


この2通りの人生を擬似的に送る夢を見る。

そして理屈ではなく感情で理解する。この2人の誰かは同一人物だという事、残酷なのは守る為である事、そして


「これは、この人生は多分、『ぼく』の送ってた人生だ」


根拠なんて無い。でも確信だけはある。

何故今更こんな夢を見るようになったかなんて分からない。

けれど『ぼく』から伝わるこの感情、冷たくて何も感じない石のような部分。

これだけは忘れてはいけない気がする。

これが、『俺』と『ぼく』、1人の中の2人を分ける決定的なものだと思うから。

この冷たさは、あるが故に人を強く優しく残忍にするものだから。

これを忘れたら、俺は一生『ぼく』を唯の殺戮者としか見れなくなってしまう気がした。






目がさめる。気がつくと頰に涙が流れてるのを感じる。この夢を見ると毎朝流れる。

俺が見る『ぼく』の人生はさっきの2通りのどっちかだけだ。なのに俺はもう1つ、最後に「何か」を見ている感じがする。

そしてそれを見たから涙が流れてるのを何となく感じる。なのにその「なにか」を思い出せない。

これが酷くもどかしい。


流石に何日も見てるとそういうものだと割り切るようになるが、少し気になる。


「次会った時聞けばいいか」


今はやるべき事に集中しよう。

俺は隣のベッドで寝てるベルゼを起こさないように抜け出し、外で軽く筋トレするのが日課だ。宿で止まってる時は。

今日も抜け出そうと隣のベッドに眼を向けるとベルゼが居ない。

代わりに・・・・


「え、アリシア!?」


やたら薄い寝間着を着たアリシアが居た。俺のベッドでだ。見た感じまだ寝てるようだ。

昨晩皆で話した時は普通の寝間着だったのに・・・!!


「なんで、ってかベルゼは・・・?」


俺がいくつか疑問を浮かべてるとアリシアが身じろぎする。


「ん、んふぅ・・・」


「うぁ・・・!?」


寝相のようだが、俺の腕に抱きついてくる。今までも偶に腕に抱きついてくることはあったがここまでしっかりと引っ付いてくるのは初めてだ。

だからだろうか?


ふにゅふにゅ


「むっ・・・・!?」


胸が当たってるんですけど!?いやこれ当たってるっていうより押し付けられてる!

正直感じてはいけないナニカを感じそうになるので俺は少し強引に振りほどいて外へ走る。


「・・・・・・・・ヘタレ」


扉を閉める瞬間、アリシアの口が小さく動いたが、俺がそれに気づくことはなかった。






朝の日課などを終えた俺はいつも通り皆で朝食を取っていた。とはならなかった。

どうにも今朝の事のせいでアリシアを意識してしまう。


「なぁベルゼ、お前今朝、昨晩か?どっか行ってたのか?」


一応、聞いておこう。何も聞かない方が不自然だ。


「ん?あぁ、あんま寝付けなくってエンヴィと酒盛りしに外に出てたわ。俺もエンヴィも酔い潰れちまって帰れんかっただけだ」


エンヴィのほうを見ると頷いている。どうやら本当に酒盛りをしていたらしい。

いくら魔法で酔いを消せるからって移動の前日に飲むなよ。吐いても知らんぞ。


なんとか意識を別の事に持っていけたと思ったら視線を感じ、ついそっちを見てしまう。


「「・・・・」」


「・・・ど、どうかしたか?」


ソフィとアヴァールがこちらをじっと見てくる。なんとなく、居た堪れない。


「いえ、今朝アリシアが居なかったのですが、どこに行ってたのかは聞かないのですね?」


「うっ・・・」


そうだ、ソフィはアリシアと同室だった。この流れで聞かないのはおかしいが、聞いたら聞いたでちょっと・・・


「へ、へぇ、アリシアも昨晩どこか行ってたんだなぁ」


仕方ない。どうにかしてまた別の話題にしなければ


「・・・・アリシア、今朝、レイア、の、部屋、から、出てきた。薄い、服で」


「ぐぅえ!?」


「なんだと!?」


「・・・・へぇ?」


動揺のあまり変な声が出てしまった。

そしてアヴァールの言葉に反応したエンヴィとソフィも怖い顔でこっちを向く。


「どっどどどどういう事だレイア!おっお前アリシアに手を出したのか!?出したのか!?戦争したいのか!?答えろレイア!返答次第ではお前を去勢しなければならんぞ!!」


「私からもお願いしますお兄様。説明、してくださいますか?」


「痛い痛い痛い痛い!!!離せエンヴィ!」


エンヴィが俺の頭を両手で掴んで持ち上げる。

俺の身長は176cm、エンヴィは大体170cm前後、それなのにエンヴィは俺の頭を握り潰す程の力を込めて強引に持ち上げてくる。

ソフィはその隣で俺に説明を要求してくる。

このままじゃまずい。アイナが面白がって俺に【治癒魔法】掛けてるのがまずい。これじゃあエンヴィが力尽きない限り永遠に終わらない。

俺は収められる唯一の人間、アリシアに助けてくれと目で語りかける。

こっちを見たアリシアは俺の視線の意味に気付いたのか、こちらに来て話した。


「お姉様、ソフィ、レイアを許してやって。レイアは横で私が寝てるのをいい事にそんな事する男じゃないわ」


「む・・・それもそうか」


「・・・そうですね。お兄様を信じる事にしましょう」


エンヴィとソフィが俺を解放して肩の力を抜いた時を見計らってアリシアが余計な一言を付け加えた。


「ヘタレなレイアじゃ私の胸を揉みしだくことしか出来なかったのよ」


「ぐあぁあああぁあ!!!?」


肩の力を抜いていたエンヴィの腕が信じられない勢いで動き、再び俺の頭を潰そうとしてくる。今は片手なのにさっきの両手の時より強いぞ!?

ソフィは今度は俺の抵抗を封じようと腕を拘束してくる。

そしてさっきは大人しかったアヴァールが俺に魔法を撃とうとしてくる。


「違う違う違う違う!!誤解だって!朝起きたら俺の隣でアリシアが寝てて、出ようとしたら腕に抱きついて来たから振りほどいただけだって!」


「どうせその時に触れたのだろう!?どうだ、ええ!?」


「うぐっ・・・!」


正解はそれ以上だから何とも言えない。

結局10分くらい騒ぎ続けて騒動は収まった。俺がボコボコにされるという結果で。

そしてその日から模擬戦による鍛練が始まった。


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