信者の表現がオーバーなのはデフォルトらしい
sideレイア
さて、番と子供が増えたわけだが、実際は大した問題では無い。
こういう時の為に援護がある。さっきまでは前衛と遊撃だけでも何とかなっていたから、後衛組が少し足止めでもしてくれればいける。
「後衛組はアヴァールを中心に子供を足止めか討伐!ベルゼは番を担当!俺とエンヴィはこのままこいつを討伐!」
俺の合図をきっかけにアヴァール達の攻撃が始まり、子供のロックコングが防御姿勢を取りながら歩みを止める。
番のロックコングは子供も気にせずこちらに向かって来るが、足元の岩が『喰われて』転ぶ。
今なら邪魔は入らない。
「エンヴィ今の内に済ませるぞ!」
「わかった!」
エンヴィが刀を振るうが、隻腕になってバランスを崩したロックコングは予想外の動きでフラフラしてて小さな攻撃しか出来ずにいる。
このまま時間を取られるのはまずいな、ロックコングが体勢を整えれば攻撃も当たるだろうがエンヴィが危ないし、向こうに加勢しなければならない。
「エンヴィ!ロックコングの動きを止める!『ホーリーバインド』!」
ここ1年で少し練習した【光魔法】は昔より確実に強くなっていた。
俺の手から飛び出した『ホーリーバインド』はロックコングの脚に巻き付き、転ばせた。
「助かるレイア!【紅炎刀】!」
エンヴィの刀がロックコングの首を落とし、胸を一突きする。
ロックコングの絶命を確認した俺とエンヴィはベルゼに加勢する。
ベルゼは【悪食】で攻撃しているが、中々ロックコングの防御を突破出来ない様だ。
距離があるうちに一撃入れておこう。
「ベルゼ!一撃行くぞ!【飛翔斬】!」
まだまだ未熟だが、【刀術】のスキルで斬撃をロックコングの脚の付け根に飛ばす。
武器の形さえ似ていれば剣でも使えることがわかった。両手剣も刀も両手持ちだからそれなりに融通が効く。
【飛翔斬】がロックコングの脚を半分程切断し、ロックコングの動きが一瞬止まる。
「ナイスアシスト!喰らえ、【悪食】」
ベルゼの【悪食】が発動し、ロックコングの首から上が『喰われ』て倒れる。
後は子供のロックコングだが、目をやると既に魔法で倒されていた。
俺が居なくてもあっちは大丈夫だったようだ。
それから全員合流し、素材を剥ぎ取った俺たちは再び町へ戻る。
ちなみに帰りの御者は俺とアヴァールがやっている。
「・・・・なあベルゼ、これ絶対移動のが長いよな」
「言うなレイア。俺は今そんな事よりも寝たいんだ。
あんな美味くもないもん『喰って』腹が一杯になっちまった。早く消化しねぇと・・・・」
スキルで喰ったもので実際に腹が膨れるもんなのか!?
じゃあ今ベルゼの胃袋の中にあの岩や鉱石が・・・!?
なんか、可哀想に見えて来たな。
「ベルゼ、帰りはゆっくり寝ろよ」
「?・・・あぁ」
ベルゼに限らず、ソフィとエンヴィとアイナまで寝てしまった。
悪いとまでは言わないが、空気が緩み過ぎじゃないか?
戦力過多なのは分かるが、流石に人数差があるとまずいんじゃないか?
「しかし、毎回護衛依頼とか借り物の馬車じゃ都合よく動けないな。1セット買うか?」
「・・・・でも、高い、よ?」
アヴァールが否定気味な意見を出すが、態度が完全に否定的では無い・・・ようだ。
アヴァールは出発した時からずっと俺の膝の上に乗っている。で、頭を俺の胸元に擦り付けている。最初は俺も照れていたが、もう小動物と同じだと割り切ることにした。
俺も気が向いてる時に頭を撫でて癒してもらってる。もうアイナより充分ヒーラーやってるな。
「多少高くても買っておく価値はあるだろう。
あまり使いたく無いが、ナイトの鱗が何枚かある。これを使えばそれなりの額が工面できる」
誕生日プレゼントにもらったナイトの鱗で出来た鎧、その余りを何枚かもらっている。
古代龍の鱗なんて最低でも金貨数百枚はするレア物だ。しかも無傷の鱗、本物であることさえ確認させれば馬車位簡単に買える。
「・・・・魔導師、と、しては、それ、凄く、ほしい。売って?」
「別にアヴァールにならタダでやるよ。いつも世話になってるからな」
俺はアイテムウィンドウから1枚鱗を出してアヴァールに渡す。
アヴァールは目を輝かせるとゆっくりと手を伸ばし、鱗を受け取るとじっくりと眺め始めた。
「・・・参考までに聞きたいんだが、何に使うんだ?」
鱗はかなり硬いから加工するのも一苦労なはずだ。
「ん・・・・魔法、の、触媒、保存、増幅、なん、でも、いける」
古代龍の鱗となると相当の魔力を帯びるらしく、魔法関連の道具にするのに適しているらしい。
と、アヴァールと会話をしていると、前の方から戦闘音が聞こえた。
「前方に戦闘音あり!盗賊と馬車だ!
俺とアヴァールで盗賊を殲滅、アイナは怪我人の治療を担当!この馬車はソフィに任せた!」
俺はアヴァールとアイナを抱えて走り、盗賊達が戦ってる場所まで行く。
アイナを襲われてる馬車に投げ込み、俺とアヴァールは盗賊達と戦う。
「加勢します!」
「たっ、助かります!」
戦ってた人は3人、全員魔法使いのようで、防御に専念していた。結界で矢を止めて自分たちに向かってくる盗賊を同じく結界で防御してるようだ。
盗賊は9人、まあまあ多い方だろう。
俺は剣を抜き、魔法を併用しながら盗賊を倒して行く。
「『ライトバレット』!【斬波】!」
「・・・『グランドウェイク』、『バインド』」
俺の腕では範囲魔法を強化なしに使うのは無理だが、スキルによる範囲攻撃で倒していく。
アヴァールの方は魔法1つで片付いたようだ。地面を揺らしてそのまま地面に拘束している。
「ふぅ・・・流石に魔物と戦った後だと盗賊位どうにでもなるな」
たまにこういうことをしないと自分が酷く無力に思えてくる。たまにやろう。
アイナは怪我人の治療を終えたらしく、馬車に乗ってる人に手を握られて感謝されてる。
あいつ、普段からきちっとしてれば良いのに、ああいう時しかちゃんとしないな。
「終わりました。もう結界を解いてくださって大丈夫ですよ」
「え、ええ、助かりました。危ないところを助けていただき、ありがとうございます。
あぁ・・・きっとこの出会いも主の思し召しです。あぁ、主よ、我が神よ・・・!」
・・・・どうやらなんかの宗教の人のようだ。
確かに服装はマリーさんが着てた服と似た感じの神父服だ。戦いで汚れていて分からなかった。
神官(?)さんは話し続けているが、この手の人は話し出すとキリがない。
悪いが話を変えさせてもらおう。
「えっと、この盗賊達を連行したいんですが、残念ながら俺たちの馬車は人数が多くて全員は乗せられないんです。
申し訳ありませんが半分程お願いしても良いですかね?」
「おぉ、おぉ、勿論ですとも。助けていただいたのですから、それくらいさせてください。
それと、お礼の方もしたいので、貴方方はどうぞこちらへ」
「え、ちょっ・・・!?」
俺とアヴァールは2人の神官(?)に引っ張られて馬車の中へ連れていかれた。
馬車の中は、予想はしていたが綺麗だった。
外見が貴族の乗る様なちゃんとした馬車で、内装は基本的に白で構成されたものだった。小窓に黒いカーテンが付いている以外全部白かった。
で、アイナは椅子の真ん中に座ってちやほやされていた。
「あぁ、貴女こそ主が遣わした使徒様だ・・・!」
「主よ、使徒様との巡り合いに感謝します・・・」
「アイナ様、どうぞこちらのクッキーを」
1人方向性が違うが、物凄く感謝されてる。そしてアイナがそれを当然とでもいうかの様にふんぞり返って、こっちをみて鼻で笑いやがった。
あいつ、今日のデザート抜きな
それから少しして収集が付いた頃、同じ街を目指しているということで同行することにした。
「なるほど、アイナ様はレイア様の従者で、あちらの馬車の方々とアヴァール様はお仲間であると」
「ええ、皆で神聖国を目指しているんですよ」
神託を受けたとかは言わない。言ったら言ったでまた荒れるだろうからな。
宗教的な面では一般的な感性を持ってる俺でもヤバイと思うんだ。この人達なんてもっとだろう。
「それでしたらどうでしょう、一緒に神聖国まで行くというのは?馬車の方でしたら、街に教会の者がおりますので追加でもう一台出してもらいましょう」
「え、良いんですか!?」
それだと完全にこの人たちの教会に依存する形になってしまう。流石に申し訳ないんだが・・・
「ええもちろん。代わりと言ってはなんですが、移動中の護衛と食事の当番に加わっていただきたいのです。
見ての通り男だけでして、食事がどうも大雑把なものになってしまうんですよ」
「あぁ、なるほど。こちらとしても悪い話ではないですし、仲間と相談してみますね」
つまり護衛の報酬として移動と食事の共有というわけか。これだけ見るとこちらの負担のが大きいが、馬車代を考えると相当楽になる。
移動中に依頼を受けるのが難しい以外はこちらへの負担は少ないはずだ。
どうせ自分達で移動してもどこかで戦うんだし。
街に着くまでに決めておこう。
自分達の馬車に戻った俺たちは皆にこの事を相談した。
「どうだこの提案、俺は受けたいと思うんだが・・・」
「私は良いと思うぞ。移動が楽なのは嬉しいしな」
「俺もかまわねぇぜ」
「・・・・私も」
エンヴィ、ベルゼ、アイナは賛成の様だ。多数決ならこれで決まりだが、そう言う訳にもいかない。
「私は、反対とまでは言わないわ。ただ、何を信仰してるのか位は確認しないと不安ね・・・」
「私も、アリシアと同じです。信仰者の中には過激な者も居ますし、せめて確認くらいは・・・」
「なるほどな、じゃあそれは俺が確認しよう。それでアヴァールはどうだ?」
まだ唯一理由を告げないアヴァールに聞く。いや、言わないんじゃなくてただ言ってないだけだが。
「・・・帰り、どうする、き?」
「「「「「「・・・あ」」」」」」
帰りたいから馬車に乗せてくれなんて言えない。そう考えると確かに帰りの少し困るが・・・
「いや、向こうで買えば良いだろ?行きに買うのと帰りに買うのでは管理面で色々違うぞ」
つい「・・・あ」、なんて言ってしまったが、確実にこっちのが楽だ。
身分を証明して向こうで鱗を売ればそっちのが売れるだろうし滞在時間も長いからそっちのが良い。馬の品揃えも向こうのが良いだろうし。
そう言う事を説明するとそれもそうか、みたいな感じでアヴァールも納得してくれた。
それから十数分後、無事に街へ到着した。
「それじゃあエンヴィとベルゼは依頼達成報告を、ソフィとアリシアは馬車の返却、俺とアイナとアヴァールは話をつけてくるよ」
「わかった。行くぞベルゼ」
「あいよ」
「それでは何かあったら【念話】をお願いしますね」
「ソフィ、行くわよ。レイア、また後でね」
全員やる事済ませに出かけた。一応宿集合と言ってあるから【念話】が届かなくても大丈夫だろう。
「さて、俺たちも行くか」
「「・・・・ん」」
この2人本当に話し方似てるな。
例の神官たちと合流し、教会とやらへ向かってる時にそれとなく聞いた所・・・
「ああ、我々は特定の神様を信仰しているわけではないのです」
「え、そうなんですか!?」
「ええ、神は人々を救いになられます。ですが全員が救われるわけではありません。必ず救われなかった者達もいます。
なので我々は神を信仰してますが、どの神を信仰しているかは決まってないのです。
我々は幸運や巡り合わせを抽象的なその『神』に感謝します。ですがどの信者も自分が信じたいものを信じ、愛する人と助け合い、敬愛する人との出会いに感謝する。そんな宗教なのです。
まだまだ小さいですが、教主様の元この考えを広め、神に頼らず自立していけるようになるのです」
つまり只々神に祈るのではなく自立すると、そしてその為に『〜神』と言うような具体的な拠り所を作る事を良しとせず人同士で助け合って生きる。
何かに依存する形を辞めた新しい宗教という訳か。
「それはまた随分と、良い教えですね。ただ、見方によっては神を否定してるように見えますが、神聖国に言っても大丈夫なんですか?」
異教徒、は違うか、邪教とかって言われないのだろうか?
「ええ、まだ大丈夫と断定は出来ませんが、新たな宗教として認めてもらえるように神聖国に行くのです。
無論、こちらの都合ですので厄介事に巻き込むつもりはありません。
まあ相当な事がない限り大丈夫でしょう。
信者には神聖国でそれなりに権力のある方も数名いらっしゃいますし、教主様もまた力のある方だそうですから。名は有名ではありませんがね」
神官さんは軽い感じで笑うけど、認めてもらうのは大変なことのはずだ。それと最後の発言信者として大丈夫なのか?
特に狂的な感じでもないし、大丈夫だろうと判断した俺たちは彼らの教会(という名の三階建ての小さな屋敷)で話をつけて待ち合わせ場所まで向かった。
そして次の日、彼らと一緒の旅が始まった。




