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黒銀の魔眼剣士  作者: 神名一葉
第2章:学院三年生
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雷魔より恐ろしいもの

sideレイア


雷魔の剣が振り下ろされ、俺の体を貫いた。






ー筈だったー









「ーっはっ⁉︎」


「あ?」


だが気がつけば、雷魔は剣を振り下ろした状態で呆然とし、俺の体は無傷で、しかも移動して雷魔から離れていた。


ーまったく、君は雷魔に遭遇すると死に急ぐ癖でもあるのかな?ー


「ーっ⁉︎この、声・・・・『ぼく』か⁉︎」


「あ、あぁぁぁ」


ー久しぶりだね、『俺』。雷魔も久しぶり、元気だったかい?ー


「え・・・・」


「ーっ!き、貴様・・・・何故、生きて・・・⁉︎」


俺が雷魔を見ると、あの、全てを見下していたあの雷魔が、怯えていた。


ーさて『俺』、選手交代のお時間だぜー


「は⁉︎」


その後突然、俺の体の感覚が消えていった。


そして、俺の口が勝手に動く。


「ふぅ・・・・いいねやっぱり、体があるっていうのは」


「・・・・貴様、まだ生きていたのか」


「そりゃあねぇ、ぼくが死ぬわけないじゃないか。そんなもの、君だってよく分かってるはずだよ」


そう言って『ぼく』はエンヴィとイリス様に歩み寄った。


「えーっと、何がいいかなぁ・・・・じゃあ、『リクリエイション』」


俺の体から魔力が流れ、勝手に魔法が発動した。

俺では出せない量の魔力、俺では使えないほど高位の魔法・・・・


「『俺』、黙って見ていなさい。本当は使うつもりはなかったけど、今後の為だからね」


「・・・・私と戦うつもりか?封印され、力を失い、自分の体さえ失った状態で?

この私に勝とうというのか‼︎」


「当たり前でしょ?君の力位、今のぼくにだってどうにでもできるんだから」


そう言って『ぼく』は唱えた。


「【怠惰アケディア】、【瞬間移動テレポート】」


次の瞬間、いつの間にか俺は雷魔の背後に居て、雷魔の胸を貫いていた。


「ーっ⁉︎貴様、これは【怠惰】の⁉︎」


「そうだよ【傲慢スペルヴィア】、ぼくを恐れている君じゃあぼくを『優越』出来ないし、高々上級悪魔の君じゃあぼくには勝てないよ」


・・・・見ていなさいって言われたけど、見ててどうこうなるものじゃ無いし、何より置いてかれてる気がする。


「ぬかせぇぇぇえ‼︎悪魔の力に頼らざるをえんのだろう⁉︎

殺して、殺してやる‼︎【孤高の存在オンリーワン】!」


再び、雷魔が消える。今度こそ俺を攻撃するのだろう。

だが、体に衝撃があっただけで、本来あるべき痛みが、無かった。


「【傲慢】の上級スキル【孤高の存在】、己の知覚能力を一千倍に引き上げるスキル。

悪魔故に肉体こそ消えないものの、本来なら肉体が崩壊する速度を出すスキル」


『ぼく』が喋る。


「だが、【怠惰】の特性、圧倒的防御力の前には、何の意味も成さない。

なんせ、速度だけだからね、攻撃力が強化されてない」


「何故、貴様が【傲慢】のスキルを知っている⁉︎」


『ぼく』は無視して続ける。


「【怠惰】のスキルは半分以上がバシップスキル。攻撃性はほとんど無いが、全く無い訳じゃない。

こんな風に、攻撃もできる。『滅悪の剣』、【万象転移】」


『ぼく』が【神聖魔法】の最上位、嘗て雷魔を追い払った剣を召喚し、それを消し去った。


「ぐっ、ああぁぁぁあぁあああぁぁあ‼︎‼︎‼︎」


「【怠惰】のスキル、動かずに敵を撃退、排除、そして自分及び味方を脱出させるスキル、【万象転移】。

『滅悪の剣』を、雷魔の体内に転移させた」


『ぼく』が雷魔の元に転移し、更に話を続ける。


「それじゃあ雷魔、お開きの時間だよ。そんな依り代じゃあなく、ちゃんとした体で来るといいよ。

ではまた、今度はレイアがきちんと君を倒すよ。ぼくよりも鮮やか且つスピーディーにね」


・・・・・・いや、無理


そんな俺の気持ちなど露知らず。新たなスキルを発動する。


「『堕落し、劣化せよ』【原初の記憶】」


『ぼく』がそう唱えると、目の前の雷魔が霧状になって消えてゆく。


「きっさまああぁぁぁあああ!!!!!決して、決して許さんぞおぉおおぉおぉおお!!!!!!!!!!」


「そう、頑張ってね」


そのまま雷魔は消えて、その後に残ったのは・・・


「・・・・おや、依り代は女の子だったんだね。多分、負けそうになった時に見た目で迷わせるつもりだったのかな?」


目の前にいたのは、黒い髪の13、4歳くらいの半裸の女の子だった。


「・・・・・レ、レイア、それはどういうことなのかしら?」


「お兄様、一体何をしてらっしゃるのですか?」


グリフォンと戦ってたはずのアリシアとソフィの声が聞こえる。


「あぁ、雷魔が一時的に消えたからグリフォンが消えたんだね。よかった」


『ぼく』が喋る。今度は俺の声で、ぼくの意思で、だ。


「・・・・・・・・説明、して、レイア」


「わかったよ。アヴァール、アリシア、ソフィ、聞いてくれ、実はな・・・・」


深刻な声を出して喋ってるが、喋ってるのは未だに『ぼく』だ


「「「実は・・・・?」」」


「戦ってた雷魔がこの子を乗っ取っててね。可愛い子だったから、攫おうと思って服を剥いでいたんだ。

あとは連れ帰ってベッドに寝かせて、ついでに俺も服を脱いで一緒に寝たら完璧さ!」


ちっ、違あああぁあああぁあああぁぁぁあう!!!!!!!!!!


(おい『ぼく』!!今すぐ体を返せ!!)


(え〜、嫌だよそんなの。だって楽し・・・・【色欲ルクセリア】に目覚めるチャンスじゃないか!!)


(嘘つけ!!今明らかに楽しそうとか言おうとしただろう!!)


俺は必死に抗議するが、事態は悪化していく一方だ。


「レ、レイア?き、きききき聞き間違いかしら?いいい今、その子と寝ると聞こえたんだけど⁉︎」


「気のせいじゃないよアリシア、ぼく・・・・俺はこの子と寝るんだ、性的に、ね。

なんならアリシアも一緒に混ざるか?」


『ぼく』は大きく一歩踏み出してアリシアの腰に手をやり引き寄せ、もう片方の手で頬を撫で、低い声で耳元で囁く。


「沢山可愛がってやるぞ、可愛い可愛い、俺のアリシア」


「・・・・・ひぅ」


アリシアは顔を真っ赤にして変な呻き声を出して気絶した。


俺だって気絶しそうだわ!なんだ可愛がってやるぞって!俺はそんな事言わねぇよ!!

だが『ぼく』はそんな事御構い無しに次の被害者を出す。


「アヴァール」


「・・・・なに?」


アヴァールはアリシアの様子を見て少し警戒しているが、顔を僅かに赤くして、エルフ特有の長い耳をピクピクさせている。


「アヴァール、お前も可愛いよなぁ。

小さいのにクールで、そのくせ小動物みたいに好意全開で俺にすり寄ってきて、そんな無防備でいると・・・」


『ぼく』はアヴァールに近づきながらアヴァールを口説き、今度はアヴァールの顎を取って、上からアヴァールを見下し、顔を近づけ口が裂けるんじゃないかというほど獰猛な笑みを浮かべ、囁く。


「お前を無茶苦茶に乱したくなるじゃねぇか」


「はうぅぅ」


そしてまた、アヴァールも顔を真っ赤にして、気絶こそしなかったがそのまま腰を抜かして顔を床に擦り付け始めた。


・・・・・ここまで行くと、『ぼく』の発言よりアヴァールの奇行に目がいくようになるな


「ソフィ」


「わ、私はそうはいきませんよ⁉︎

アリシアや先輩みたいにしようったってそうは・・・」


『ぼく』は面倒くさくなったのか、少し顔を歪めるとソフィを抱きしめる。


「ひぅっ」


「ソフィ、俺の可愛い妹、そんなあからさまにツンツンされると我慢できなくなっちまうよ」


『ぼく』はさらにソフィを拘束するかの様に強く抱きしめる。


「ソフィ、お前は、俺のものだ」


「・・・・は、はぃ」


ソフィが消えそうな程小さな声で返事するが、アリシア達の様に我を忘れない。

その結果が意外だったのか、『ぼく』は追撃をする。


「よしよしソフィ、良い子だ。なら、されるがままでいろよ」


一方的にそう言って、『ぼく』はソフィを押し倒し、ソフィの首筋に舌を這わせる。

ソフィが小さく喘ぐ事も気にせず、『ぼく』はソフィの耳元で囁く。


「愛してるよ、ソフィ」


「・・・・・」


オーバーキルなのかなんなのか、ソフィは声ひとつ上げずに気絶した。


と、ここで『ぼく』は体をどかす。


「さて『俺』よ。文句はあるだろうが時間がないからやった。言いたい事だけ言わせてもらう。

まず、学院を卒業したら早目に聖女に会え、聖女に会って、『ぼく』に会え。

聖女がそれを拒んだら今みたいにすれば良い。聖女って言うくらいだから女だろうし、まあ落とせるだろう。

それから雷魔は一時的に追い払ったが、来年には復活し、『ぼく』の影に怯えながらちょっかいかけてくるだろう。

だから早目に【色欲】を開花させ、雷魔に対抗できる様になれ。

この様子だとエンヴィの【嫉妬インヴィディア】も急いだ方が良い。アヴァールの【強欲アワリティア】も強化しろ。

ベルゼの【暴食グラ】は良い具合に成長しているが足りない。ペースは悪くないとだけ言っておこう。

この調子だと接近戦で最も強い2人が使えない事になる。急いでエンヴィと君はカーススキルを開花させろ」


(やたら長い事喋ったと思ったらまたカーススキルかよ。もうちょっと助けてくれても良いんじゃないのか?)


「『ぼく』は今まで何度君を助けたと思ってる。雷魔絡みで3回だぞ3回!これでもかなり助けているが、そのせいで『ぼく』の力が衰えつつある。

良い加減自分でなんとかしてくれ。

それから依り代の女の子は雷魔のみを狙った攻撃を受けただけだから無傷のはずだ。栄養が足りてないかもしれないが、深刻な状態では無いはずだ。

『ぼく』のお陰で雷魔は2度とこの子に取り付けない。この子はもう安全だ。

カーススキル持ちも平気だから安心しろ」


(待て待て待て待て。一気に喋りすぎだ。もうちょっとゆっくり)


「時間だ。また会える事を祈ってるよレイア。この子達の好意にもしっかり答えるんだよ」


「ちょ、ふざけんな待て!!」


時既に遅し、俺は体を取り戻し、《ぼく』の気配は消えた。

次会ったら殴ると心に決め、後ろを振り返る。


後ろには気絶したイリス様、


体を起こそうとしているエンヴィ、


ニタニタしながら気絶してるアリシア、


床に顔を擦り付けるどころか床舐め始めたアヴァール、


若干乱れた格好して気絶してるソフィ、


依り代になってた半裸の女の子


そしてグリフォンとの戦いに疲弊し、ぐったりしている戦士達


「・・・・どうしろってんだよ」


取り敢えず俺は、ソフィの服を元に戻し、女の子に鎧を着せ、どこかにいるはずのアティさんと父さん達を探し始めた。

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