そして忌子は災厄へ
sideアヴァール
私とヴェラことヴェラーネはそれから日が暮れるまで森で遊んだ。
その日から私の生活は変わった。
ヴェラは度々お菓子やご飯の残りを持ってきてくれるし、私が小柄なのもあって服も譲ってもらえた。
体は相変わらず小汚かったし、寝床も相変わらずだったけど、お陰で衛生面が改善された。
そんな、今までならありえないやや贅沢な生活を送って2年後、ちょっとした事を教わった。
「ねえアーちゃん、アーちゃんのステータスみして?」
「・・・・ステー、タス?って、なに?」
「ステータスっていうのはね、ステータスひらけ!ってやるとでてくるんだよ〜
じぶんのできることをおしえてくれるの!」
「ふぇ〜」
それは当時の私にとって信じられないことだった。
だから私は開いた。開いて、しまった。
名前:アヴァール・アワリティ
種族:エルフ
年齢:7
性別:女
称号:忌子
レベル:1
HP:89/170
魔力:340/340
攻撃:27
魔攻:92
防御:18
魔防:67
俊敏:12
スキル:【水魔法LV1】【土魔法LV1】【飢餓耐性LV7】【毒耐性LV3】【苦痛耐性LV2】
固有スキル:
カーススキル:【強欲】
加護:
ステータスに刻まれている文字は何故か幼くても読めるようになっている。親切だ。
だが、これが私に、私たちにとっての不幸だった。
「わー、アーちゃんのまほー、わたしとおんなじだね!」
「ま、ほー?」
「うん!みてみて〜?」
名前:ヴェラーネ・ヴェルチ
種族:エルフ
年齢:7
性別:女
称号:幸福の申し子
レベル:1
HP:190/190
魔力:230/230
攻撃:31
魔攻:42
防御:28
魔防:37
俊敏:23
スキル:【分析】【水魔法LV1】【土魔法LV1】【弓術LV1】
固有スキル:【魔導砲】
加護:【幸福の神の加護】
そこで私は初めて魔法の存在を知った。
そして、ヴェラに簡単な【水魔法】を教わった。
そして私達は、触れてはいけない物に触れた。
「いみこって、なーに?」
「わかん、ない」
「わたしの『こーうんのもーしごと』とおんなじなのかなぁ?
『こーうんのもうしご』はね、いいことがたくさんおこるんだって!」
「ふー、ん」
「もー!アーちゃん!わたしはね!アーちゃんにあえたのもいいことだっていってるの!」
「ーっ‼︎」
「ふふっ、これからもずっといっしょにいようね!」
「(コクコクコクコク)」
その日の夜、私はステータスを眺めながら『忌子』について考えた。
そして、ステータスはそれに応えてしまった。
忌子:不幸の象徴、呪われし者。
この称号がある限り、その者には不幸が訪れ続けるだろう。
『認識されることで存在を強める』
まさしく私はそうだったのだろう。
その日、不幸にも転んだ。
その日、不幸にもお腹を壊した。
その日、不幸にも雨で服が濡れた。
その日、不幸にも川が小規模な氾濫を起こした。
その日、不幸にも野良犬に襲われた。
その日、不幸にも食料が動物に盗られた。
その日、不幸にも住んでいた樹が倒れた。
そして夜が明ける頃には、2年前のようにボロボロになっていた。
それでも私は絶望しなかった。朝になって、昼になればまたヴェラが来る。
ヴェラが来れば私は幸せ。
ヴェラと一緒に居ることこそが私の幸せ。
次の日、ヴェラは来た。
けどヴェラは、いつもと違って焦っていた。
「アーちゃん!」
「・・・ヴェ、ラ」
「アーちゃん!急いで!急いで逃げないと‼︎」
ヴェラは昨日の夜、両親に聞いたのだ。忌子の意味を。
そして両親は知ったのだ、自分達の娘が、忌子と会っていると。
そして長老に相談し、私を討伐するために、自警団を使った。
私を探していると、彼女は言った。
「アーちゃん!逃げないと‼︎逃げないとアーちゃんが死んじゃう‼︎」
死ぬ。それは、私にとって、不幸なんだろうか・・・?
否。今まで親に捨てられ、
村を追い出され、
ゴミのようなものを食べ、
雑巾のようなボロ切れを着て、
孤児以上に悲惨な場所に住み、
ただ1人、孤独に生きてきた私にとって、死ぬことは救いではないのだろうか?
「・・・・・ヴェ、ラ、ちゃん。わた、し、は、いいよ」
「アー、ちゃん?」
「わ、たし、は、にげない。死は、わたしの、すく、い、だから」
「・・・・わかった」
「・・・・・」
「アーちゃんがそんなに言うなら、わたしがみんなをなんとかする‼︎」
「ーっ⁉︎」
「だから、まってて」
ヴェラは走り、何処かへと消えた。
私は既に、何も期待していなかった。子供の言葉でどうこうなるものではない。
それどころか、『不幸にも』捕まり、私の居場所を聴き出されてしまうだろう。
しばらくして、私はある発想に行き着いた。
もし、『不幸にも』私と会った事を、ヴェラが怒られていたら?
「・・・・そ、れは、イヤ」
私は立ち上がり、村を目指した。
村までは、あっさりとついた。家の陰から見て、理由を悟った。
村のみんなは、村の中心に集まり、武器を構えていた。
中央にはヴェラとその両親。
この村の長がいた。
悟った。ヴェラは多分、怒られる。
当たり前だ、私を追い出した人の子が、私と親しくしているのだ。
怒るに決まっている。
「村の諸君!
ここにいるのは私の孫娘のヴェラーネ、『幸運の申し子』、この村の希望の象徴だ‼︎
だが、この子は不幸にも、村の外に居を構えている不幸の申し子、『忌子』に呪われてしまったのだ‼︎
さあ、我々で、『忌子』を倒し、この子の呪いを解こうじゃないか‼︎」
・・・・やっぱり私は、殺される。
「なお、ヴェラーネは討伐完了まで私の家で監禁させてもらう!
可哀想だとは思うが、結界に守られた私の家なら呪いを和らげるであろう!」
・・・・ヴェラが、監禁、される?
それは、ヴェラにとっての、不幸。
ヴェラの不幸は、私の不幸。
ヴェラが悲しむことは、私は望まない。
「・・・・わ、たし、は、ここ、よ」
私は、家の陰から出ていた。
「出たな忌子よ‼︎」
「ーっ‼︎ダメアーちゃん‼︎わたしはいいから、にげて‼︎‼︎」
「・・・・わたし、は、にげ、ない、わ。
ちょうろう、さま、わたし、を、ころし、て?」
「言われずとも、滅してくれるわ‼︎‼︎」
長老の剣が、私に振り下ろされる。
その時私は、今までの人生を思い出した。所謂走馬灯というやつだろう。
私は考えてしまった。
私がまだ村にいた頃の話だ。
『不幸にも』雷が村に落ちたら、怖いだろうな・・・・
刹那、村に雷が落ちた。
村の中心に、つまりみんなの集まっているところに、だ。
『ぐあぁあああああ‼︎⁉︎』
半分近い数の村人が死んだ。『幸運にも』ヴェラは生きていた。
そしてこの村は、エルフの村、みんな、エルフなのだ。
「こ、殺せぇぇ‼︎」
みんなの剣が振り下ろされる。
死は私の救い。つまり幸福だ。
私に幸福はありえない。
『不幸にも』みんなの剣が折れる。
『不幸にも』剣の破片が刺さってみんなが死ぬ《救われる》。
『不幸にも』私には当たらない。
『幸運にも』ヴェラには当たらない。
魔法が飛んでくる。
『不幸にも』魔法は制御を失い、家を破壊する。
『不幸にも』火の魔法が引火した。
『不幸にも』みんなが死んでいく《救われていく》。
『不幸にも』私は、死ななかった《救われなかった》。
『幸運にも』ヴェラは生きていた。
「くっ、化物が・・・・‼︎」
気付いたら残っていたのは、里帰りをしていた冒険者のエルフだけだった。
ヴェラは死んではいない。何処かに隠れていた。
炎が放たれる。
「(あぁ、当たったたら、あついだろうなぁ)」
しかし死《救い》は死《救い》だ。
私は受け入れようとする。
『不幸にも』私の魔力が暴走し、【水魔法】が発動する。
「ああぁああぁああああ‼︎‼︎‼︎」
『不幸にも』私は死ななかった《救われなかった》。
「はあ、はあ、はあ・・・・醜い、な、忌子よ」
私の視界にガラス片が入る。
ガラス片には、私の、焼け爛れた醜い私の顔が映っていた。
私は私を殺してくれる《救ってくれる》エルフを見る。
彼女はとても綺麗な肌をしていた。
「(・・・・いいなあ、うらやましい。
せめて死体は、綺麗なのがいいなぁ
あの肌が欲しい)」
瞬間、私の体の痛みが消えた。
「・・・・なに、これ?」
痛みが消えただけじゃない、小汚く、傷だらけの肌は白く、美しくなっていた。
「ああああぁああああぁぁあ‼︎‼︎⁉︎」
目の前のエルフは、醜く焼け爛れていた。痛みに喘いでいた。
「くそ、くそくそくそくそ‼︎死ねぇぇ‼︎『炎槍』!」
私は、死ぬ《救われる》という事以上に、さっきまでの痛みを思い出した。
そして欲した。
炎の槍を消すだけの水が欲しい。
次の瞬間、また『不幸にも』私の魔力が暴走し、【水魔法】が発動した。
違うのは威力、明らかに上がっていた。
私の魔法は『炎槍』を消し、エルフをのみこんで何処かへと消えた。
「・・・・すてー、たす」
気になってステータスを開く。
名前:アヴァール・アワリティ
種族:エルフ
年齢:7
性別:女
称号:災厄
レベル:16
HP:710/710
魔力:420/1130
攻撃:62
魔攻:322
防御:41
魔防:217
俊敏:47
スキル:【凍結魔法LV1】【土魔法LV1】
固有スキル:
カーススキル:【強欲】
加護:
他のスキルのレベルが、【水魔法】に統合され、【凍結魔法】になっていた。
「・・・・・まぁ、いい、や」
私は村を出ようとする。きっと厳しい旅になる。
目的は忌子、もとい災厄の改善と【強欲】の解明。そして幸福になること。
ーバァァァン‼︎
歩いていると、私の横を何かが通る。
後ろを見ると、ヴェラが立っていた。
ヴェラは、泣いていた。
「・・・・ヴェラ?」
「よくも・・・・よくもみんなを‼︎お母さんとお父さんを‼︎この村を‼︎
ゆるさない、ぜったいゆるさない‼︎
わたしが、わたしがアーちゃんを、お前をころす‼︎みんなにかわって殺してやる‼︎‼︎」
「・・・・ヴェラ、今、の、べんり、そう、ね。それ、に、あぶない、わ」
貴女が持っていても不幸なだけ、私は貴女に悲しまないで欲しい。
私は再び願った。
ー私、あれが、さっきの何かが、欲しいわ。
「ごめんね、アーちゃん。さようなら、【魔導砲】!」
それは、発動しなかった。
「・・・・ヴェラ、いま、は、ねてて」
私はヴェラの側に、【魔導砲】を撃つ。
「ひっ・・・・⁉︎な、なん・・・で・・・・」
ヴェラは気絶した。
それから私は旅立った。ヴェラは野良犬に襲われないような高い所に置いていった。
私は街に入れなかった。
称号は身分だ。見せなきゃ街に入れない。見せるわけにはいかない。
私は学んだ。『災厄』は不幸をもたらす。不幸の定義は私次第。
そしてこれを【隠蔽】するのではなく【偽装】する必要がある。
そんな危ない力の持ち主なんて、それこそ暗殺者くらいなものだろう。
だから私は思った。
ーもし『不幸にも』暗殺者の所についたら、危ないなぁ。
私は暗殺者のアジトについた。
そして壁をつつきながら思った。
ーもし『不幸にも』この家が崩れて、『不幸にも』【偽装】と【隠蔽】の暗殺者が生きてたら、危ないなぁ。
次の瞬間、アジトは崩壊、中からは傷だらけの暗殺者が出てきた。
そして私は思った。
ー暗殺者の、【偽装】と【隠蔽】、欲しいなぁ。
私は暗殺者を【凍結魔法】で凍らせた後ステータスを確認した。
名前:アヴァール・アワリティ
種族:エルフ
年齢:7
性別:女
称号:災厄
レベル:16
HP:710/710
魔力:470/1130
攻撃:62
魔攻:322
防御:41
魔防:217
俊敏:47
スキル:【凍結魔法LV1】【土魔法LV1】【隠蔽】【偽装】
固有スキル:【魔導砲】
カーススキル:【強欲】
加護:
それから私は、【偽装】で孤児になり、【偽装】を【隠蔽】で隠した。
そして街に入り、魔法の力を認められ、他国の学院へ、イーストラルク王国王立フェルミナ小等学院へ通う事になった。
そして8年後
「8年前の落とし前、私の復讐、果たさせてもらうわよ‼︎」
「・・・・ヴェラ、久し、ぶり」
「なっ、なにが久しぶりよ‼︎
殺す、今度こそ殺してみせるわ‼︎この忌子‼︎」
「・・・・今は、昔、とは、違う。負けない、し、死なない、わ。
大切な、ものの、為に」
戦いが、始まる。
なんか、アヴァールが主人公みたいになってる、だと・・・・⁉︎




