幸運と不幸
sideアヴァール
「『ストーンバレット』!」
「『フリージングワールド』、『アイスウォール』」
私はまず、地面を凍らせ、フィールド自体を利用できなくする。
ついでに移動も難しくなるから接近の心配もなくなった。
けどヴェラはそれよりも速く魔法を構築していた。
たった0.5秒前後の時間、それなのに10発近い。
さっきの紹介で速度について言われてなければ今のを受けていた。
そして連続して撃たれて負けていた。
「・・・初見、殺し、ね。『アイスガン』」
技術国に来て見かけた『銃』を再現してみる。この間買って分解したから大体の構造は分かる。
これで魔法の構築速度で劣っていても多少補える。
「ステージがダメでもどうにでもなるわよ!『ストーンランス・レイン』」
「『氷結界』」
勿論想定してた。
【土魔法】は私も持ってるもの。ステージの石を利用できないなら外を使うに決まってる。
だから私は結界でステージをドーム状に囲う。
「・・・・なんのつもりよ」
「・・・・ヴェラと、は、1度、しっか、り、正面、から、は、なす、べきと、思った」
私は、ヴェラの事だけが今までずっと気になっていた。
どんな時も心配だった、本当にあれで良かったのかと、いつも思っていた。
「ヴェラ・・・・深く、かんが、え、ないで、欲しい、んだけど
・・・・・あれから、8年、前の、あれ、から、元気、だった?」
「ーーーーっ‼︎‼︎ぉ、お前が、お前がそれを言うの‼︎⁉︎
私の両親を、村の皆を殺して!私の【水魔法】と【魔導砲】を盗んでおいて‼︎
面向かって言うことが、今まで元気だったかですって‼︎⁉︎
ええええ、そりゃあ元気だったわよ!私は!お前を殺すまでは死ぬわけにはいかないのよ‼︎
それに加えて私は『幸運』だもの‼︎お前みたいな迷惑な奴とは違うのよ‼︎
私は!『幸運』として、お前を殺す‼︎」
私は少し、後悔していた。
当時、死こそが救いだと信じていた私は、なぜヴェラを殺さなかったのか、せめて人の多い所に置いたりしようとしなかったのか、
【水魔法】は完全に【強欲】が暴発しただけだろうけど、【魔導砲】を奪った事にも違いはない。
今にして整理すると、私は結構悪だと思う。
「・・・・ヴェラ、ごめんね」
「はっ!ごめんで済んだら!こんな事してないわよ‼︎」
地面の氷を破って土の鎖が出てくる。
私は避けることなく、それを受け入れた。
「・・・・ヴェラ、ごめんね」
「ーっ!だから私は!「けど・・・」・・・・何よ?」
「けど、私は、負け、ら、れない。
私は、漸く、ようや、く出来た、大切、な、人の為、にも・・・ここで、勝つ‼︎」
【魔導砲】を発動し、鎖を破壊する。
【魔導砲】は名前に反して全方位攻撃も可能。
問題があるとすれば、魔力の消費が凄いことだけ。
「【魔導砲】・・・・すっかり使い熟しちゃって、私は何やら感慨深いわ」
「・・・・ヴェラ、私、本気で、いく」
今まで使ってなかった【強欲】も、抑えてた『災厄』も使って、ヴェラを倒す‼︎
「『ストーンバレット』」
「【魔導砲】」
同時に攻撃を開始する。
私の攻撃は『不幸にも』ヴェラを避け、ヴェラの攻撃は『幸運にも』私に命中し続ける。
「【縮地突き】!」
「ーっ!カフッ・・・・」
ヴェラの攻撃は『不幸にも』腹に直撃する。私は『不幸にも』受け身を取れず飛ばされていく。
「アヴァール・アワリティ‼︎さっきまでの威勢はどうした⁉︎8年前の災厄はどうした⁉︎
友がいるから見せられないとでも言うつもり⁉︎」
「・・・・そんな、こと、ない。
不幸、と、幸運、たたか、えば、こうなる、のは、必然」
けど・・・・
「けど、覆す、だけ、の、手札、が、あれば、別」
自覚したことで蘇った昔の力。
自覚したことで理解したスキルの数々。
「【強欲】に、手に、入らな、い、もの、なん、て、ない」
いつかきっと、私に向けられてこなかった『愛』さえ、手に入れてみせる‼︎
「ぬかせ‼︎『グランドウェーブ』!」
土が盛り上がり、大きな波となって襲いかかってくる。
その波からは、膨大な魔力を感じる。
「・・・・その、魔力、頂戴」
だから貰うことにした。
『グランドウェーブ』はただの砂へと変わり、地面に落ちていく。
「くっ、『落とし穴』!」
私の下に穴ができる。
足元の感覚が消え、一瞬浮遊感に包まれる。
「ん・・・・足元、が、寂しい、わ」
だから地面が出来た。
「ーっ⁉︎そんな、滅茶苦茶な⁉︎」
「・・・・ヴェラ、ごめんね。
【強欲】の中級スキル、【ドレイン】」
単調な名前、単純な効果。でももたらされる結果は大きい。
【ドレイン】の効果は自分の受けた攻撃を1撃だけそのまま返すこと。
ヴェラは自分の落とし穴に落ちかける。
「ーっ⁉︎『グランドーダゥンッ‼︎」
私は魔法詠唱を遮って発砲する。
音によって驚かせ、詠唱を阻害。更に私が狙ったのはヴェラ本人じゃなく、落とし穴付近の地面の氷。
砕け散った氷は落とし穴に落ちていき、ヴェラの邪魔をする。
私は落とし穴に歩み寄り、ヴェラに話しかける。
「ヴェラ・・・・降参、して。私、は、ヴェラを、こう、げき、したく、ない」
「ーっ⁉︎勝手なことをっ!『土壁』!」
ヴェラは自分の足元から壁を出現させ、舞台へ戻ってくる。
『不幸にも』足元はツルツルしてて瞬間的な反応は難しそう。
「・・・・しぶとい、わ」
「いつでも殺せるくせに・・・・‼︎手加減のつもり⁉︎同情でもしてる訳⁉︎」
「うんん・・・・・私は、ヴェラ、に、復讐に、囚われず、幸せ、に生き、て、欲しい、だけ」
それが8年前からの望み。
『不幸』な私の、『幸運』なヴェラへの願い。
「・・・・挑発しているようにしか感じないわ」
「復讐、対象が、話しかけ、た、ら、大抵の、こと、は、挑発に、聞こえるの、は、仕方ない、こと」
「・・・・・どうでもいいわ。8年の努力の成果!見せてやるわよ‼︎
『大地の氾濫』‼︎」
「ーっ⁉︎」
地面が盛り上がり、大きな波と化す。
昔見た川の氾濫、それを再現したような恐ろしい規模の魔法。
しかも地面に干渉してるせいで魔力を奪えない。
(『氷結界』は防いだ後が問題だから却下、災厄は論外、【強欲】も・・・いや、いける)
「【スキルチェンジ】」
8年前に使ったスキルの成長操作。
私は自分の【凍結魔法LV2】を【土魔法LV6】に統合する。
【凍結魔法】は【水魔法LV1】になり、【土魔法】は【樹木魔法LV3】になる。
そして
「『大地の氾濫』!」
同じ魔法で対抗する。こちらの方が発動が遅かった。その分魔力を大量に使って威力を底上げする。
そして右手で魔法を制御しつつ、左手でスキルを発動する。
「【魔導砲】」
「ーっ‼︎ア、アヴァールゥゥゥ‼︎‼︎‼︎」
【魔導砲】が直撃し、ヴェラはダメージ過多で結界の外に排出された。
『・・・・・はっ、え、えぇ、見事壮絶な魔法対決、もとい魔法戦争を制したのは、王国代表アヴァール・アワリティ選手です‼︎‼︎
見事なまでに舞台を破壊し尽くしてくれました‼︎
これは直すのに時間が、少々お待ちください。
・・・・・えー、只今運営から連絡がありました。
闘技大会の残りは明日に回し、これから舞台の修復に当たるとのことです‼︎』
ハッとなって周りを見ると、氷で覆われ、大穴が開いた舞台、舞台の外は凸凹した土で埋め尽くされている。
「・・・・やっちゃった」
あぁ、エンヴィに、愚痴られるかもなぁ・・・・
side レイア
「えー、闘技大会1回戦突破おめでとうと言う事で、かんぱーい‼︎‼︎」
試合をしたのは俺とアヴァールだけだったが、一応突破したという事で引き続き宴が始まった。
と、言うか、なんかあったら毎回やってる気がする。
皆あっという間に酔っていく。
「アヴァール、エンヴィ、少しいいか?
話があるんだが・・・」
「ん、わかった」
「わかった。手短に頼むぞ」
戦えなかったエンヴィはだいぶ拗ねているようだ。
「アヴァール、試合中、【強欲】がどうの言ってなかったか?」
「ん、【強欲】、使った」
「む、もう会得したのか⁉︎どんな力なんだ?」
エンヴィは控え室でウォーミングアップしてたから気づいてなかったらしく、とても驚いている。
「ん、本質、は、奪う、こと。
使って、わかった。カー、ス、スキル、は、何も、生まない。人と、して、何か、失う、気が、する。
・・・・・【強欲】の基本、は、欲し、た、物を、手に入れ、る、事が、メイン。
試合中、は、魔法、から、魔力を、奪った、り、足場を、作ったり、自分、の、スキル、レベル、を操作、したり、した」
「スキルレベルの操作ってのは具体的には?」
「ん・・・掻い、摘ん、で、説明す、る、と・・・・」
どうやらスキルのレベルを別のスキルに割りふったりするようだ。
例えば【土魔法LV2】と【水魔法LV1】なら、【土魔法LV1】と【水魔法LV2】みたいに。
ただ、スキルが成長するとレベルが上がりにくいのと同じで、割り振ったからといって絶対レベルが上がるわけじゃないみたいだ。
「それじゃあもう1つ、あのヴェラーネ・ヴェルチ選手と、なんかあったのか?」
「・・・・・そ、れに、ついて、も、説明、する」
俺とエンヴィはアヴァールの壮絶すぎる過去を教えてもらった。
「それはまた、なんとも言い難い」
どちらが悪いという様なものじゃない。
事故の様なものだ。避けようのない事だっただろうに。
「そうか?村人たちが悪いだろう。いくら称号が物騒だからって追い出す事はない」
まあ、孤児たちのあれだけ肩入れするエンヴィはそう言うだろうな。
とは言え、これでは後味が悪すぎる。なんとかしてやるか・・・・
「・・・・よし、じゃあ今日はこれでお開き!ちゃんと休めよ2人とも」
俺は2人と別れ、宿から出て行く。




