夏休みの中のトラブル
sideレイア
「ん・・・んんぅ・・・・・あ、さ?」
俺は目を覚ますと、いつもとは違うよくわからない感覚に襲われた。
昨日酒をのんだせいでの二日酔いではない。なにか・・・なにか、大切な事を忘れている気がする
「なんだっけ・・・・課題のやり忘れでもあったっけ?」
少しの間考えたが
「・・・・ま、いいや。それより速く着替えて挨拶して帰らないと」
俺はクローゼットの中から昨日着てきた服を取り出し、着替える。
時計を見ると朝の7:00、丁度良い時間だ。昔、まだ学校に通ってなく、城でアリシアとお泊まりした時はこの時間に起きていた。
俺は部屋を出て、執務室へ行く。執務室ならエンドルフ様も居る筈だ。不安なことなんてイリス様に会って変なこと言われる位だ。
少し歩いて執務室へ着くと、俺はノックをして返事を待つ
『だれだ?』
「レイア・ドライア・ナイトヴァンスです」
『おお、レイアか!丁度良い、入ってくれ』
「はい、失礼します」
中に入ると少なからず装飾の施された内装、少し古びた机、その机の向こう側に座ったエンドルフ様がややひきつった笑顔で居た。
エンドルフ様がひきつった笑顔をするときは大抵俺に頼み事があるときだ。
イリス様と違って普通の事しか頼んで来ないから俺としては別に問題ない。
「エンドルフ様、昨日の晩はご迷惑をお掛けしました」
「いやいや、気にするな。君と私の仲じゃないか」
「ありがとうございます。それでですね、夜も明けて丁度良い時間になったのでそろそろ帰ろうかと思います」
「も、もう帰るのか?・・・・い、今は大体7時頃だろう。そろそろ朝食の時間だ。
料理人も久々に君が居ると言う事で張り切っておる。折角だから食べていきなさい」
成る程、エンドルフ様はなんとかして俺を城に留めたい訳か。頼みがあるなら今すぐでも言ってくだされば良いのに。
「ありがとうございます。それではご馳走になります」
「う、うむ。時間になったら誰か向かわせる。それまでゆっくりしててくれ」
「はい、でしたら騎士団の方と訓練をして参ります」
「う、うむ。頑張ってきなさい」
と言うわけで俺は暫く騎士団で訓練することにした
『197!・・・198!・・・199!・・・200‼︎よし、一旦休憩だ‼︎』
「あ〜、終わったぁ」
これでランニングと素振り100、腕立て伏せ200回が終わった。そろそろ朝食の時間だろう
「副団長、そろそろ失礼させていただきます」
「え・・・ええ、分かりました。
それとレイアくん、私の事はアティと呼んでくださいと申し上げた筈ですよ」
ーおおっ、遂にレイアの奴副団長を落としたのか?
ーバカ野郎、もう随分前に落とされてんだよ!
ー遂にアティちゃんが勝負に出たってこったろ
ー畜生レイアの奴、甘酸っぱい青春送りやがって・・・・爆発しちまえ!!
騎士達のわさとらしい野次が聞こえるがいつも通りスルーだ。
「流石に公的な場所では呼びませんよ。それでは失礼します」
俺は汗を拭きながら王族用の食堂へ行く。
途中でアティさんの怒鳴り声が聞こえたのもいつも通りだ。少し声か上がっていたが。
そこは10人近く入れるちょっとした客室だ。
汗を拭きながら薄着で歩くと言う城の中では明らかに異質な格好をしているが、
昔は何時もこうだったから大して咎められない。
だからこの時は驚いた。
「おい貴様」
「??俺の事ですか?」
俺を呼び止めたのは真っ赤な髪に瞳孔の開いた目、獣人特有の耳と尻尾(この人のは狼だ)を持った13、4歳位の子供だった。
側には従者も控えているし、貴族かな?
「仮にも4大国家の王城をその様な格好で出歩くなど言語道断!今すぐ出て行け‼︎」
成る程、最近は少ないけど昔はこんなの居たな。
だが少年よ、おれはエンドルフ様直々の許可を頂いてるんだよ。
「それなら問題ありません。エンドルフ様直々の許可を頂いておりますので」
「ええい、そういう事を言っているのでは無い‼︎
その様な格好では只でさえ低い品位が下がると言っているのだ‼︎」
あぁ成る程、たまに居るよねこう言う貴族、こういう事言う奴に限って大して権限持ってないんだよ。
でも、今は急いでるんだ。
「申し訳ありませんが急いでいますので失礼させていただきます」
俺は返事を聞かずに走り出す。
「あ、おい‼まて平民‼!」
俺は平民じゃない。正式な貴族でも無いが。しかし言い返す時間も無く俺は部屋を目指した。
部屋へ着くと既にエンドルフ様とアリシアが居た
「お待たせしましたエンドルフ様、おはよう、アリシア」
「おはようレイア」
「うむ、全員集まった事だし、食事にしようかの」
全員?まだイリス様が来ていないが
「エンドルフ様、イリス様が来られておりませんが・・・・」
「あぁ、イリスは二日酔いで起きれないそうた。放っておいてやれ。明日になればピンピンしておる」
成る程、アリシアが二日酔いしてないのが驚きだ。いや、良く見るとかなり辛そうに眉をひそめている。
やっぱり頭痛か。
それから食事をして数分後、遂にエンドルフ様が話を切り出した。
「あー、レイアくん、君のその力、学力、権力、人間性を見込んで頼みがある」
「なんでしょうか?」
エンドルフ様は良い人で、国民思いの国王だ。内心とても尊敬している。
もし助けが出来るなら是非とも手伝いたい
「実は隣国の帝国から第3皇子が来ていてな。理由は我が国の王女、すなわちアリシアとの婚約だ。
そこで予め情報を集めたのだが、かなり酷いものでな。
実力は実力主義の国の皇子なだけあって13歳にしてレベル14だ。だが性格は権力と腕力に物言わせた暴君。
学力も高い訳ではなく人望も然程無い。種族は狼系の獣人で顔もそこそこ整っている。歳もアリシアと同じだ。
性格などを除く簡単なプロフィールなら文句はないが財政どころか交渉すら難しい男にアリシアをくれてやるつもりはない。
普段ならイリスの交渉術でどうにでもなるが今イリスは動けない。
そこでレイアくんにアリシアの婚約者をして貰いたいのだ」
・・・・つまり酷い皇子がアリシアを嫁に欲しがっている。
無論、そうするつもりはないがイリス様が二日酔いで追い払えないから俺に婚約者を演じて諦めて貰おうと言うわけか。
なんでイリス様はそんな事があるのに酒を大量に飲んだんだ・・・
「分かりました。アリシアの為、エンドルフ様の為にもその最低皇子を交渉によって追い払いましょう」
「うむ、頼んだぞ」
今日は帰るのが遅くなりそうだな




