↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切られた元聖女は、天才王子と魔獣共存計画を始めます!  作者: 青空一夏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/30

 夜が明ける頃には、森の中にも柔らかな朝日が差し込み始めていた。エリーゼは大きく伸びをすると、魔導収納バッグを開き、中からパンとソーセージ、それから林檎を一個取り出した。


「朝ご飯にしましょうか」


 声をかけると、ダイアウルフは嬉しそうに尻尾を揺らす。昨夜の焚き火に枯れ枝をくべると、赤く残っていた熾火がぱちぱちと音を立てて燃え上がる。細い枝を折り、ソーセージを刺して火にかざした。じゅうっと脂が弾け、香ばしい匂いが辺りへ広がる。その匂いに、ダイアウルフが期待したように尻尾を揺らす。


「ちょっと待ってね。ちゃんと炙ったほうがおいしいのよ」


 昨夜と同じように周辺の木から大きめの葉を一枚取って、その上に温めたパンとソーセージを載せて差し出すと、ダイアウルフは一度エリーゼを見上げてから、おいしそうに食べ始めた。ミルクもまだたっぷりあって、二人で喉を潤した。

 林檎も半分に割って分け合う。ダイアウルフは目を輝かせ、林檎を味わうように少しずつ食べていく。食べ終えたダイアウルフは、じっとエリーゼのお皿の林檎を見つめていた。


「……林檎が気に入ったの? そんなに凜々しい風貌なのに、食の好みがとても可愛いのね」

 エリーゼは笑いながら、魔導収納バッグからもう一つ林檎を取り出す。ダイアウルフへ差し出すと、彼の尻尾がぶんぶんと揺れた。

「ふふっ。わたくしも林檎が好物なのよ。あなたのように皮付きでかじるのを真似してみようかしら? あら、おいしい! こうして豪快に丸かじりをするのは、初めてよ」


 魔の森とは思えないほど鳥のさえずりは美しく、木々の間を吹き抜ける風も心地良い。食事を終えると、使った食器を水魔法で軽く洗い流す。最後に風魔法で水滴を払い魔導収納バッグへ戻した。


 これまでのエリーゼは、筆頭公爵家の令嬢として、王太子の婚約者として、そして聖女として、与えられた役目をおとなしく受け入れ、言われるがままにこなしてきた。今にして思えば、まるで誰かに操られる人形のような人生だった。


 けれど、これからは違う。

 誰かに決められた道ではなく、自分で選んだ道を歩きたい。

 自分が正しいと信じたことを、自分の意思でやり遂げたい。

 たとえ残された時間がわずかだとしても、もう二度と、自分の人生を誰かに委ねたくはなかった。


 荷物をまとめて歩き始めると、ダイアウルフも当然のように後ろをついてきた。                                            


「まあ……一緒にいてくれるの? ありがとう。とても心強いわ」

 

 話しかけると、小さく尻尾を振った。その姿に思わず笑みを浮かべながら、エリーゼは再び森の奥へと足を進めた。

 いつの間にか、ダイアウルフはエリーゼの少し前を歩き、ときおり立ち止まっては、辺りの匂いを確かめている。

 危険を感じるたびに耳をぴくりと動かし、周囲を見渡してから再び歩き出す。その姿はまるで森の案内人で、エリーゼを守っているようだった。

 木漏れ日が揺れる森の中を、ゆっくりと進んでいく。昨日は魔獣に襲われるのではないかと怯えてばかりだった。

 けれど今は違う。頼もしい相棒がいる。その安心感だけで、エリーゼの足取りはずいぶん軽くなっていた。

 やがて太陽が高く昇り、空腹を覚え始めた頃だった。急にダイアウルフが足を止める。耳を立て、鼻をひくひくと動かしたかと思うと、森の奥へ勢いよく駆け出していった。


「えっ、どうしたの? 待って、戻ってきて」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。