↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切られた元聖女は、天才王子と魔獣共存計画を始めます!  作者: 青空一夏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/55

47

おとなしくグレンヴィルの膝の上でデザートを食べさせてもらう。

 それから研究室へ戻り、その日の研究を終える頃には、窓の外はすっかり暗くなっていた。夕食の席でも、グレンヴィルの態度は相変わらずだった。隣にぴったりと座り、料理を取り分け、何かとエリーゼの世話を焼いた。

 食べ終わるとグレンヴィルは優しくエリーゼの髪を撫でながら言った。

「今日はもう休んだ方がいいよ」

「そうしますわ。さすがに少し疲れました」

(いろいろな意味でぐったりだわ……)

「部屋まで送るね」

「すぐそこですわよ?」

「送るよ」

「……はい」

 もう反論する気にもならなかった。

 食堂を出ると、グレンヴィルが手を差し出してくる。

 エリーゼも自然に、その手を取った。

 指と指が絡み合う。

 たった一日でこの温もりに慣れてしまった。

 並んで廊下を歩き、自室の前までやってきた。

「おやすみ、エリーゼ」

 そう言って、グレンヴィルが顔を寄せてくる。

 髪に、柔らかな唇の感触が落ちた。

「……」

 朝にもされたし、研究室でもされた。なんなら応接室でも廊下でも。

 それでも、これはまだ慣れない。

 エリーゼはどう反応していいかわからず、何も言えなかった。

 グレンヴィルは蜜のように甘く微笑む。

「じゃあ、また明日ね。いい夢を見てね。スノウもおやすみ、また明日な!」

「……お、おやすみなさいませ」

『うん、グレンヴィル。おやすみー』

 自室へ入り、扉を閉める。 

 途端に、エリーゼは扉へ背中を預けた。

「…………は、恥ずかしいぃ……」

 エリーゼは呟いた。


 明日もきっと甘やかされる。

 そう思うだけで胸のドキドキが止まらない。

 それに、昼間の出来事はあまりにも刺激が強すぎた。

 今夜は絶対に眠れそうにない。


 グレンヴィルとの甘い時間は、ずっと続いた。

 廊下を歩けば、いつの間にか手を繋がれる。

 研究室では気づけば隣にいる。

 食事をすれば、自分の皿から食べさせようとしてくる。 

 少し疲れた顔を見せただけで休めと言われ、髪を撫でられたり、腰を抱き寄せられたりすることも当たり前になっていた。


 今日も、グレンヴィルはエリーゼに呼びかける。

「エリーゼ」

「はい?」

 エリーゼは呼ばれてグレンヴィルの顔を見上げる。

「なんでもない。呼んでみただけ」

「……なんですの、それ?」

「だめ?」

 キラキラとした笑顔に、エリーゼは何も言えなくなってしまう。

「だめでは……ありませんけれど」

「よかった」

 そう言って、手を握られた。

 本当なら、こんなふうに手を握られていてはいけないのかもしれない。自分は仕事をするためにここへ来たのだし、グレンヴィルは上司なのだから。

 そう思うのに、その手を振りほどくことはできなかった。

 むしろ胸の奥には、花がほころぶような喜びがじんわりと広がっていく。


 それから数日後、エリーゼが研究室で術式の復習をしていると、扉を叩く音がした。 その日はグレンヴィルとスノウがグレートイーグルに乗って王都へ出かけており、研究室にはエリーゼ一人だけだった。

「レティシア様がいらっしゃっています。エリーゼさんに会いたがっていますけど、どうしますか?」

 顔を覗かせたバートンの言葉に、エリーゼは首を傾げた。

「レティシア様が?」

 叙爵式でのことを考えれば、会いたい相手ではない。けれど、一度きちんと話をつけておいた方がいいのかもしれない。

「会いますわ」

 ほどなくして、レティシアが研究室へ入ってきた。

「エリーゼ様、ごめんなさい」

 開口一番、レティシアは悲痛な表情を浮かべた。

「まさか……ジェイムズ殿下が、あんなことをするなんて思わなかったの」

「……本当に、何もご存じなかったのですか?」

「もちろんよ!」

「あの飲み物をわたくしに渡したのは、レティシア様ですわ。睡眠薬が入っていたとグレンヴィル殿下から聞きました」

「それは……ジェイムズ殿下から、エリーザ様に持っていってあげてほしいと頼まれただけなの。中に何か入っているなんて、わたくしは知らなかったわ」

「…………」

 エリーゼは黙ってレティシアを見つめた。とても信じる気にはなれない。だが、今さら問い詰めたところで、彼女が素直に真実を話すとも思えなかった。何より、もう関わりたくはない。

「……もう結構ですわ」

「エリーゼ様?」

「今回のことについて、これ以上レティシア様を責めるつもりはありません。ですが、もうお会いしたくありません。お話はそれだけです。お帰りください」

 エリーゼは静かに告げた。

 その瞬間、レティシアの顔から申し訳なさそうな表情が消えた。

「何よ、その態度! 被害者みたいな顔をしているけれど、悪いのはあなたでしょう!」

 突然声を荒らげられ、エリーゼは目を見開いた。

「何をおっしゃっているの?」

「あなたが泥棒猫のような真似をするからよ! 私とグレン様は婚約しているのよ。それなのに、あとから現れたあなたがあの方に取り入って……図々しいとは思わないの?」

 レティシアがエリーゼを睨みつける。

 エリーゼの表情が強張った。

「……婚約ですって? グレンヴィル殿下と……レティシア様が?」

 一瞬、何を言われたのかわからなかった。

「そうよ」

「そんなはずありませんわ。グレンヴィル殿下から、そのようなお話は一度も聞いておりません」

 エリーゼはすぐに否定した。

「あなたに言っていないだけでしょう? だったら、証拠を見せてあげる」

 レティシアは待ってましたとばかりに、持っていたバッグから一枚の書類を取り出した。

「ほら。これを見ても同じことが言える?」

「……これは?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。