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庭園に居合わせた者たちから悲鳴が上がり、辺りはたちまち騒然となった。
グレートイーグルが大きく翼を羽ばたかせて着地すると、巻き起こった風に木々の枝が激しく揺れる。
「騒がせてすまない。このグレートイーグルは危険じゃないから安心して。父上を呼んできてくれ」
その背からグレンヴィルが降り立つと、ようやく周囲から安堵の声が漏れた。グレンヴィルに声をかけられ、我に返った侍従の一人が慌ただしく宮殿へと駆けていく。
ほどなくして、トリスタン国王が庭園へ姿を現した。
周囲の者たちがいまだ落ち着かない様子を見せる中、国王だけはいつもと変わらぬ悠然とした足取りでこちらへ歩いてくる。
そして庭園に鎮座する巨大なグレートイーグルを見上げると、興味深そうに目を見開いた。
「グレンヴィル。そなたついに成功したのか……まさか本当に魔獣を支配するとは思わなかったぞ」
「違いますよ。支配ではなく、共存です。厨房から一番大きな魚をもらっていいですか?」
「魚? どういうことだ?」
「グレートイーグルへのご褒美ですよ。腹を空かせているから食べさせてやるんです」
「ふっ……なんとも……そんなことで言うことを聞いてくれるのか? 可愛いのぉ。運搬を頼めるなら物流が変わる。災害救助にも使える。ひとつ頼まれてくれるか? 先日の大雨で川が氾濫し、街道が寸断され孤立している村がある。食料と薬を届けてやってほしいのじゃ」
国王が侍従に命じると、ほどなくして厨房の者たちが大きな魚を運んできた。グレートイーグルは大きな嘴で魚をくわえると、嬉しそうに平らげていった。
「まあ、それはお気の毒だし、なんとかして差し上げたいですね。グレンヴィル殿下、助けてあげましょう」
「もちろんさ。スノウ、グレートイーグルに頼んでくれないか?」
スノウはグレートイーグルに話しかけ、その返事を伝える。
『仲間も呼びたいって。魚をもっとくれるのか、聞いてるよ』
「ああ。もちろん用意するよ」
スノウを通してその答えを聞くや否や、グレートイーグルは大きく翼を広げた。そして魔の森へと首を向ける。
――キィィィィィィ――――ッ!
空気を震わせるような甲高い声を上げた。その声は森の奥深くまで届いたのだろう。しばらくすると、遠くの空に黒い点がいくつも現れた。
「……あれは?」
エリーゼが目を凝らしているうちにも、黒い点はみるみる大きくなっていく。
一羽、二羽――いや、まだいる。巨大な翼を広げたグレートイーグルが、次々と魔の森から飛び立ってくる。
その数、およそ十羽。巨体が頭上を旋回すると、陽光が遮られ辺りが一瞬暗くなった。
「こんなに……」
エリーゼは呆然と空を見上げた。
やがてグレートイーグルたちは次々と地上へ舞い降りてきた。巨大な翼が風を生み出し、草木が激しく揺れた。
先ほどまで一羽しかいなかったはずの場所に、十羽ものグレートイーグルがずらりと並んでいる。その光景は、圧巻の一言だった。
その騒ぎに姿を現したのはジェイムズだった。
「なんてことだ、本当に魔獣を手なづけたのか? これはすごい……グレンヴィル、これがどんなに素晴らしいことかわかるか? トリストン王国は世界を支配できる」
「なに言ってるんだ? 魔獣を使って世界征服なんて冗談じゃない。俺はそんなことのために魔獣を使う気はないよ。きっと、父上だって同じ考えさ。そうですよね、父上」
「その通りだ。余はトリストン王国が豊かで民が幸せに暮らせるだけで良いと思っておる。ジェイムズよ、お前の考えは危険だ」
「父上もグレンヴィルも欲がなさ過ぎる。せっかく魔獣を使役できるのに共存なんて甘いことを……グレートイーグルにはどうやって命令しているんだ?」
「命令じゃない、お願いさ。お互い益があることを提案しあうだけだ。俺は背中に乗せてもらいここまで連れて来てもらった。代わりにグレートイーグルは大きな魚をもらう。単純なことさ」
「なるほど、魔獣の脳みそが小さくて安心したよ。戦で他国を攻め勝利したら魚を食わすだけでいいんだろ? そんなことで働いてくれるなら安いものだ。騎士を雇うよりよほど効率的じゃないか! グレンヴィル、お前は天才だよ」
ジェイムズは素晴らしい考えを思いついたとでもいうように、愉快そうに口角を上げた。




