↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切られた元聖女は、天才王子と魔獣共存計画を始めます!  作者: 青空一夏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/22

19

 しばらくすると複数の足音が聞こえ、煌びやかな服を纏った男性が現れた。両脇に近衛騎士が控えている。

 グレンヴィルと同じく銀髪に琥珀色の瞳だが、顔立ちは似ているようで受ける印象はがらりと違う。

 グレンヴィルは柔らかな雰囲気で優しく知的、ふとした仕草が色っぽく中性的な美麗さがある。

 一方、ジェイムズは凜々しいが、美しさはグレンヴィルに遠く及ばない。どこか神経質そうで傲慢な印象だった。


「やあ、弟よ。まだ魔獣と共存などという夢物語を追いかけているのか? いいかげん、諦めろよ」


 揶揄するような口調で、唇の端をつり上げた。


「今ちょうど突破口を見つけたところなんだ。邪魔しないでくれるかな」


 グレンヴィルは眉根に軽く皺を寄せ、シッシッと追い払うように手を振った。仲が良くないのは一目瞭然だ。


「突破口だって? ん? この女性は……ポワブール王国の聖女、エリーゼ嬢ではないか? なんでこんなところに。しかも隣にダイアウルフ?」


 エリーゼは自分のことが知られていることに青ざめた。


「昨日から、エリーゼはここの研究員になったんだよ。このダイアウルフはスノウで彼女の友だち。エリーゼ、こちらは俺の兄、第一王子のジェイムズ。こうしてたまに研究所へ来ては嫌みを言って帰るんだ。気にしなくていいからね」


「気にしなくてって……そういうわけにはまいりません。トリストン王国の誇り、白銀の獅子たるジェイムズ第一王子殿下にご挨拶申し上げます。ところで……なぜ、わたくしのことを知っていらっしゃるのですか?」


「友だち? ……ダイアウルフを手なづけたのか。流石は聖女様だな。なぜ知っているかって……ポワブール王国とは一応友好国だからね。去年のあちらの建国祭に父上の代理で出席したのは私だ。その時、フランシス王太子の隣に君はいたな? 確か彼と婚約もしていたはずだが……なぜこんな所にいるんだい?」

 

 面白がっているような視線が痛い。エリーゼの指先が冷たくなり微かに震えた。


「わ、わたくしは……そのぉ」

 エリーゼは口ごもり、それ以上言うべき言葉が見つからなかった。気まずい沈黙が流れた。見かねたグレンヴィルが声をかける。


「エリーゼ。言いたくないことは言わなくて良い。兄上も失礼だろう? 彼女にはきっといろいろな事情がある。誰にも踏み込む権利なんてないよ」

 

 グレンヴィルはわずかに目を細め、兄を制するような視線を向けた。


「ああ、まあそうだな。エリーゼ嬢、失礼した。謝るよ」


「ということで、もう帰ってくれよ。父上は俺の提案を受け入れて、魔獣の討伐を三年間保留にしてくれた。その間に、俺は共存が可能だって証明する。兄上につきまとわれるのはうんざりだ」


「ああ、父上は甘いからな。だが、俺が即位したら魔獣なんて一掃してやる。あいつらはこの世に存在してはいかんのだ」


「そんなことはありませんわ! 魔獣にだって生きる権利はあります。この世界は人間だけのものではありません」

 

 エリーゼは思わず二人の会話に割り込んだ。


「ふーん。……やはり聖女様の心は、優しく清らかなのですね。ところで、こんな研究所などにいないで、私のところにいらっしゃいませんか? 実は私には婚約者がまだいません。ぜひエリーゼ嬢を妃に迎え……」


 いきなり腕をぎゅっと掴まれ、エリーゼはぞくりと背筋が寒くなる。先ほどグレンヴィルに触れられた時とは、まるで違う嫌悪感だった。すると、研究室の空気が、ぴんと張り詰めた。ひやり、と頬を撫でる冷気に思わずエリーゼは息を呑む。床や机の縁が白く曇り、ガラス器具の表面には薄い霜が広がっていた。


「……兄上」

 静かな声だった。だが、低く抑えた声音には隠しきれない怒気が滲んでいる。琥珀色の瞳は笑っていない。

「その手を放せ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。