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美しすぎる男性はその容姿とは裏腹に、人懐っこい笑みを浮かべ、とんでもなく親しげに誘ってきたのだった。
(しゃべると残念なタイプなのね……話し方が軽薄だわ。これで本当に貴族なのかしら?)
エリーゼは思わず顔を顰めたのだった。
「わたくし、先を急ぐので失礼します。夢の世界には行きませんわ」
エリーゼはすぐさま断ると、グレンヴィルの前を通り過ぎようとした。スノウもちらりとグレンヴィルに視線を向けたが、そのままエリーゼに続く。
「えっ!? 待って。そのダイアウルフって、君の後をついていくんだけど。どういうこと? なんで? このグレートイーグルといい、そのダイアウルフといい、君ってすごい聖女様だよね。お願い、俺の夢を手伝ってよ。君みたいに魔獣と仲良くなりたいんだ!」
グレンヴィルは、瞳を輝かせてエリーゼを見つめた。
「夢の世界って、魔獣に関係するのですか?」
エリーゼは振り返って、グレンヴィルを胡散臭そうに見つめた。
(フランシス殿下も顔が良かったし、口がうまかったわ。この人はフランシス殿下よりもずっと顔が良いし、口もうまそう……なにか嫌な予感がするわ。関わり合いになりたくないのだけれど)
「魔獣は討伐するしかない。世間ではそう考えられているだろう? だが俺は、ずっとそうは思えなかったんだよね」
「どういう意味ですか?」
「魔獣は凶暴だから、殺すしかない。誰もがそう言う。だが、その凶暴性が本当に生まれつきのものなのか、それとも人間に危害を加えられてきた結果なのか。あるいは、言葉が通じないために、人間と魔獣が互いを敵だと思い込んでいるだけなのか。それすら、これまで誰も確かめようとはしなかった 」
グレンヴィルは途端に真面目な口調で語り出す。そして、おとなしくなったグレートイーグルへそっと手を伸ばしたが、警告するような鋭い声が返ってきた。
「攻撃性はなくなったけど、警戒心はバリバリだな。君ならグレートイーグルの羽ぐらい撫でられるかな?」
グレンヴィルは少し残念そうに眉を下げ、それでも諦めきれない様子でエリーゼを見た。
「さぁ、どうでしょう。グレートイーグルさん、怖がらないで……」
エリーゼは恐る恐るグレートイーグルへ一歩近づいた。後ろにいたスノウも横に並び、一緒に前へ進みながら一声吠えた。
グレートイーグルはエリーゼとダイアウルフを交互に見つめながら首を傾げる。
「ほんの少しだけ……羽に触ってもいい? 嫌がることは絶対しないわ」
ゆっくりと手を差し出し、大きな羽に触る。そっと撫でると、固そうに見えた羽毛は意外にも柔らかく、グレートイーグルは気持ちよさそうに目を細めた。
「えっ!? 本当に、撫でてる!? ちょっと待って! そんな反応、初めて見た!」
グレンヴィルはさきほど手にしていた薄くて四角い物体に向かって、今日の日時とグレートイーグルの反応をいきなり話し出した。不思議そうに見つめるエリーゼに、隣にいた騎士が説明する。
「殿下はトリストン王国が誇る魔導具開発者なんですよ。ちなみにあの薄くて四角いものは声や音をそのまま記録する魔導具です。遠い場所にいてもあれを持っていれば話すこともできる優れ物でして。なにしろ、うちの殿下は天才なんです!」
騎士の口調は誇らしげだ。
「え? あんなに薄くて四角いものが? ……初めて見ました。それに……殿下?」
「ああ、うん。トリストン王国の第二王子をやってるから一応、殿下って呼ばれてる。しかし、君はもともと、魔獣に好かれやすい体質なのかもね。羨ましいなぁ。このようにおとなしい魔獣は、殺す必要もないよね? もし攻撃性を抑えられ穏やかな性格に変わるなら、人と魔獣は争わなくても済む。そう思わない?」
エリーゼは思わず息を呑んだ。
(……この方は思ったよりずっと優秀で真面目なのかも!?)




