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「なんの音……?」
エリーゼは音のする方へ駆け出した。木々の隙間から様子をうかがうと、開けた場所で三人の人影が巨大な魔獣と対峙していた。翼を広げれば荷馬車ほどもある巨体。
鋭い鉤爪と嘴を持つ、大鷲型の魔獣――グレートイーグルだ。
グレートイーグルは三人の頭上を旋回しながら、何度も威嚇するような鳴き声を上げている。
二人の騎士は剣を抜いていたものの、攻撃する様子はない。中央にいる白衣姿の男を庇うように立ち、グレートイーグルが急降下してくるたびに、その進路を阻んでいた。
男は薄くて四角いものを手にしている。そこから何やら規則的な音が響いていた。グレートイーグルを見上げながら、何度も手元のそれに触れている。医師か研究者のように見えた。しかし男の銀髪に気づいた瞬間、エリーゼは平民ではないと悟る。
この世界では、平民の多くは茶色の髪と瞳を持ち、金髪や銀髪といった色は貴族に多い。水色の髪にアクアマリンの瞳を持つエリーゼのように、さらに珍しい色となれば、ごく限られた家系にしか現れなかった。
「こんなところに貴族がいる……? まさかフランシス殿下が送りこんできた追っ手? そんなわけないわよね」
それ以上考えている暇はなかった。
グレートイーグルが鋭い爪を広げ、白衣の男へ向かって一直線に急降下したからだ。
「危ない!」
エリーゼは反射的に両手を前へ。
「浄化! ――ピュリファイ」
白い光が一直線に伸びていき、グレートイーグルに放たれる。荒れ狂っていた魔力がゆっくりと静まり始めた。赤く濁っていた瞳から険しさが薄れ、激しく羽ばたいていた翼の動きも次第に穏やかになっていった。
魔獣は鳴きながら空中で旋回し、ちょうど白衣の男とエリーゼの前に着地した。
さらに浄化を続けようとしたその時、光が弱まり魔力が途切れてしまう。スノウの時と同じで中途半端で力尽きてしまい、どうしたものかと戸惑っていると、グレートイーグルは先ほどまでとは別の生き物のようにおとなしくなっていた。警戒するように周囲を見回すだけで、もう襲いかかってくる様子はない。
エリーゼは思わず目を瞬かせた。ポワブール王国では、浄化によって攻撃性が弱まった魔獣は、すぐさま魔獣討伐騎士団によって始末されていた。
そのため、浄化を途中で止めた魔獣が、その後どうなるのかをじっくり観察したことなどない。こうして穏やかになった姿を見るのは、スノウに続いて二度目だった。
白衣の男はエリーゼに駆け寄り、賞賛の声を上げる。
銀髪は木漏れ日を受けてきらきらと輝き、琥珀色の瞳は悪戯っぽく細められている。その整った顔立ちは、思わず見惚れてしまうほど美しい。
(なんて綺麗な人なの……)
「素晴らしいよ! ブラボー! 魔獣の攻撃性だけを鎮める浄化魔法なんて、素敵すぎる。俺はグレンヴィル。ところで、光魔法が使える君は……聖女様だよね?……森の向こうはポワブール王国だから、そこの聖女様? なぜ一人でこんな魔の森にいるのさ? ま、そんなことはいいか……ところで、こうして会えたのも運命だよね? 俺と一緒に夢の世界に行かない?」
「……はい?」
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