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ヒグレのクニ  作者: L
三章 コグマ―のあつまれ!つぎはぎの森
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ゲームタイム②


ゲームをダウンロードしていく。


「ハンドルネーム?なにそれ?」


レイにとって、それはあまり聞き馴染みのあるものではなかった。

少なくとも高校生活のなかで、ハンドルネームというものが必要になる機会はなかったのだ。

「うん、ネット上での名前みたいなものかな。【穴掘りモグラ】とかまさにそれでしょ?みんな偽名を使うの」

「名前ねぇ……」


自分自身の中で咀嚼する。

なるほど。

確かに本名でやる必要はない。

あえて名前をつけて、匿名という仮面で楽しんでいるのか。

だが、あまりこういったものに触れてきたことはない。

どのようなものをつかえばいいのだろうか。

「ゲストでも遊べるけど、アカウントは作っといた方がいいよ。信用されやすいし。なにより蹴られない」


彼女の語る言葉には説得力があった。

数多のオンラインゲームを通ってきた経験だろう。


「いままでどんなゲームしてきたの?」

「…………いえないぐらいには」


やめよう、なんか地雷な気がする。


「ぷそ煮とかってわかる?メイプルとか」

「煮?メイプル?」

「やっぱいいや!!」


逆に気になるだろうが。

一体彼女は何を通ってきたのだろうか。

「ソノは?」

「sonarって名前でやってる」


うーん、判断しづらい。

英単語ひとつってやっぱり無難なのかな。


「……僕の名前はなににしよう」


中々思いつかない。

ネーミングセンスなんて自分にはあると思えない。

白さんの名前でも借りるか?

ホワイト?

うーん、単純。

安直すぎる。


「ソノがきめてくれるかな?よくわからないや」

「じゃあ【†エンドレスゼロ†】さんにしよう」

「待て」


いくら自分でもそれはまずいとわかる。

あれだな。

右手がうずくてきな。


「……え?」


にやにやしている顔が、画面越しで伝わる。

こいつ、確信犯だ。


「わざとやってる?」

「うん」


声が弾んでいる。


「うんじゃないんだよなぁ」

「その名前にする?」

「いやだ」

「なにっ」


ぴこーんと通知音がなる。

ゲームのダウンロードが完了したようだ。


「ダウンロードが完了ってでたけど」

「おっ、早いねぇ。まぁ三人制のfpsだからそんなに固くならないでね。カジュアルマッチだし。みやこはそんな切れるひとじゃないから」

「へぇ……まぁ、ソノに任せるよ。あまり口ださないようにする」

「うんうん、基本的に意図的な不愉快な言動でなければいいよ。わたしが援護するから!」

「ははっ……まぁ頼りにするね。ソノ」

「……っぅ。うん!頼りにしてね」


ゲームのダウンロードが終わると、画面にはログイン画面が表示された。


「おっ、できたね」


先ほどの時間で、登録したアカウントを入力する。

名前は「ZERO」。

まぁ、ソノと似たようなものだ。

本名にゆかりのあるものを微妙に取り入れただけの英単語。

いくらでも誤魔化しようがある。


「じゃあフレンド登録するから、このID検索して」


ソノから送られてきた文字列を入力すると、アッシュグレーの狼のアイコンが表示される。


「これがソノ?」

「ソノダヨー」

「いや知ってる」


思わず吹き出すと、ソノは小さく笑った。


「招待送るね」


通知を開くと、そのままロビーへ移動する。

そこにはもう一人、小柄な少女のアバターが立っていた。


「この子がみやこ。わたしのゲーム友達」

「はじめまして、ゼロです」


少し緊張しながら挨拶する。

心臓バクバクだ。

オンラインなのに、なぜか高揚感がある。


「よろしくー。ソナから話は聞いてるよ。初心者なんだって?」


ボイスチェンジャーをつかったノイズの入った声。

だがどこか穏やかな声に肩の力が抜ける。


「うん。今日は操作も怪しいと思う」

「大丈夫大丈夫。カジュアルだし、最初は撃たれて覚えるゲームだから」

「ひどい説明だなぁ」

「事実だもん」


笑うソノにつられて、レイも苦笑する。


「じゃ、三人そろったし行こっか。わたしが援護するから、ゼロは好きに動いて」

「了解。……頼りにするよ、ソナー」


一瞬だけ息をのむ気配。


「……うん!」


少し弾んだ返事とともに、三人の最初のマッチが始まった。


マッチが始まると、三人は近未来的な街へ降り立った。

耳元では銃声と爆発音が途切れることなく響いた。

レイは思わず身を縮める。


「うぉ……なんか酔うな」

「うわー初心―。かわいいーゼロきゅーん」


ボイスチェンジャー越しだが、その人物が心からそう思っていることが伝わった。


「ゼロ、焦らなくていいよ。わたしの後ろついてきて」


ソノの声に導かれるまま路地を進む。

角を曲がった瞬間、敵の姿が視界をよぎった。


「いたっ!」


赤い輪郭が一瞬だけ壁の向こうに見えた。

慌ててマウスを動かす。

しかし、敵ではなく天井に向かって弾をばら撒いていた。


「大丈夫、初めてはみんなそんなもんだって」


その直後、ソノが軽やかに敵を倒し、みやこが援護射撃を重ねる。

息の合った二人の連携に圧倒されながら、レイは深く息を吸った。

もう一度ライフルを構える。


「っ!!?」


後ろからの攻撃に気が付かなかった。

あっという間に、hpバーが削れる。


「落ち着いて、ドーム張る」


何もない場所に、半透明の壁が展開された


「バッテリー使用して、十字キーおせばいいから」


結果は、惨敗。

なんかよくわからないうちに、死んでいた。


「あちゃー、まぁしかたないねぇ。これも醍醐味よ」

「ゼロくん、今の動きは百点中三点!」

「低い!」


ぼろぼろじゃないか。


「でも初戦なら百点!」

「一緒にやってて楽しければいいの」


うん、意味が分からない部分は多々あったが楽しい。

チームワークや連携。

これらの部分は、ヒグレのクニでの戦いと共通するかもしれない。


「うーん、落ち着くためにちょっと休憩するか。最初のマッチして疲れたでしょ?」

「あー、そうだ。今日はみやこにききたいことがあったんだ」

「うんうん、なにかなー?」

「【穴掘りモグラ】ってどんな人だった?」


今回の本題。

ようやく本筋にはいった。

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