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第九十六話 少女の違和感と試合開始 

お楽しみください

 氷壁の砦と三日後六対六の試合をすることを決定したライ達。その間に、オデガ山脈及びフェレス王国領、北砦付近で大した問題もなく日数は過ぎていった。


 そして、試合の前夜。ライ自身も知らない二人だけの密会というべき会話がされていた。密会といっても決して何かを策略するというわけではなく、ある一人の少女とある一人の精霊がただ会話をしただけなのだ。


 少女の名はティア。この少女の正式な名前はティアリスというのだが、周りがティアとしか呼ばなく、それが影響してかティアリスと呼ばれない。別にそのことに本人は不満を覚えていない。


 対してもう一人である一人?の精霊というのはライと一蓮托生といっても過言ではないエスティア。


 昔ならばライが持っているエスティアの宿ともいえるべき白帝の宝玉が無ければ、自由にライの傍を離れられない。しかし、レーシアの風帝の宝玉の力を取り込んだことによりある程度自由に動けるようになったのだ。だからこの前も作戦でライと離れることができた。


 よって、現在ティアとエスティアがいる天幕にはライはおらず、他の仲間も一人もいない。


 そんな中、思わぬ客にティアは話しかけた。


 「こんな時間に一体どうしたの?」


 本当に純粋にティアは質問した。本当ならばもうみんな寝ている時間。警戒する兵以外はほとんどが寝ているだろう。


 質問を投げられたエスティアだったが、エスティアは苦笑をしつつ返事を返す。


 「その言葉は貴方にも当てはまるのだけどね。まあ、私が訪ねたんだから私から言いましょうか。……明日の試合のこともあるから単刀直入にいうけど、ティア、貴方何を迷っているの?」


 「え?」


 ティアには言葉の意味がわからなかった。その様子に、ため息をつきつつエスティアは質問を続ける。


 「意味が分からないって顔をされたらこちらとしても困るのだけど。そうね、ならこういえば分かるかしら。貴方、三日前フィルの前で一言も喋らなかったでしょ?それはなぜ?」


 そこでようやくティアはエスティアが何を言いたいのか悟る。エスティアは表情の変化を見て言いたいことが伝わったことを感じ取る。


 「どうやら質問の意味にはたどり着いたみたいね。それで?貴方は何を迷っている、または感じているの?」


 ティアは質問を問いかけられ眉をひそめる。ここで質問に対する返答をしてもいいものか、そして、それがライ達に伝わらないのかを心配したのだ。しかし、それを先回りしてエスティアが言う。


 「ああ、ここには私個人の意思で来たからライ達も私がここにいることは知らないわ。だから今日のことが他の人にもれることは無い。少なくとも私からわね。後は貴方が私を信じられるかどうかなのだけれど……」


 そう問いかけられてティアはもう一度考え、体の力を少し抜く。このまま話さないこともできる。でも、話さないで状況が悪くなることは避けなければならない。それになにより、私や他の仲間は信用できる。悪くなりかければ助けてくれるだろう。


 ティアは結論を出してからそっと顔を上げてエスティアを見た。それから、ポツポツと話し始める。


 「……実はね、三日前のことでちょっと色々と気がついて」


 「ライのことね」


 「うん」


 ティアとしては少しだけ、驚く。ティアがライのことだと言ったが、エスティアには決して動揺も無い。どちらかというと予想していたという感じだ。


 「それで、貴方は何に気がついたの?」


 「えっとね、以前私達がガリアント平原前に話し合ったことがあったでしょ?ライが宝玉を使った時に記憶が無くなっていくと」


 「ええ、そうね。それで?」


 「でも半年後に再開したとき、ライは今度は理性が薄くなる、または記憶の前は凶暴性が前に出てきた」


 「そうね」


 「だけど、今現在、ライはまた宝玉の力を使うにあたって別の症状が出てると思ったの」


 エスティアは内心へぇと思う。ティアの言ったことは実は正しい。ライにはまた別の症状が出始めている。しかし、それはライ自身まだ気がついておらずエスティア以外誰も知らないと思っていたからだ。


 「間違ってたらそれでいいんだけど、なんだかライ意識が私達を条件に変化している気がして」


 「意識が貴方達を条件にって言葉が少し難しいわね」


 「自分でも違和感でしか感じてないの。でもね、ライって前までは国に対して弓を引いた人物には容赦をしなかったときがあったでしょ?でもその根本的な理由は王家に忠誠を誓っただけではなく、エミルのことを守るためでもあったと思う」


 けどね、とティアは続ける。


 「もしそうならば、今王家には敵がいることになりエミルが国盾の砦にいる。ならライのあの……豹変する意識はどこに出るんだろうと。もしかしたらエミルだけではなく私達の誰か、大切な人たちが傷ついたらあのライが出てくるんじゃないのかって。それでライが無茶して傷つくんじゃないのかって……」


 「ティア、貴方少しおかしなことを言ってるわよ?誰でも大切な人を傷つかれれば怒るわ」


 「うん、そうなんだけど、なんと言うかライが感じる傷つけたという基準が今はとても範囲が曖昧というか」


 ティアが必死に考え言葉を選んでいるが、エスティアはようやくなぜこのことを言っているのか察する。


 おそらく三日前ティアが赤い悪魔といわれ、ライが怒ったことにあるのだろう。今回氷壁の砦と共闘することになり、作戦には必要な相手。なれば無用な火種は無いほうがいい。にもかかわらずライは喧嘩を売るようなことを言った。幸いダンデという団長も良心的な人物だったので決裂することにならなかったが、おそらくその原因となったティアが責任を感じ、またライの考え方、沸点というべきものが低いことに気がついたのだ。


「……そうね、貴方の言いたいことはなんとなく分かるわ」


 一度エスティアは首肯する。しかし


 「でもそれがどうかしたの?」


 「……え?」


 ティアが想像しなかった言葉をエスティアは言う。


 「私はさっきも言ったけど大切な人を傷つけられれば人は怒るわ。逆にライが傷つけば貴方やリエル、あの王女も怒るでしょう。そしてそれは人として当たり前のこと。何かおかしいの?」


 「そうだけど!」


 「まあ、だけど今回貴方が切欠で試合が実現したのも事実。そのことで罪悪感があるのかもしれない。だけど、貴方は別のことをもっと考えるべきよ」


 「別のこと……?」


 「ええ、明日の試合のことよ」


 「……」


 試合といわれてまた余計なことを考えて黙り込んでしまうティア。


 (どうしたものかしらねぇ)


 本当ならば、元気付けるのが正解なのかもしれない。ティアが言ったとおりライの中で再び変化が起こっていることを告げることもありだろう。しかし、今はまだ一人に打ち明けるわけにもいかない。告げるとしたら他の仲間も集まったとき、少なくとももう一つ宝玉を手に入れたときに言うべきこと。


 なので、エスティアが選んだ選択は


 「ちなみに、貴方は罪悪感を感じているようだけどこれは結構いい方向に向かってるのよ?」


 罪悪感を薄れさせつつ、意識を逸らすことを選んだ。


 「どういうこと?」


 「結果的に貴方が切欠となったけど、この試合は必要なことなの。結束、力量をみるとか以外にね」


 「なぜ?」


 「理由は近くにいるかもしれない間諜に油断をさせるため。ジュアン帝国から来た傭兵団、しかしフェレス王国の組織と上手くいっていないと分かれば、相手はそこを突いてい来るでしょう。けどそれは逆にこちらから反撃できる口実でもあるの。その間諜が今回のことを知らせるために変な動きをすれば捉えることができる。そうすれば危険が少なくなる」


 「……けど、私が手加減や迷いを見せれば」


 「ええ、これがやらせではないのかと思われる。そうすれば、間諜が動かないかもしれない。だから貴方が今できることは明日のために寝て英気を養うことよ」


 ここで一度言葉を切ってエスティアは笑みを浮かべながら言った。


 「大丈夫、今回のことが終われば私が色々と上手く動いてあげるから安心しなさい。心配事やライのことも話してあげる。だから今は目の前の戦いに意識を向けなさいな」


 そういうと、ティアは少しだけ納得がいかないような表情をしていたが、しばらくして笑みを浮かべた。


 「……うん!そうだね、まずは目の前のことをどうにかしないと!……でも、終わったら話してね?」


 「ええいいわよ。だから眠りなさいな」


 「分かったよ!よーし!明日はかつぞぉ!」


 そういうティアを見つつエスティアは苦笑をしながら姿を消した。明らかに空元気のようにも見えたが、気合を入れていたのは本当だと思ったから。あれ以上自分がいれば再び色々と考えてしまうと思ったから、何も言わずにひいたのだ。


 そして、エスティアは自分の主に聞こえてもいないだろうが呟く。


 (この子や他の子達からも心配されているだなんて、幸せ者ね。さすが私の主様というべきかしら?)


 エスティアの問いに返事は返ってこない。しかし、エスティアは気にせずに天幕の外に出て空を見上げていた。



 空には満点の星空が広がり、とても幻想的な光景を映し出しているのであった。


 それから数刻後月は隠れ、東から太陽が昇る。


 すると徐々に兵士が起きてきて朝食をとり、その後は各部隊の持ち場に行き指令を聞いてからそれぞれの仕事をする……のがいつもの一日。


 しかし、今日は朝食が終わり各部隊の持ち場に行くまでは同じだが、最小限の警戒部隊を除いて陣から少し離れた場所に行く。


 ここで今から六人と六人の戦いが始まるのだ。


 遠めに見ている兵士達を見ながら国盾の砦陣営の代表者、ライ、ティア、リエル、ラッシュ、ラン、レーシアが陣から見て左側に、右側には氷壁の砦傭兵団の代表者、先頭にダンデ、その後ろに男四人に女性一人が立っていた。


 その二つの陣営の中心に今回の中立者、そして審判であるフィルがたち両者を確認して、兵士たちにも聞こえるぐらいの声を出す。


 「ではこれから、二つの陣営、国盾の砦と氷壁の砦による親善試合をします!氷壁の砦は三日前に来られましたが、仲間なのです!ですから行き過ぎた言動には注意してください!」


 兵士に無方言葉に誰も反論が無かったことを確認し再び声を張り上げる。


 「これから、親善試合のルールを言います!ルールは一対一の代表戦です!それを二つの陣営が六人ずつ出し合います!勝敗の判定は相手に参ったを言わせるか、または一撃入れるかです。ですが、これはあくまで親善試合、致死性の攻撃はなしです!」


 ここまでは二つの陣営はすでに聞いており兵士たちも納得いくものだった。


 だが、これからは明朝にライが付け加えたこと主に氷壁の砦のほうを見つつ言う。


 「そして、今日の朝に国盾の砦今回の代表者であるライ・ジュリアール軍師から提案がありました。こちらには強力な魔法道具がある。それを使って戦うかを氷壁の砦の方々にそれぞれ決めてほしいと。これは両者が合同したことではないので正確にはまだ了承されてません。ですが、どちらを選んでも不利益が無いと判断し、今言いました。ダンデ団長、いかがでしょうか?」


 フィルはダンデ団長に聞くと頷く。


 「別にかまわぬよ。噂の赤……あーいや。歴戦の相手なのだから切り札を持っていてもおかしくない。こちらも個人で選ぶようにしよう。だが!そちらもこちらが魔法を使うか選んでもらう。それならばお互いに合意して納得できるだろう」


 ダンデは噂の赤い悪魔、銀色の死神という単語を口にしようとした。しかし、それはなんとか思いとどまることに成功する。実はあの後、一緒にライとのやり取りを聞いてたとある女性、今回氷壁の砦唯一の一人の女性がダンデを責めたのだ。それも猛烈に。


 最初はライという人物に対して憤慨していたが、よくよくその女性の言を聞いて自分が思慮を欠いていたということに気がついた。本当ならすぐにでも謝ればいいのだろうが……しかし、この戦いは別。切欠はなんであれ必要なこと。なれば、終わった後に謝罪をするべきであると。


 ダンデがまた口を滑らそうとしたときに氷壁の砦メンバーである女性が自分の武器を握り、魔法を発動させようかということは誰も感づかれていないのであった。


 「ということですが、ライ軍師いかがですか?」


 「かまわないよ、それでいこう」


 「わかりました、では許可が出ましたので以上のことをルールに追加します!では早速第一試合の代表者は前に出てきてください!」


 フィルが代表者を促すと氷壁の砦からは前進を鎧に固め、強大な槍を持ち誰がどうもても大男という風体の男がでてきた。槍は人の二倍以上はあろうかという長さで太さは丸太を連想させる。振りぬかれた槍を食らえば、絶命するということを簡単に連想させる武器であった。


 対して国盾の砦、ライ達の陣営からは


 「おう、なら早速俺が言ってくるぜ?」

 

 そういってライ達の中で一番腕力があるラッシュが前に出る。すでに武器は持っており昔からの愛用品であるハルバートであった。


 二人の代表者がフィルのそばまでやってくると、フィルが告げる。


 「では、二人とも私が立会人になるので希望を言ってください。魔法はありなのかなしなのかを」


 すると最初に意見を言うのはラッシュだ。


 「俺のほうは魔法ありでもかまわねえよ。戦場で魔法が無ければと言い訳できるはずもねえからな」


 それに同意するように氷結のメンバーである大男も頷く。


 「ああぞうだなー。ごっじもそれでいいぞぉ~」


 初めて口を開いた大男は田舎出身なのか訛が強かったが気にしないようにフィルは頷いた。


 「では……両者とも魔法ありの戦いを望みました!よって攻撃手段は自由です!なので周りの皆さんは自己責任で身を守ってください!」


 それだけ言うとフィルもここにいては危ないと感じ安全な場所、ライ達の場所に行く。


 それから戦いの開始を告げた。


 「でわはじめてください!」


 開始宣言の言葉に見物人である兵士たちは歓声を上げるのであった。


 

こんばんわ。ようやく更新できました。ぎりぎりで申し訳ない。

久しぶりに三日ぶりに家に帰ってくることができて更新しております。今の感じだと三日おきになっていますが、目処がついたら感覚を短くしますのでご了承ください。

ではまた次にお会いしましょう!

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