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第八十八話 合流

 追っ手を撃退したライとリエルは二人エミル達が走り抜けた先を追いかけお馬を走らせていた。時刻は三刻たった頃、途中途中の村や町に寄りつつ目的地へと向かっていたがようやく到着した。


 目的の場所というのが孤児院ではなくローレンス領の外れにある小さな村であった。


 村の名前はタージュ村。


 人口は百と小さく商人もあまりいない。だからこそ落ち合うに適した場所になる。


 村の中に入っていくととある一角に五頭の馬が並んでいた。予想通りティアたちは先についていたらしい。ただ、落ち合うはずの相手であるキャサリン達が見当たらないのでまだ来ていないのだろうと見当をつけた。


 「リエル、まずは俺らもあそこに馬をつけようか。それからどこにいるか探そう」


 「(コク)」


 返事の変わりに頷いたのを確認したライは馬を繋ぎ止めると、近くにいた村人にここに来た人物たちがどこにいるかを質問した。すると、村人はここから少し歩いたところに歩いていったと説明を受ける。それを聞いてライはおそらく追っ手がこの村に来ても大丈夫なように、念のため姿を眩ませたということだろう。馬があるのは味方であるキャサリンかライにここにいるということを伝える為だ。


 話を聞いたライは村人に聞いた方角に歩き始めて後ろにリエルがついてくる。そしてしばらく歩くと森とは打って変わり、一つの家と拓けた広場が目の前に現れた。家の前には一人の女の子が座っており、それがティアと分かったのはすぐであった。


 ティアもライの姿を見るとすぐに近づいてくる。


 「ライ!大丈夫だった?」


 「ああ、といっても俺は何もしていないんだけどね。リエルが一発で敵を全員倒しちゃったよ」


 「一発で?」


 この半年ティアと同様リエルも修練を積んでいることは知っていた。時々お互いの魔法をぶつけ合い、確認や訓練もしたのだからリエルの魔法威力も知っている。


 だからこそ一発で倒したことに驚きを隠せなかったのだ。


 「ライが何かした」


 そこでリエルが細く説明を一言で言ってくる。間違ってはいないだろうが、実際に倒したのはライの魔法ではなくリエルの魔法なのでどっちも正解であるのだ。


 ティアはなにやらライが手伝って、結果的にリエルが行動して成果を挙げたのだろうと推測する。まさか魔法力を上げて半分の力で五十人以上の敵を馬もろとも一蹴したなど考え付かないだろう。


 「それよりもエミル達は?」


 「あ、うん。エミルは今あの家の中にいるよ。あとすでにキャサリン先生も到着してるけど……ライ、やっぱり思い付きだったんだねこのこと」


 「まあね、二日前に思いついたことだし」


 「先生すっごく不機嫌でレーシアがオロオロしてたよ」


 「あー、やっぱり怒ってる?」


 「行動を承認してくれたから怒ってはないはずだよ……多分」


 「……なんだか会いたくなくなってきたなぁ」


 「そんなわけにはいかないでしょ。リエル、ライが逃げないように見張ってね?」


 「わかった」


 リエルはそう言われてライのすぐ真後ろに張り付く。


 その様子を見ながらライは苦笑した。


 「別に逃げたりはしないよ。第三機関を認めさせたのは俺なんだし発案も自分、なら言ったことに責任を取らなければならないのは当たり前だよ。だからもしキャサリンに怒られてもそれは甘んじて受けるしかない」


 王の前で言ったように国盾の砦は一万以上の構成員がいるのだ。それを二日で納得させるなどよほどの負担が掛かったはず。それも寝ずにやっても間に合わないかもしれない。そんなことをやってくれたのだから、批判は甘んじて受けようと思う。


 「じゃあ早速会おうか」


 そういってライは家の扉に立ち扉を開けた。


 「「「「「…………」」」」」


 そして先ほどの決意が早くも揺らぎ始める。


 別に今は雨も降っていないし、天気もよく追手がいるとしても差しあたってすぐ近くに危機が迫っているわけでもない。でもこの部屋の中の空気は士気が底辺に落ち、重く、気まずいものだ。下手したら家の中に赤い雨が降るのではないかと思えるぐらいに。


 その原因と思える空気を出しているのが中央にいる二人、キャサリンとエミルであった。


 扉が開かれランとユレイヌ、レーシアはライの姿を見るとどこかほっとした視線を向けてきた。どうやら何とかしてくれると思ったのかもしれない。


 でも勘弁こうむりたい。何とかしたくても、何とかできない気がしてならない。


 室内の状況を把握できずにいると、中央の二人もどうやら気がついたようだ。テーブルを挟んで座っている二人は視線を向けてライの姿を確認すると、なぜか少しだけ空気が軽くなったような気がする。


 そんなことに戸惑いを浮かべているとまず話しかけてきたのはエミルだった。


 「ライ、遅かったな。追手のほうはもう大丈夫だったのか?」


 「あ、ああ。追手はリエルの魔法で一蹴してくれたよ。どちらとも怪我はないしね」


 今のところは。と心の中で付け加えとく。この後怪我をさせられる可能性があったからだ。


 心の声が聞こえないエミルは満足そうに笑みを浮かべて頷く。


 「それはよいことだ。しかし、兄上が仕掛けてきたのならそこら辺のゴロツキを派遣したとは思えぬ。それを一蹴したのか?リエルにそれほど高威力魔法を使えるとは」


 「ライが何かした」


 ティアが質問したときと同じ用にリエルが答える。


 「何かした?」


 「あーうん。このことも今度話すからまずはもっと別のことを話そう」


 今はライが何をしてどうやってリエルが撃退したかという用件より、これからのことを話すが重要なのだ。それとライは自然にキャサリンのほうに話を持っていけたと内心、安堵しつつキャサリンに話しかけた。


 「キャサリン、それで国盾の砦はどうなったの?」


 ライが質問するとキャサリンは少し不機嫌そうにしつつも答えてくれる。


 「結論から言うと、貴方が言ったとおり全構成員に伝えたわ、遠風の書を利用してね。さすがに隣国に潜入している人には二日では伝えられていないから、それは各部署が追って連絡を入れるはず」


 「そうか、さすがキャサリン先生。たった二日でやってくれるとは」


 「やってくれるといいつつ二日でやらなければならなかったんでしょ?最初に聞いた、第三機関として国王に認めさせてしかもそこに王族であるエミル王女を組み込むと聞いたときは、いい案だとは思ったわよ。でもね、まさか一万の兵士で四万者兵士を相手にするなんて馬鹿げてると思うわよ?……って普通だったら言うんでしょうね」


 キャサリンは不機嫌顔をやめニヤリとした表情を浮かべた。どうやら ライがどうやってするかも察しはついているようだった。


 「見当はついているようだけど、成功すると思う?」


 「成功するではなく成功させるでしょ?あと、手段によるけど成功確立は高いわ。その後に影響があるかもしれないけど、近隣の町や村も侵略されるよりはマシだろうね」


 「なら一ヶ月持つと思う?」


 「それは条件にもよるだろう。一度も仕掛けないというなら無理だな。だがこちらが仕掛けるならば大丈夫だろう」


 「やっぱり無理はしないといけないか」


 「ライ君。それよりも一体誰が行くかが気になるんだけど?まさかライ君自身が良くとか言わないよね?」


 「え、いや、俺が行くつもりだけど」


 「却下」


 「いや」


 「却下」


 「話し聞いてくれない?一応理由はあるからさ」

 

 「……話だけ」


 「エスティア」


 「はいはい、私が説明すればいいのね?」


 「頼むよ」


 ライの呼びかけにエスティアが出てくる。そして、説明するためにキャサリンのほうを向いた。


 「貴方に説明をするのもいいのだけどその前に、周りが着いていないからまずは内容も説明しながら答えても良いかしら?」


 「ええ、それは構わないわ。今回は全員が動くことになると思うし」


 「そ、ありがとう。それでライとキャサリン。それ以外の人たちはどのくらいまでわかっているの?……って答えなくて良いわ。表情を見えれば判るから」


 全員が判っていないことを確認してエスティアは説明を始めた。


 「ならまずは状況を確認しましょうか。まず私たちは北おジュアン帝国約四万の敵を一ヶ月遅らせることになる。これはさっききいていたのだから判るわね?」


 周りが頷く。


 「それでライとキャサリンが話していたのはどうやって止めるかということ。手段をこれから話そうとしていたのよ」


 「ねえティア。一万で四万の兵を止めるってできるの?」


 ここでティアが手を上げつつ質問してくる。


 「そうね、戦うではなく相手をするという意味だったらできるわ」


 「意味って違うの?」


 「ええ、ライが言ったけど相手にするじゃなくて足止めするのが私たちの目的になるの。さてここで問題、私たちはどうやれば止めることができると思うかしら?」


 「え、えっと。奇襲する?」


 「奇襲ね。確かにその方法もあるわね。本来少数の軍が大軍に勝つ定石として。けど相手もそれは警戒するでしょうね。しかも四万相手なら仮に一万無力化できても四万を無力化できないはず」


 「うーん」


 「他の人はわからないかしら?」


 周りに聞いてみるとエミルが言葉を発する。


 「……相手にするのではなく相手を止めるということは何かしらの事情で進軍できなくするということであろう」


 「エミル正解。それで作戦を実行するために数人には動いてもらうし、軍を率いて妨害活動もしてもらう。ただ、戦うのではなく妨害を趣旨をしてね。で、ここでキャサリンの質問に戻るのだけれど、なぜライが行かなければならないのか。それは私がいるからね」



 「あなたが?」


 「ええ、私は相手が持っている宝玉の位置が最近わかるようになってきたの。おそらく風の宝玉の力を譲渡したから。だから相手がいつ、どの場所から来るかを予想できるというわけ」


 キャサリンは無言で考える。キャサリンたちの構成員はもちろんジュアン帝国に潜りこんでおり、情報を逐一報告してはくる。


 しかし、もし見抜けなかった場合などはあってはならないこと。


 「話はわかったけど、それは必ずしもライ君がいなくても良いわよね?例えば私が貴方を連れて行けば」


 「確かにその方法もあるかもしれないわ。けど、その場合ライは魔法をまったく使えなくなるのよ?白帝の壁を使うことはできるけど宝玉が無くなるから強度も落ちる。その間に何かあったらどうするつもり?キャサリン、貴方が考えていることはわかるわ。でもね、あまり過保護すぎるのもどうかと思うわよ?ライはもう大人だわ」


 「……」


 「あと言わせてもらうけど、先ほどは可能性といったけれど私はライ以外の人に使われるつもりはないわ。私が仕える主はライ・ジュリアールただ一人なのだから」


 有無を言わさないほどの眼光をこめてキャサリンに言い放つと、キャサリンは瞳を受け止め一度だけため息をつける。


 「はぁ、まあそっか。この子の父親とは違うんだものね。それにもう事態は人一人ではなく国という規模になったのだから、贅沢はいえないか」


 「そういうことよ。安心して頂戴?私がいる限りライに指一本触れさせないから」


 「なにいってんのよ。魔法を使うのはライでしょうが」


 「さて、私は心意気をいったまでよ」


 ライは二人の会話を聞いてどうやらエスティアがキャサリンの説得に成功したようだ。


 ならば後はやることをみんなに説明しそのために詳細を詰めていけばいいだろう。


 「ティア達は二人の内容を聞いてやることがまだわかっていないだろうから俺が伝えるよ」


 全員がライのほうを見て頷いた。


 「俺らはまず北の国境付近の山脈地帯へと移動する。敵が来ると思われる可能性がある街道は二つ。けどおそらく一つに絞られるからそこで待機する」


 「どちらか判るものなのか?」


 エミルが聞いてくる。


 「ああ、一応もう一つのほうも保険として部隊を置くつもりだけど、ほぼ北西に近い街道から来るよ。もう一つの北東の街道はフェレス王国の他にアスティールとも面している。そのアスティールはまだ軍事行動をしていないんだ。だからジュアン帝国としてはアスティールとは離れており、おそらく条約を結んでいるドリアド王国方面から進行してくると思うよ」


 「なるほどな。そこで北のふもとに兵を配置、敵が撤去作業するのを妨害するのだな?そうすると、行動を起すのはティアかライになるわけだが生存確率が高くなるのはライだな」


 「うん、そういうこと。でもティアを連れて行こうとも考えてるんだ。あることも試したいからね。というかいつから気がついてたの?」


 「気がついていたというか難なくだな。以後に影響を及ぼすというのと、北国、山脈と聞かせれば四万の相手をするのにどうするかは想像がつく」



 「だよね。ならこれからそれぞれの役割を話すから。ティア達も良いね。これから俺らがやるのは重要なことだから」


 全員がまだ内容がわかっていないと思い、ライは最後にこれから起す事象の説明をした。


 「山脈の街道を雪崩で潰し、相手を足止めする」


 この作戦はたった一人、または二人の動きが肝心で準備も必要だ。敵が今この瞬間動いたら終わりだろう。だから時間との勝負となる。


 だからだろう、結局ライの頭からは抜けていた。なぜエミルとキャサリンが言い争っていたのかを。この内容を知るものはライ以外の全員だったが、それをこの場で話す者は誰もいなかったのであった。

また期間が開いてしまいました申し訳ない。

また今日も出かけないといけないのでこれから行ってきます。


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