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第八十五話 王都脱出戦 (エミルとの再会、前夜編)

お楽しみください

 ライ達が到着して二日、作戦決行時刻である夜になったとき静かにライ達は行動を開始した。


 まず最初に向かった場所は王城に続く門だ。ここの王城は例外を除いて正面から立ち入るしかない。理由は簡単、暗殺者や密偵を城内に入れないようにするため。また他国から攻められたとしても城門の一箇所だけに兵力を集中できれば用意に攻め込まれないのだ。


 そして今回は正面から入ることにした。例外である方法をライならば達成できるが他の者ができないからだ。


 ライ達は城門の前に進み堂等と姿を現した。


 姿を確認した衛兵二人がこちらに近づいてくる。


 「そこの者達、こんな時間に王城へ何用だ?急用時以外の場合ここを通ることはできないが」


 一人が聞いてきて、もう一人の兵士は槍を向けてくる。


 すると集団の中からティアとリエルが前に進んだ。


 「私は第十三大隊、土帝部隊所属のティアリス・フロレンス。この子はリエル・シュリエル。同じく第十三大隊所属 水帝部隊所属だよ」


 二人が告げると顔をしっかりと確かめ、質問してきた衛兵は頷く。この国でラッシュ、リエル、ティアはライほどではないにしろ有名人であった。それもそのはず、敵将を撃ちまた戦場でもその容姿と戦いの美しさから兵士達の中で絶大の人気を誇る。


 一部ではライと只ならぬ仲ではと思っていたが、今ライが行方不明なために自分達にも可能性がと考えている不届きものもいる。


 そんなやからが出るほどの人気を誇っている二人を衛兵達も知っているのだ。


 「確かにそのようですね。ですがお二人はなぜこのような時間にここに?それに後ろの二人は……」


 「うん、実は最近噂になっている西の襲撃を撃退している二人を連れてきたんだ。エミル王女様がもし連れてきたならば夜でも構わないから来るようにと」


 「エミル王女様が……」


 そう呟いて兵士は後ろの二人を見る。

 

 一人は綺麗な緑色の髪を後ろで結って馬の尻尾みたいな髪型をしている少女だ。ティアやリエルにも引けをとらない愛くるしさである。

  

 確か噂では男女二人組みで西で活躍しているという噂を耳にはしていた。それに有名人であるティアやリエルが西に向かっていったことも知っているので辻褄は合っている。


 「そうですか、ですがもう一人のそこのフードを被っている人物はどなたなんでしょうか。顔を見ることはできませんか?」


 「いやー、それはちょっと本人の希望であまり見てほしくないって事なんだけど……」


 「それならお通しできません。素性も知れぬ者を入れることはできませぬので。いくらティアリス様やリエル様のお願いだったとしても」


 「んー……ちょっと待ってね。あの、ということなんですけどこの二人にだけ素顔を見せてもダメでしょうか?中に入れないとなると私としても任務を受けた身、ちょっと困るんですが」


 フードの人物はライなので本来なら丁寧に言わくてもいい。しかし、二人は西で活躍しエミル王女が連れてくるように言った人物なので客人という扱いになる。だから演技のためにティアは丁寧に接しているのだ。


 「なっ!素顔を見せないのも約束に入っていたはずなの!これでは条件違反なの!」


 そこですかさずレーミアが反論する。それに対してティアが困ったような表情をした。


 「そうなんですよね……」


 ティアはそういいつつフードのほうを見るとフードの人物はレーシアに近づき何かを言う。それをレーシアが渋々という表情を見せて頷く。


 「……わかったなの。だけど表情を見せたら他の人には見せないようにするなの」


 それを聞いてティアは衛兵のほうに向き直る。


 「ということです。見てもらって結構ですよ」


 「……分かりました」


 衛兵は内心対応を失敗したと思っていた。実はエミル王女は現在謎の病で部屋から出られない状態で誰にも一月の間会えていない。会えたとしても王女つきのメイドだ。だから衛兵は正体不明の人物ならば通せないということを押し通し帰らせようとした。


 しかし、意外なことにフードの人物が了承したために顔を見るしかなくなる。


 衛兵は考えを切り替え見た後に事情を話して帰らせるかと考える。そうすれば明日来たということを伝え、どのような人物であったかを上司に言えば良いだろう。


 「なら拝見する」

 

 そういって兵士はフードの男に近づき顔を覗き込んだ瞬間


 「ひっ!?」


 思わず引きつった声が出ていた。


 それもそのはず、覗き込んだ男の顔は土が水分を失った土地のようにひび割れでこぼこになっており、一言で言えば醜悪であったのだ。もしこの男がフードを被らずにここに近づいてきたら問答無用で槍を突き出していたかもしれない。


 「ちょっとその反応は失礼すぎるよ。後で上に報告してもいいかな」


 不機嫌そうにそして怒気を含めた口調でティアは覗き込んだ衛兵に言う。それもそうだろう。王族が呼んだ人物に対して失礼な態度をとったのだ。これでは上級階級も毎日通る城門を守る番兵として失格といえる態度で報告されれば左遷もありえる。


 「も、申し訳ありません!」


 慌てて番兵は頭を下げて謝る。


 それを見届けてからティアは言った。


 「それで中には入れてもらえるの?」


 「あ、いえ、それが……」


 「……なに?もしかしてここまでさせておいて入れないとか言わないよね?」


 怒気を孕んだ声と視線を向けられ冷や汗を流す衛兵は事情を話すことにする。


 「い、いえ。その、王都に到着されたティアリス様たちはご存じないかもしれませんが、現在エミル王女様は謎の病に掛かり面会謝絶状態でして……」


 「へぇ、なのに試すようにしてこちらの方に無理を言った挙句、会えないと。最初から事情を話していればよかったのに」


 ティアがいうと、隣で大人しくしていたリエルも怒気をはらんだ視線を向ける。有名人に目をつけられれ衛兵は生きた心地がしなかった。

 

 しかし衛兵にとってそこに救いの女神が現れた。


 「どうされたのですか?」


 王城内から一人のメイドが近づいてきたのだ。普段ならばメイドが話しかけてくることに不振をまず持たなければならないが、その人物がもっともメイドで地位が高い王族つきのメイドならば疑うことはない。そして早くこの場から開放されたい気持ちも相まって、王女と一緒でなぜ軟禁状態であるメイドがここにいるかなんて、判断できなかったようだ。


 「お、おお。貴方は確かエミル王女殿下のメイドではないか。実は王女に面会を求めている人物達が着ているのだが、ステイル王子が命令を下し面会謝絶状態になっている。だからそのことを説明しているのだが」


 すらすらと説明してこのメイドにも同意を得ることで諦めさせようと衛兵は考えたのだ。


 「ああ、もしかして西から来られたという方ですか?確かリエル様とティア様が向かったという。もしかしてそこにお二人はいるのですか?」


 予想とは違う返答に衛兵は困りながらも近づいてきたメイドは城門に近づきティア姿を確認する。


 「やはりそうですか。ならこの方達は私が責任を持って案内させていただきます」


 「で、ですが!」


 「貴方様が言ったように現在エミル様が病に伏しておられます。それをいち早く気がついたエミル様自身が、ご命令されたのです。自分の病を治すことができるかもしれない人物なので連れてくるようにと。そして村を助けまわることに恩賞を授けたいと」


 「お、王女殿下がですか?」


 「はい、ですから彼らは西で活躍した人物とともにエミル様の治療を買ってくれた人物なのです。……まさかと思いますがここまで説明を聞いて追い返すという選択肢はあるはずありませんわよね?彼らが治療する術を持っているのにもし今夜にでもエミル様の様態が急変した場合責任は取っていただけるのですか?」


 鋭い視線を送るメイド。それに何も言えなくなってしまった衛兵達であった。王族の死に大して責任など自分だけではなく一族もろとも死罪でも許されることはないかもしれない。


 「さて、それでは案内をしたいと思いますので皆様こちらに。よろしいですよね?」


 最後の止めといわんばかりに言うと、衛兵はおずおずと下がりティアたちを王城の中に入れた。


 そして、メイドの後ろを付いていき城門からしばらく離れた場所に行くと、フードを被っていたライはフードを取り素顔をさらす。そして顔を洗うように手で表面を撫でると土がぼろぼろと落ちていき本来の素顔が下から出てきたのであった。


 ライはティア以上の有名人であるために顔が割れている。そのために土帝の力を使って肌に土を付け表面を覆ったのだ。よく見れば土であることに気がつくが辺りは夜であり、しかもフードを被っていたために暗く見にくい。それに加え、顔が恐ろしいまたは醜いものだったら人はよく見るどころかすぐに離れてしまうのだ。


 「ふぅ、何とか入れたみたいだね。助かったよユレイヌさん」


 前を行くメイド、ユレイヌは笑みを浮かべながら返事を返す。


 「いえいえ、私としてはただ普通に話していただけですわ。私のしたことなどランに連絡を貰ってから城門に行くだけのことでしたから」


 そうやってなんでもないように言うユレイヌ。


 「いや、あれは何でもないことないよユレイヌさん。だって見てて衛兵の人が可哀想になったもん。それだけ迫力があったよ」


 ティアが感想を言うとユレイヌはニコリと笑いつつ何も言わない。それを見てティアは絶対にユレイヌを怒らせないようにしようと誓うのであった。


 そのまましばらく歩いている間にライはユレイヌに状況を聞く。


 「それでユレイヌ、現在の状況はどうなってる?二日前にランに聞いた話だとステイル王子の厳命でエミルは動けない様子ってのは聞いたけど。あと何かエミルがジギル国王に手紙を渡したって」


 「まず状況ですが、ライ様の仰られたとおりエミル様は部屋からこの一月ほど出ておられません。理由は感染の恐れがあるからとステイル王子が言ったからです。次にエミル様が国王陛下に送ったのは間違いありません。内容はわかりませんが」


 「そうか」


 まあ、内容は本人に聞いて確認すれば良いか。こちらもあることを説明するつもりだし。


 そう思い王城の中を歩いているとついに目的地であるエミルの部屋に到着する。


 だが奇妙なことに事前に聞いていた部屋の前にいるはずの見張りが一人もいない。ユレイヌがその視線の意味を汲み取り説明した。


 「彼らには交代を告げました。ランが見張りをすると。最初は渋っていましたがエミル王女直々に頼んだ腕のある護衛だと兵士達の前で証明したら快く交代してくれましたよ」


 「ちなみに証明方法は?」


 ライが聞くとユレイヌはニコリとするだけで答えない。おそらく衛兵達は恐怖を刻み込まれたに違いなかった。


 ユレイヌが壁に向かって話しかける。


 「エミル様、西で活動していたお二人をティア様、リエル様がお連れしました。中に通しても構いませんでしょうか?」


 「ああ、問題ないぞ」


 どこに監視があるか分からないため、一応形式上の応答をしてライはユレイヌが開けてくれた扉を潜り中へと入る。


 するとそこには半年以上も前に分かれた少女がそこにはいた。

 

 全員がすぐに中に入るとユレイヌが最後に扉を閉める。


 「ラン、引き続き誰かが着たらすぐに知らせてちょうだい。警戒は任せるわよ?」


 「わかりました」


 すると影の中から声が聞こえ、気配がなくなる。


 それからユレイヌが正面を向くと、そこでは


 「ば、馬鹿者!一体何をしておったのだ、こんな半年以上も連絡を取らずに……っ!」


 王女の仮面ではなく歳相応の少女がおり、目に涙を少しだけ溜めていた。ユレイヌも色々といいたいことがあったが、今は二人の再会を邪魔する気にはなれない。


 

 ライは正面から馬鹿といわれるが、苦笑しつつ返事を返す。


 「それについてはごめん。…ただいま」


 そういうと、ようやく目の前にいる人物が本物のライだと実感できたのか安堵するエミル。次々と出る涙を裾で拭い、涙が止まるまでしばらく掛かった。その間誰も何も言わない。ティアとリエルも最初に会ったときに同じような思いをしたから。レーシアに至ってはライが重症を負い村に運ばれ、意識を戻したとき同じような経験をしていたから。だから目の前の王女と呼ばれる人物が、ライに対してあの時の自分と変わらない安堵を覚えていると思ったから。


 ユレイヌがそっと近づきエミルを椅子に座らせるとようやく涙は止まったのかエミルは正面を向いた。

その目は赤く濡れていたが誰もそれには指摘しない。


 「さて……ライには色々言ってやりたいし、ティアやリエル、ランにも労いをそこにいるレーシアという者とも話をしたいが時間がない。だからそれは王都を抜け出してから言わせて貰おう。して、これからどのように脱出するのだライ?」


 質問をされたライは頷いてこれからの説明をする。内容は昼にティア達に話した内容だ。ランに先に伝えてもらう方法もあったが、これは万が一に誰かに聞かれたら危険なので伝えていない。


 そして、今はじめて二日前とは異なることをしようしているライの話を聞いてエミルとユレイヌは驚きを隠せなかった。


 でも最後まで聞いたエミルは悪戯を思いついたような、楽しい悪戯の共謀に誘われたような笑みを浮かべつつ言う。


 「相変わらず面白いことを考える。だがその作戦にもう少し修正しても構わぬか?大胆にすればもっと兄上……いや、ステイルの鼻を明かせるであろうよ」


 「一体何を?」


 「それはだな」


 それから今度はエミルの考えを聞くことになるがライはその提案に顔を顰める。


 「確かにそれをすれば効果というか、ステイル王子の勢力を削ぐことはできるかもしれない。……でもさ、それをすれば下手したら辛い事になるよ?」


 「構わぬ。ライ、私は王族だ。王族にとって辛い事とは民を守れなかったとき、自分の力が無力と分かったときだ。自分が辛い目に会う事で少しでも民が救われる道があるのならば、私はその道を進もう。そにれ……辛いときには騎士であるお主が助けてくれるんであろう?もう勝手にいなくなったりはしないのであろう?」


 確認するように言ってくるエミルにライは頷く。


 「勝手にいなくなったりはしないよ。もうティア達とも約束したしね。この作戦も本当は一人でやるつもりだったけどその約束を守った結果五人で行動することになったんだし」


 エミルが確認するようにティア達を見るとティア達は頷いた。


 本当のようだと確認できたエミルは頷く。

 


 それを確認したライは今度のことを告げた。


 「なら行動は朝と昼の中間ほどにしよう。そうすれば証人も沢山集まっているだろうし」


 「うむ、それでよい」


 「だけど問題がここで一つ」


 「む?何か問題があるのか?」


 「俺達はどこで寝ようっていうね」


 そうなのだ。本当はすぐにいなくつもりだったが、計画が変わったためにどこで一夜を過ごすか考えていないのだ。さすがに王女の部屋で寝るのもまずい。いつステイル王子が来るかも分からずランにずっと張り詰めた警護を頼んでしまったら、明日いざというとき全力を出せないはずだ。


 「それは問題ありませんわ」


 だが以外にも問題ないと告げるユレイヌ。


 「この向かいの場所にメイドや執事が夜の番で寝るところがあり、六人分のベッドがあるのです。本来なら他にも数人いるのですが現在病の噂のせいもあって私しか使ってません。なので自由にお使いください」


 そうニコリと笑みを浮かべながらライに告げる。


 とここで気がついた。城門前で出会ったときから時々このような笑みを浮かべるが、目元が笑っていないことに。しかも、その笑顔を向けるときはほとんどライに向けられていることを。


 確実に怒っているということを。


 「あー……俺はちょっと外の様子でも」


 ガシッ!


 「心配なさらずともいいですよ?ランがしばらく見てくれていますので。それにもし見られても困りますわよね?さて、では皆様行きましょうか。エミル様、色々とライ様に言いたいことがおありでしょうが、今日はご自重ください。その代わり私めが今日は担当いたしますので」


 ライは掴まれた腕を見つつ周りを見ると、全員が目線を逸らすかニヤニヤ笑っている!


 「大丈夫ですよ明日は重要な日。そんな時間は取らせませんからさて行きましょうか。ライ様?」


 そういって案内という名の連行をされていくライ。


 明日になればエミルとライの名前と顔は今まで以上に知れ渡ることになり、歴史にも決して小さくない影響を及ぼす事件が起こる前夜。


 なのにまったく緊張感がライ達にはなかった。


 連行されていくライの姿をエミルは笑顔を浮かべながら見る。再び、いや。ついに肩を並べて戦うことができると明日に思いを馳せて。

……最初に申し上げます。

申し訳ありませんでした!

次回予告では作戦を実行したものを書くと書いていましたが、それが一つ先延ばしになりました。

文字数も普段より多いことからお分かりいただけるように、次回に書く事件?はこの国で少なくない影響を及ぼすことになります。

そんなのを三千文字で終わらすなんてもったいないと思い、新たに話を増やしました。

本当に申し訳ありません。

今回は謝罪しつつもこの辺で失礼します。

ではまた明日お会いしましょう。

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