第七十六話 仲間の葛藤、条件
「ということがあったの。それからライ達は村を襲う賊と戦いながら探していたの。どうすればいいのかを」
「……それでエスティアさん。お兄ちゃんはその方法を見つけられたのですか?」
「それは……」
エスティアは黙ってしまう。その無言が答えになってしまっていた。
ここで、ライが説明を替わるように言い始める。
「フィルの質問に対しては結局見つけられなかった。だから俺はまず手がかりを探そうとしつつ、あるもを集めようとしたんだ」
「あるもの?」
ティアが尋ねるとライは頷く。
「ああ、集めようとしたのは他の宝玉や魔法道具だよ。ただ宝玉は集められなかったんだけどね。雷はステイル王子。残りに三つは判らずじまいさ。でも一つ以上のありかは予想がついてる」
「あら、それはどこなのか教えていただけませんか?」
「もちろん教えるよリューミルさん。予想としては隣の国、西の先にあるドリアド王国」
「なぜそう思うのです?」
「よく考えてみてよ。俺達はガリアント平原で大きな戦いを起した。北のエンリデンヌとローレンス砦でもだ。もしリューミルさんがフェレス王国を侵略しようとしたら内乱が起きているうちに攻めたりしませんか?」
「確かにそうかもしれませんが、当時第三師団は西と東の防備を固めていたと聞きますわ」
「うん、それは聞いたよ。でもさ、問題はそこではなくてこちらが慌てているときに攻めてこなかったのに、なぜ今頃になってアドリア王国がちょっかいを出してきた勝手ところが問題なんだ。ガリアント平原の戦いは知られていてしかも俺とイウル伯爵が使った大魔法は聞いているはず。にもかかわらず攻勢に出てきたということは、強大な魔法に対して対抗策を持ち出せたということだ。たとえば同じ宝玉を持ったとかね」
「ライ様が言う手がかりとはそういうことなのですわね」
「まあ、エスティアがさっき無言になったのはこれが確証がなかったからだよ。ということで、俺はこれからも王都に戻れないしもう少し宝玉のありかを探すつもりだ」
はっきり言うと誰も何も言わなくなる。
(本当はエスティアが言わなかったことは別のことがあったんだけど、この情報はまだ伝えないほうがいい。仮に伝えたとしても混乱を招くだけなのだから)
それを確認してライはその場の話し合いを終わらせるように仕切り始めた。
「ならそろそろ話し合いを終わりにしようか。約束どおり別れた後の話はしたんだ。皆がここに来たのは賊が襲ってくるって聞いてだろ?そして、おそらくその賊は西のドリアド王国が組織して送り込んできた嫌がらせって言うことにも気がついているはず。なら早く動かないといけないだろうしね」
そういってライは席を立ち上がり部屋から出て行こうとした。しかしそこで止める声が二つあった。
「まてよ」「待ってください」
止めたこては今まで何も言わなかったラッシュとフィルだ。他にも何かを言うとしたのか口をもごもごしている者もいたが、結局何も言わなかった。
ライは二人を見ると、同時に声を出した二人は互いに視線を交わし最初にフィルが言い始める。どうやらラッシュの用件は後でいいらしい。
「お兄ちゃん。少し聞きたいことがあるんですがいいですね」
「ああどうぞ」
「お兄ちゃんは西からドリアド王国が攻めてくると予想しているんですよね?」
「そうだよ」
「なるほど分かりました。ならそれを確認した上で聞きます。なぜ、お兄ちゃんはなぜこのアトイン村にいるんですか?」
「もちろん賊から守るためだよ」
「それは知っています。でもお兄ちゃん。昔私たちがした物資を運ぶ運搬方法の改善方法を話し合ったのを覚えていますか?物をそれぞれ要所に配置すればすぐに移動させられると」
「言ってたね。それをフィルは実際にしたとも聞いた」
「はい、ですがそれには膨大な準備期間が必要でした。物資を置く場所や運搬するための馬や馬車の調達、商人たちの伝手をたどるなどを」
「……」
ここでライはようやくフィルが言いたいことを察する。どうやらライはフィルという女の子をどこかで見くびっていたみたいだ。さすが、あの孤児院で一緒に過ごした仲ということか。
「……どうやら何を言いたいか察してくれたようですね」
「ね、ねえフィル。私にも分かりやすく説明してくれないかな?」
「いいですよティアさん。私が言いたいことはこの町になぜ賊がやってくるのを知っていたのかを聞いてるんです」
「え?ライは急いで来て戦ったんじゃないの?」
「急いできたなら住民の人のためにあのような大掛かりな罠をすぐに配置できますか?それに今まで襲撃されていたのは南の地域。なのにこの襲撃だけ北西であった。にもかかわらず早くついていた理由はなぜだと思います?」
「そ、それは」
「簡単です。おそらく予想がついたから。そして、送ってきている国も知っているから。おそらくドリアド王国ともう一つ」
「フィルよすんだ。今はまだ聞かせるわけにはいかない」
「……わかりました。ならこの話はまたで良いです。だけどその代わりもう一つのことを教えてください。なぜたった二人だけで防ごうと思ったんですか?匿名でお城に言うなりはお兄ちゃんもできたはず。ばれるのが心配ならせめて私に頼ってほしかった。組織の話はしたんです。でもなぜ連絡を取ってくれなかったのですか?」
「匿名でもいずれは正体を知られる可能性があったから。フィルを頼れなかったのは、王国の息が掛かっているかもしれなかったからかな。フィルのことは信用しているし信頼もしている。でも他の人は知らないんだよ俺は」
この言葉にフィルは何かを言いかけて、しかしやめる。エスティアが宝玉をライが使い罪悪感という感情が薄れたとは聞いていたが、兄と慕う人物は今また別のやっかいな病気を持っていることに気がついた。
いわゆる、疑心暗鬼。
おそらくライには人を信じられないのだ。近しいものだけしか。リューネリスで別れた私たちやリューミルさんとかは信頼をすでにしていたから問題はなくても、新たに出会った人に心が開けない状態。
けどしょうがないかもしれない。だって、この人は今までエミル王女の為とはいえ国のためあの大戦を戦ってきた。なのに、国の象徴というべき王族がまさかの謀反を起したのだ。何を信じれば良いのか分からなくなったみたいだ。
だからそんな状態のライになんと言えばいいのかフィルは言葉が出なかった。
けれどこんな時に先ほど話を譲ったラッシュがいう。
「なあライ。お前人が信用できなくなったのか?」
「……」
「まあ無言でかまわねえよ。それが答えってえこった。そっちも色々とあったんだからそのことには何もいわねえ。けどな俺は別のことでムカついてんだよ」
「別のことか」
「ああ、お前が他人を信じられなくなったのかもしれない。だがな、ここにいる数人もそうだがライ、俺達もお前のことがわからねえんだよ。最初に王都で出会ったときこの先退屈はしないと心が躍った。リエルもお前をしたいティア、フィルもお前さんを慕ってたよ。でもなあの夜、置いていかれたことでもしかして好意を持っていたのは俺達だけなのかって少なくとも俺は考えた。そこの所はどうなんだ?本当に俺達なんてどうでもいいやつらだったのか?」
ラッシュが鋭い視線をしながらいうとライは
「絶対にそんなことはない!」
激しい怒号と共に否定した。今まで声を荒げなかったライがはじめて声を荒げたのだ。周りは静かになり、ライはようやく自分の失態に気がつき立ち上がっていた体を椅子に降ろし深呼吸してからラッシュに返事をする。
「……もう一度言う。絶対にどうでも良いとは思ってない」
「そうか。嘘偽りはないな?」
「このことには命を懸けてもいい」
「なるほどな。ならライ一つ聞くがお前さんは今話を終わらして立ち上がったが、どこに行こうとしたんだ?」
「自分の小屋に帰るだけだよ」
「それで、また俺達をおいてそこにいる嬢ちゃんを連れてどこかにいくと」
「……」
「やっぱりか。ならその前にライお前に言うことがある」
「なにを?」
一度深呼吸してラッシュは言った。
「お前俺らを舐めてるだろ」
それにライは反論しようとしたがそれよりも早くラッシュが話を続ける。
「お前、最初俺らを危険から遠ざけようとしたからあの夜リューネリスで別れたんだろ?ってことはだ。別のとり方をすればライ、お前にとって俺らは力不足で相手にならないと思っていた。だろ?」
無言を通すライ。
「別にそこを責めるつもりはねえよ。俺らだってあの時お前に勝てる気はしなかった。もしエスティアが言ったようにステイル王子が雷帝の宝玉を使ったのなら足手まといになっていたんだろう。でもな半年経った俺らはあのときよりも強くなったんだ。そこでだライ。提案なんだが、ここにいる全員と戦え」
ラッシュの提案に最初に声をあげたのはレーシアであった。
「なにを言っているですの!それではこちらが不利ですの!」
「何を言ってるんだ。お前さんもライの実力は知っているんだろう?それにこいつはあの夜俺ら全員の実力が自分より劣っていたから、危険を負わせないために置いていった。ならもし、その条件が覆れば話は変わってくる」
「それでも卑怯ですの!」
「そこまで言うならお前さんもライの手助けをしてもらっても良いんだぜ?それとも負けるのが怖いか?」
「むー!言ったなですの!望むところですのー!」
「レーシア?勝手に勝負を受けないでよ」
「うっ、ですの」
「なんだよライ。お前も怖気づいてるのか?」
「いやそういうわけでもないよ。そっちが納得するならそれでもいいよ」
「よし、なら約束しやがれ。もしそっちが勝ったら俺達は大人しく今回は帰ってやるよ。でもな、こっちが勝ったら一緒に行動しろ。いいな?」
「了承しかねるよ。言っただろ?王都には帰れないって」
「何言ってやがるんだよ。おれは王都に帰るとは一言も言ってないぜ?」
「あー、そういうことか。でもまあうん、わかった。勝てばいいんだしね」
「じゃあルールを決めようか。戦うのはそちらはライと嬢ちゃん。こっちは俺にリエル、ティア、リューミル、ランとそうだなフィル、お前はどうする?」
「もちろん参加します!」
「ならフィルもだ。人数的には2:5だがいいだろ?」
「訂正してもらって良いかな」
「訂正だと?」
「こっちは俺一人でいい」
それを聞いてラッシュはまだ舐められているのかと感じたのか殺気を放ち睨みながら低い声で言ってくる。
「ライ、これだけは言っておくぜ」
「どうぞ」
「俺はなここに集まったやつらの気持ちは察することはできる。全員がお前のことを心配して、会いたくて集まった連中だ。俺もその中の一人に入るには入るが、お前をまだ許してない。一発は殴らないときがすまねえ」
「……そっか」
「覚悟しておけよ」
そういってラッシュは扉から出て行く。するとその後にリエルも続いていった。他のリューミルとティア、フィルは一瞬こちらを見たがラッシュの後についていく。
なんだか大変なことになってしまったが、これも自業自得なんだろうと思う。先に理由はどうであれ約束を破ったと思わせ裏切ったのは自分なのだから。
「ライ、大丈夫なの?」
心配そうに言ってくるレーシアにライは笑いかける。
「大丈夫だよ。いつかは正面から向き合わないといけないんだからさ。今回がその時だよ」
ライはそう言いつつ皆が出て行った扉を見る。先ほどの条件でライが勝てば今までどおりになる。そして、以前のラッシュたちなら負けることはないだろう。でも今は分からない。もし自分の予想を遥かに上回るぐらい強くなり自分が負けたその時はまた一緒に行動ができるんだろうか。
「……」
そこでライは考えるのをやめた。先のことを考えても意味ないこと。すべては結果後に起こることなのだ。今は全力を出してどっちも納得が良く戦いをすれば良いだろう。
そう思いつつライも扉のほうを歩いてく。
だがその後ろ姿をレーシアが思いつめ心配そうな顔をしているのが板の間では気がつくことはできなかったようだった。
こんばんわ、いかがでしたでしょうか。
さて、あとがきを書きたいのですがすみません二日連続の徹夜という非常事態に落ちいておりまして、今回も後書き活動報告はお休みにします。
徹夜がいつ終わるのか……終わらせられるようにがんばります。
ではまた明日お会いしましょう。




