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第七十四話 あの日の夜と宝玉の影 中編 (エッジ王子と黒幕との邂逅)

お楽しみください

 ライはエッジ王子がいる陣地へと炎帝の力を使い強襲した。紅蓮の火柱が上がったことから中にいた兵士たちは慌てていた。


 そんな中をライは隠れるように気配を消して動く。確かにエッジ王子をどうにかしに来たことはそうだが、全員とことを構えるつもりはなかった。


 【まずどっちに行くわけ?】


 襲撃時に邪魔になるだろうとエスティアは姿を消しているので、声は頭の中に響く。


 エスティアに言われて考える。今回の目的のひとつはエッジ王子を処理するため。二つ目は後からできたのだが緑髪の少女を助けるため。


 効率を考えるならエッジ王子をすぐに処理して少女を助けるのがいい。もし逆で、少女から助けた場合エッジ王子が逃げて姿をくらませる可能性もある。


 それを加味してライは陣を失踪し駆け回る。中央の大天幕には向かわずにだ。


 【そうよね。あなたに聞いた私が愚かだったわ】


 エスティアは苦笑しているような雰囲気を出しながら助言してくれる。


 【あの女の子が持っていた宝玉は次を左に言った場所から感じる。そこにいるでしょう。】


 「助かる!」


 ライはエスティアにお礼を言い次の天幕の間を左に曲がる。


 駆け抜ける際さすがに不審者とばれたのか何か後ろで言われていたような気がする。しかし、気にする暇はない。もうすぐ紅蓮の炎は消えるだろう。そうすれば炎の近くに集まっていた大勢がライに向かってくるのだから。


 一心不乱に走るライはついに視界に緑髪の少女を入れる。でも少女は地面に倒され拘束された状態だ。周りに男が五人囲んでいた。


 「な、何者だお前は!ここがエッジ王子のいる陣と」


 包囲していた男の一人がライに向かって叫ぶが途中で言葉が止まる。ライが右手を男の地面に向けて魔法を使ったからだ。


 「あ・・・あ?」


 悲鳴にもなっていないくぐもった声がその男の最後であった。腹には尖った岩が刺さっていた。


 【ライ、そんな派手に使うとすぐに精神力が枯渇するわよ?】


 何かエスティアが言っているが聞こえないように次に右にいる男二人に走りながらガントレッドを向ける。


 あちらもさすがに仲間が一人やられたことにより侵入者と分かったようだ。迎撃体勢入る。


 ライはかまわず男に水の塊を放つと二つの塊が男たちの方に飛んでいく。


 その水は目にも留まらぬ速度で飛んでいき二人の男を絶命させる


 はずだった。


 「ぐあぁ!」「舐めるな!」


 男のうち一人はライの水弾に倒れるがもう一人は目の前に炎の壁を作り出していた。どうやら魔法道具保持者だったようだ。


 さすがにどのような威力を持つ水弾だろうが天敵とでもいえる炎は相性が悪く、水弾は男に当たっても意識をとる事はできなかった。


 ライはその男を無視して左にいる残りの二人向けて水弾を放つ。


 だがそれも学習能力がある人間だからか水弾は直線状の動きしかできないと判断して男たちは回避しようとする。素性はともかく腕は立つようだ。


 でも相手が悪かった。


 「なんだ!何でこんな所に壁がぁ!」


 「うそだがぐわぁ!」


 回避しようとした二人は進行方向に壁があるような止まり方をして、行く手を阻まれ結果直線状にいることになり水弾に倒れる。


 残りは一人、左の男を二人無力化する時間でも立ち直られている場合がある。でもライはすでに決着していたと思っていた。相手は突如五人を倒した自分に恐怖を覚えているだろう。なら恐怖対象にどうするかは二つ、逃げるかそれとも


 「食らえこのやろおおおおおおおお!」


 最大威力の攻撃をしてくるか。


 雄たけびとともに放たれる紅蓮の炎はなるほど、逃げずに攻撃してくるほどの強力な魔法のようだ。この時ライは白帝の壁で自爆させようとも考えるがやめる。後ろに少女がまだいるのだ。自爆の炎はおそらくあの少女にも襲い掛かるだろう。ならば自分がやることは一つ。


 ライは迫ってくる炎に突っ込み男との距離を詰める。


 「はっ!消し炭になりやがれ!」


 ライが炎に突っ込んでいくのを見て勝てたと思ったのか男には笑みが浮かんでいた。そんな表情を見てライは魔法を使う同類として注意のなさに呆れを通り越して哀れみを覚える。


 どうして安心できるのだろうか。お前が先ほどしたではないかと水弾を炎で無効化したのだ、なら逆のこと、水で炎を無効化できるとなぜ考えないのか。


 炎とライの距離が縮まりついに衝突する。


 衝突した途端に激しい音と煙が立ち上る。


 「は、ははは!見たか俺様の力を!やってや……え?」


 男は喜んだのも束の間、左胸に突き刺さる剣に視線を向ける。自分を貫く剣からは赤い血が刀身を染めていく。


 剣を突き刺したのはライだ。ライは剣を男の体から抜くと男は地面に倒れ動かなくなる。それを確認してからライは目の前で横たわれる緑髪の少女に近づきしゃがみ込んだ。


 手を伸ばす時にビクリッと震えているのを見てそれだけ恐怖を感じる思いをしたんだろうなと考えつつ、ライは申し訳なく思いながら手を伸ばし少女を拘束している縄を解いていく。


 縄を解かれた少女はまだ信じられないものを見るようにこちらを見ていた。


 「ごめん、実はあんまり時間はないんだ。君がどうしてここに連れてこられたのか判らないけど、宝玉を持っているのは知ってる。だからそれで逃げるんだ。いいね?俺は別の人物に用事があるから」


 それだけを言って、ライはすぐに立ち上がり去ろうとする。宝玉の力は自分がよく知っている。なぜつかまったのかは判らないがおそらく搦め手でやられたのだろう。でも真正面から戦えば逃げることならば大丈夫のはずだ。


 しかし、緑髪の少女が背から話しかけてきた。


 「ま、待つですの!」


 「本当に時間がないんだけど」


 先ほどの戦いに気がついて兵士たちが近づいてきている音が聞こえているのだ、ぐずぐずしている時間はない。


 「私はレーシアですの、せめて名前だけでも!」


 「俺の名前はライ。それじゃあ気をつけてね」


 そういって今度こそライは陣地の奥へと走りだす。あともう一つライはお節介をすることにする。


 「ほら!俺はこっちだよ!捕まえれるものなら捕まえてみろ!」


 声を張り上げながら中央に走る。これはあの少女が逃げれる確立をあげる為だ。その分自分の生存確率を下げるが、まあ何とかなるだろう。


 【まったく……】


 呆れたように言うエスティアだがそれ以上は言わなかった。なにやら諦められているような気もするが。


 ライは陣地を疾走して次こそ本当の目的地に到着する。


 到着した場所は大天幕。周りよりも大きい天幕だ。これだけ騒ぎが起きれば護衛がしやすいように指揮官または重要人物はここにいるはず。そうすれば指揮がしやすいからだ。


 ただ逃げ出しているならいるはずもなく無駄足になるが、幸いというべきか探していた人物は不遜にも大天幕前に立っていた。


 そして意外な人物までも。


 「あ、貴方様がなぜ!」


 目標であったエッジ王子。


 しかしその隣には意外な人物、フェレス王国第一王子 ステイル・フェレス・ギリエル。


 「やあ、ライ・ジュリアール軍師。君とはゲームの表彰のとき以来かな?無病息災で何よりだね」


 侵入者であるライのことをなんとも思っていないような口調でステイル王子は対応してくる。それに対してライはすでに追いついてきた後ろの何百という兵士に警戒しながらステイル王子に聞く。


 「それはどうもありがとうございます。ですが第一王子様に関しましてはこのような所で一体何用を?恐れながらそこにおられますフェレス王国第二王子、エッジ王子はリューネリスを貴下に入れて謀反をした主犯格です。いくら王族だったとしても死罪は免れぬと思いますが。それともステイル王子自らエッジ王子に降伏、又はけじめをつけに来たと?」


 「あはは、確かに僕がここにいる理由はそれが妥当だろうね。でもよく考えてくれ。この世に血をわけたたもの同士が殺しあわなければならない。それはとても悲しいことではないかな?」


 「私めはこの戦いを終わらせるためにやってきました。そして、あれだけ自分の名前を宣言し王族が反乱を起し国は乱れております。ならば、それを沈めるためには張本人であるエッジ王子が討たれない限り集結しないでしょう。……それを承知で先ほどのことを言ったと判断してよろしいですか?ステイル王子」


 「ふむ、確かに弟はそれほどのことをしたのだろうね。もはや命を差し出したところで償えないほどの罪を。しかし、弟は身内でもあり協力者でもある。見捨てることはできない。それよりもこっちの話を聴いてくれないかい。エッジが死なないでもいいとてもよい案があるんだ」


 ライは深呼吸を一度だけ深くして息を整える。ステイル王子が何を言うか予想はつくからだ。


 「弟は失踪しどこに行ってしまったか判らない。そしてここにはもう弟はいなくて他国に逃げることにするんだ。目撃者は幸い僕らだけ。もちろん僕は弟の不利になることは言わないけど、人の口は止められないね。けどその人物が死体ならば……問題は解決すると思うだろう?」


 【ライ!すぐに避けなさい!】


 エスティアに言われてすぐにライは横に飛ぶようにして身を投げ出していた。すると一瞬後自分がいた所に激しい閃光と衝撃、轟音がなり見ると地面が黒く焦げていた。

 

 何をされたかわからないながらもライは次の攻撃に備える。でもこの現象を起した本人は余裕をもって言ってきた。


 「ふむ、どうやら君は噂に違わぬ素晴らしい技量を持っているようだ。少なくとも君の後ろにいた兵士たちの体たらくと来たらないみたいだ。まあ、装備している鎧がなかったのも一躍かっているのかもしれないけどね」


  どくどくと高まる心臓を無視しつつ、ライは状況を分析していく。先ほどライを追いかけてきた兵士たちはほぼ全員が地面に倒れていた。これほどの人数を一度に戦闘不能にできるのは魔法でしかありえない。しかも威力が恐ろしいほどに高いようだ。魔法を受け地面に倒れているうち数人の兵士は口から泡を出し痙攣を起している。


 「せめて苦しまないようにしなければならないな」


 ステイルはもう一度手をかざすと倒れている兵士たちのほうに魔法を放つ。


 次はライにも見えた。ステイル王子が使ったものは雷の魔法。しかも強力な魔法だ。そしてこれほどの力を得る魔法道具はライに一つしか考え付かなかった。


 「雷帝の宝玉か」


 【気をつけなさい。貴方が今まで相手にして来た宝玉たちと比べれば雷は最強よ。威力、速さ、衝撃は宝玉単体で考えれば他の宝玉では適わない】


 ステイルが悦に浸ったような笑みを浮かべながら仲間である兵士たちに止めを刺していく光景を見つつ、ライはエスティアに話しかけていたがどうやらほぼ全員が死んだのを確認するとステイルがこちらを向く。


 「さて、こちらの手の内を見せたんだからそちらも見せてくれれば嬉しいんだけどどうかな。弟からは聞いているんだけど、ライ軍師は色々な魔法を使えるのだろう?……といっても引き出さざる負えないだろうけどね」


 そういってついにステイル王子は眩い閃光を発生させるとライに向けて放つ。


 「くそ!」


 それに対してライは雷に強いと思われる土帝の力を使い壁を前に出現させて雷を防ごうとした。


 ステイル王子が放った雷は壁に当たり存在自体は消える。でもただでは消えてくれない。


 土壁により雷という魔法が消えてもぶつかった衝撃が消えてくれるわけではない。


 ぶつかった衝撃で吹き飛ばされた壁は石礫となり至近距離でライに襲い掛かる。右腕、左肩、右足にわき腹に衝撃を受けるが、それに耐えつつ次々と前に壁を作っていく。


 何十にも壁を作っていけば手前に雷が当たっても石礫は飛んでこない。しかし、ライは顔をしかめる。初動で選択を誤ったからだ。もし間違っていなければおそらく苦戦はしなかったかもしれない。でも今はもう使えない。使ったとしても体中に石礫により傷を負ってしまった。


 なら遠距離で魔法戦をしようとしてもそれは敵のほうが威力は強く速度も速い。ジリ貧になるだろう。


 ライはそう考えつつ、覚悟を決める。今相手はこちらの姿がわからずに雷を撃ってきている。ということは姿を見失っているということだ。違う方向から一撃必殺となる魔法を放てば倒せるかもしれない。雷は確かに攻撃に特化しているかもしれないが防御には不向きのはずだ!



 土帝の力を使用して最後の壁を作るとそれを背に姿勢を低くして移動する。そして二歩移動したところで最大火力である炎帝の力を使った。


 「いっけええええええええええええええええええ!」


 集中して手のひらから炎の魔法を使うライ。規模で言うと以前グリム伯爵が水帝の宝玉で使用した津波と同等かそれ以上の威力と規模だ。


 これは避けられない。ライはそう確認した。


 「おい、俺を忘れちゃあいないか?」


 「なに!」


 正面に意識しているところで突如声が掛かる。そう、まだこの場で死んでいない人物はライとステイル王子以外にもう一人いた。エッジ王子だ!」


 ライはすぐに対応しようとするが、すでに懐に入られ傷を負っているため反応が遅れた!


 「あがっ」


 次の瞬間背中に衝撃を受けたと思ったと同時に何かが噴出すのを感じ、そこが熱と激痛を伴ってくる。間一髪、ライは体を前にずらし真っ二つになることを避けた。激痛に耐えつつライは気力を振り絞り土帝の力を使いエッジ王子に向けて魔法を使う。


 「ぐうぉ!」


 土帝の力は地面から生えた槍をエッジ王子が剣を持つ右腕を貫通した。本当は体を狙ったが無理な体勢で放ったためずれてしまった。


 ステイル王子は炎帝の魔法で死んだか重症を負ったはず、エッジ王子は右腕を串刺しにされた。あれでは腕を千切らない限り動けないはずだ。


 ならあと一息すればと体勢を立て直そうとしたところで不意に視界が揺らぐ。精神力はまだ余っているはずだけどと思うが、実はライが計算していた精神力は通常時の訓練で知りえた情報。又は指揮をしてつつ使った場合でしかない。


 ライが傷を負うのは初めてかも知れない。魔法を使うための精神力とは人が誰でも持っているもの。だから少数の例外を除いて道具が使おうと思えば使える。極めようとすればまた別の話だったとしてもだ。

このように精神力とは魔法を使うのに必要なものである。けれど、人間は別のことにも精神力を使う生き物、痛みを耐えるために精神力を使い、警戒するために精神を研ぎ澄まし、行動する機会をうかがうために精神を磨耗する。


 今回ライは一人で来て魔法以外に精神力を多大に消耗したのだ。この計算を入れていなかった。それもライが受けた傷は致命傷ではなくても重症になる。今も血を流しているのだ。体力まで奪われていっている。


 ライはここで自分が意識を失ってしまえば自分は死ぬだろうと判っていた。しかし体は動いてくれない。なぜ動いてくれないと自分で叱咤しても限界を超えたために倒れるだけだった。


 でも気のせいだろうか、倒れる衝撃の替わりになぜか想像したような衝撃は来なかった。その代わりに緑の髪が視界を横切り体が浮かんでいるような錯覚さえ感じる。


 (あれ、ついに感覚までおかしくなったかな)


 そう考えることまではできたが、ライはそこで意識を落としそうになる。最後に聞こえたのは誰かの声だった。若い声で


 「絶対に死なせないですの……!」


 どこか遠くで聞こえたような気がしたが、ライは気を失うのであった。


  

 


 

いかがでしたでしょうか。

今回はライが大活躍……が半分、お話が半分だったでしょうか。

この物語が始まって初めてライは傷を負ったんじゃないでしょうか。もしかしたら別の所で負ったかもしれませんが、重傷を負うまでの怪我はしたことがありません。

しかも気を失うときはほとんどが精神力が枯れた時。でも今回は怪我によるものもあります。さてライはどうなるでしょうか。

次回予告としてはライがその後どうなったかを書くことになります。

では今日はこの辺で。また明日……といいたいですがわかりません。できると思いますが、できない場合は活動報告でお知らせいたします。では

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