第七十二話 話し合い、黒幕、理由。
本編をお楽しみください。
襲ってきた山賊の集団を撃退した後、ランに拘束?されたライは拘束を解かれても大人しく歩いていた。
周りには半年前に別れたメンバーがいる。しかし、周りにいるメンバーは全員が無言で重い空気だ。ティア達とは初めて会うことになるレーシアは周りからライを守らなければならないと思っているのか、犬のように唸っている。
そんなレーシアを手で宥めながら歩いていくとアトイン村が見えてきた。
アトイン村に到着すると、最初に気が付いた住民がこちらに視線を向け、ライとレーシアの姿を確認するとすぐにどこかへ走って行ってしまった。
そしてしばらくすると大勢の人を連れて戻ってくる。
ティア達はどうしたのかと思ったが次に住民が言った言葉で理解する。
「レーシアちゃんにあんたも本当にありがとうね!おかげでこの村は襲われることはなかった。もし魔法とか教えてくれなければどうなっていたことか……本当に有難う。それと周りの王国兵の人たちもありがとうね。見るからに戦って守ってくれたんだろう?」
先頭にいた住民、中年の女性は笑顔で言ってくる。ティア達も返事を返そうとしたがそれよりも早くレーシアが答えた。
「無事だったら良かったの。あの魔法は地面のは新しく用意しないといけないけど、炎と水は使えば同じ効果があるから大丈夫なの」
「そうかい!ならまた襲われそうになったら使わせてもらうかね」
「どんどん使っちゃってなの!」
楽しそうに話すレーシアと女性だが、後ろにいる人たちはできるだけ早く場所を移したそうな空気に女性が最初に気が付いたんだろう。ほかの住民も何かを言おうと集まったのに一言も告げることができない。
「あ、ああ。すまないね。なんだか急いでいるときに引き止めちゃって。そ、そうだ!話が終わったら後で家によってくんなお礼をしたいからね!」
女性は最後の言葉を言うとライは頷く。
「わかった。後で行かせてもらうね」
返事を返すことにより目的は果たしたというように住民は離れていった。再びライ達には重い空気が流れ始める。しかし、幾分先ほどは楽になったように思える。
町に到着したのでフィル達が率いていた少数の兵を怪我をしているものは治療に向かわせ、他のものは休憩するように伝える。そして、主要メンバーは村にある部屋を一つ借りて現在椅子に座っていた。
集まったメンバーはライ、レーシア、ティア、リエル、ラン、フィル、ラッシュの七名。
全員が椅子に座り静寂が辺りを包む。でも視線だけは一点だけを示していた。ライのほうへと。
ライもそれに気がつかないわけではないが何も言わない。それぞれが色々と言いたいことがあるのが分かるから。今、必死に考えているとわかるから。
しかし、ここで空気を読めていないものが一名いたのだった。
「うっー!なんなんですの!集まったら集まったで黙って!誰か話すですの!そして私に説明するですのっー!」
無言が堪えられなくなり開き直りするように言うと、それを皮切りに最初にティアが話し始める。
「……なら色々と話す前に全員が疑問に思っていることを言うね?」
「ようやく始まるなの」
「あなた誰?」
「私?私の名前はレーシアなの!」
「どうしてライと一緒に行動していたの?」
「ライは命の恩人なの!だから今度は私がライを助けるの!例え火の中水の中お風呂の中!」
「どこまで来るつもりなんだよ」
ライはそういって隣にいるレーシアにチョップをするとレーシアは叩かれた頭を両手で押さえ
「痛いなの……」
としょぼんとしてしまう。
「ゴホン」
そこで仕切り直しするためなのかランが咳をわざとらしくして、ライに話しかけた。
「空気が緩くなったみたいなのでまず私から聞かせてもらいます。ライ様。まずお聞きします。この半年間西のほうで二人組みが襲撃される村を助けてまわっていると噂が流れていました。それはライ様あなた達のことで間違いないでしょうか?」
「間違いないよ」
ライが頷いたのを見てランは聞く。
「では、私が聴きたいことは軍師といわれ頭が回るライ様がなぜたった二人組みで行動していたのか教えてほしいのです」
「二人組みの理由?」
「はい。ライ様、そしてそこにいるレーシアという方がとても強い力を持っていたとしても、体は一つ。すべてを助けることはできない。しかし、ライ様の身分は貴族であり軍師です。師団は無理だとしても大隊をいくつかは動かせるはず。ならばその兵士を操り守りを固めたほうが有利でしょう。でもあなたはしなかった。それはなぜなのですか?考え付かなかったというふざけたことは言わないでくださいね?」
ライはまっすぐ見てくるランの瞳を見ながら考える。本当のことを言えばいいのだろうかと。だがもし本当のことを言った場合、混乱をさせるのではないだろうかと。
「ライ様。あなたが何かを考えてした行動だと思います。……ですがこれだけは言わせてください。私の任務はあの夜からも続いています。もし嘘を言って逃げたとしても絶対に逃がせませんので」
ランがこちらの考えを見透かしたように言ってくる。そしてあの夜からも続いているという任務とは、エミルから言われた任務、ライのことを全力で補佐しろというものであろう。
ライは言葉を聴いて観念し話し始めた。
「このことは他言無用で頼むよ」
その場にいる全員が頷く。
「俺が二人で行動していたのはラン達を巻き込みたくなかったから。そして、信用ができなかったんだ。国に対して」
この言葉を聴いて全員が息を飲む。それも当然だ。ライはガリアント平原で国のために戦い勝利に導いた。すべては国を守るために。
なのにライは今自身が守ったはずの国を信用できないといったのだ。そしてそれは取りようによってはティアたちが信じられないとも取れる言葉。
ラッシュがその言葉に怒りを表す。
「ライ、てめえ俺らが信用ならないってことかよ。俺達を置き去りにして半年振りにで会ったら信用ならないとかふざけたこといいやがって!」
「ダメ」
武器を掴もうとするラッシュをリエルが止める。
ジッと見るリエルの瞳を見て少しは冷静さを取り戻したのかラッシュは舌打ちしてから椅子に再び座った。
ライも申し訳なさそうにしているとラッシュを止めた瞳をリエルはライに移して質問してくる。
「ライ」
「どうしたリエル」
「私達のこともう仲間だと思ってない?」
表情が乏しいリエル。だから感情を読みにくい。けど今ははっきりとライにはわかった。瞳が潤み机の上にある手は握りこぶしを握っている。何かしらの恐怖と戦っているのだ。ライに否定される恐怖を。
だからライは即答した。
「いいや、今でも俺のほうはあのメンバーは仲間だと思ってる。ここにいないエミル、ユレイヌさんとかもね」
ライが答えたことによりリエルは握りこぶしを解いて少しだけ安堵した空気を出す。
「信じてもらえないかもしれないけど、俺はあのリューネリスの夜に言った約束を破ったつもりはない」
「でもお兄ちゃんは戻ってきませんでした。一月を待っても」
「……」
「どうしてですか?お兄ちゃんの言い分は王国が信用できないでした。ですがリューネリスは王国兵がいたとしても戦いが終わって復興中だったはず。そして私達もいました。なら比較的安全だったはずです。なのになぜ戻ってこずに姿を消したんですか?」
フィルは責めるようにいう。普段こういうことをライには言わないフィルだがあの日の夜はそれほどショックであったのだ。いくら好きな兄だったとしてもよほどちゃんとした理由がない限り許せることではない
「それは……ごめん」
しかし、フィルの予想とは違い理由を話すのではなく謝罪だった。
「そんな謝罪を聞きたいんじゃないんです!理由を教えてください!」
目に涙をこめて睨みつけるフィル。でもライは何も話そうとはしない。
「はぁ、ライ。少しかわりなさい。このままではいくらあなたが仲間だと思っても戻れなくなるわよ」
ライのことを見かねたのか、ため息とともにエスティアが現れた。それ見ても誰も驚かずに視線を向ける。
エスティアはというと視線を向けられても気にせずに話し始めた。
「まず、皆お久しぶりね。半年ぶりかしら」
「「「「・・・・・」」」」
「あらあら、挨拶しているのだから返してほしいのだけれど、まあ良いわ。おそらく私の説明を皆聞きたいのでしょうから」
「エスティア……」
「ライ、さっきも言ったけれどこのまま何も言わなかったら居場所を無くすわ。貴方が巻き込みたくないのはわかるけど、もう話すしかない。話を聴いてそれでも選択したのならあなたではなく彼女らの責任なのだから。
「……」
エスティアは全員を一度見渡して説明を始めた。
「さて、じゃあ最初に誤解を解いておきましょうか。ライが言った王国を信用できないというのは貴族や兵士達を信用できないってこと。それはライが言ったわね。それでフィルがならなぜリューネリスに帰ってこなかったと」
「そうです。もし帰ってきたら私達で匿うこともできました」
「なるほどね。ならフィル。あなたに質問するけど、あなたは誰が敵で味方かわからないのにライを匿って確実に守るといえる?」
フィルは怪訝そうな表情を浮かべ答える。
「質問の意味がまだわかりませんけど、答えはわかりません」
「そうよね」
「ですがありえないはずです。エスティアが言っていることをリューネリスに当てはめるならあの時はすでに誰が味方か敵かわからなかったってことに」
「ええ、そういってるのよ?」
「何を根拠に」
「私達はね、あの夜あなた達を置いていったのはライが危険に巻き込みたくなかったから。そして戻らなかったのは、帰れなかったことと見つかるわけにはいかなかったからよ」
「帰れなかった……?」
ティアが首をかしげながら聞いてくる。
「そうよティア。帰れなかったの怪我を負ってしまったのもあった。でもねそれだけじゃないの。他の理由は二つ。一つはライの異変といえばいいかしら」
「異変?」
「ええ、以前あなたたちにも話したことはあるわよね。魔法を精神力が枯渇しているときに使ってしまったら記憶を混濁してしまうと。だけど、あの日の夜から性質が少し変わってライに変化が訪れた。その変化とは、ある一つの感情意識が薄くなること、いえ、ある意味強まると言っても間違いではないわ。とある条件がつくけど。あなたたちは何回かそれを見ているわ」
「見ているって、ライが感情意識が薄くなったとか気がつかなかったけど」
「それはそうでしょう。わかりにくいのだから。単刀直入に言うとライが敵と認識して、尚且つ非道なことを言ったならば人を殺すことに躊躇をしなくなる」
エスティアがそう説明すると不機嫌そうにラッシュが答えた。
「そんなもんムカついたら殺したくなるだろうよ。それのどこがおかしいんだよ」
「ええ、普通の感情よね。確かに。でも想像して頂戴。ライが持つ宝玉の魔法を全力で使い人を殺すことに躊躇しなくなった場合を。しかも怒りで冷静さをかけていたとしたら。味方の被害とか考えられるかしら?」
そう言われてラッシュは黙る。ライの魔法は一つ本気でやれば津波を起せたりもするのだ。そんなものを入り乱れる場所でやられれば味方もろとも死んでしまう。
ラッシュが黙ってしまってこちらが不利と思ったのかフィルが今度は言ってくる。
「でも!たとえそれが理由だとしてもお兄ちゃんが帰ってこようと思えば帰れたはずです!」
「そうね、ここで最初の話に戻る。王国が信用できない一番の理由。それはこの国の最重要人物の一人が信用できないからよ」
「最重要人物とは、まさかジギル国王ですか?」
「いいえ、そしてもちろんエミルではないわ」
「となるとエッジ王子ですね」
「違うわ」
「え?」
フィルは首を傾げる。確か他に重要人物がいただろうかと。
見かねたエスティアが言う。
「どうやらよほどライのことがあって頭の回転が鈍っているのね。フィルが挙げたのはどれも王族よね?ジギル国王、エミル第一王女」
「はいそしてエッジ王子ですよね?」
「ええ、確かにエッジ王子ね。でもあなたはガリアント平原で聞いていたはずだわ。エッジ王子が第二王子であることを」
「あ」
「私達が一番信用できなのはエッジ王子より王位継承権が上である第一王子ステイル・フェレス・ギリエル」
そしてエスティアは再び周りを驚かせる言葉を言う。
「ガリアント平原の戦いにおいてエッジ王子を誑かし、エンリデンヌではグリム伯爵を、ローレンス砦ではレイン伯爵を騙し戦いへと誘導した人物、黒幕。私達はステイル王子を敵とみなして行動しているわ。だから王都には戻れないし、戻らない」
全員が無言になる。エスティアの言が正しければ大事である。でも現状では嘘か判断できず、もし仮にそうだったとしてもライがステイル王子を糾弾したとしても回りはステイルを擁護するだろう。しかも王族であるステイルを糾弾することは国家反逆罪が適用されてもおかしくない。ライ自身が今度は国の敵と見られる可能性が高くなるのだ。
「そんな……まさか」
「本当よ……そうね。少しこれから長くなるけどあなたたちが気になっているでしょうあの日の夜のことも話しましょうか。さっきの言ったことと無関係ではないのだから。全員時間はいいのよね?」
それに全員が頷く。
「わかったわ。なら話すわね。あなた達リューネリスで分かれた後私達は」
リューネリスで分かれた後のことをエスティアがついに話すのであった。
こんばんわ、いかがでしたでしょうか。
最初に言いますが、なんだか今日は執筆がうまく言っていないように感じました。不完全燃焼というやつでしょうか。書いてて、違和感を感じた話です。
本当は別の展開を考えていたんですがそこまではいきませんでした。
次回予告としては半年前リューネリスで別れた後ライが何をしたのかを描写します。ではまた明日お会いしましょう。
最後になんだかすいません。頭の中が纏められなくてあとがきもおかしくなってしまって。




